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「オセロ」
原作 ウィリアム・シェイクスピア
構成・脚本・演出・出演 白井晃
出演 仲村トオル/山田優/赤堀雅秋/加藤和樹
高田聖子/水橋研二/有川マコト/他
観劇日 2013年6月22日(土曜日)午後1時開演
劇場 世田谷パブリックシアター 1階P列2番
上演時間 2時間40分(15分の休憩あり)
料金 6500円
ロビーでは、パンフレット(1200円だったと思う)の他、出演者の過去のDVD作品などが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
ネタバレありと言いつつも、シェイクスピアの「オセロ」である。
ストーリーは設定をいじっている訳ではなく、枠組みというか、外側の箱をいじっている。
舞台は、最初、奥の壁を抜いて楽屋裏まで見せている。上演開始と共に黒い幕が下りてきて隠されたけれど、舞台上に洗面台が並び、客席に演出家席とおぼしき机がセットされ、役者がそこに待機したり、マイクを使って「始め」の合図をしたりする。
舞台を作っているところを観客席で見ている、という仕立てだ。
それをやるのは最初と最後だけかなと思ったのだけれど、流石に後半は少なかったけれど、上演時間全体を通して、「外側の外側にあなた方はいるんですよ」という客席へのメッセージは続く。
そういう感じで、外枠は触っている(というか造っている)のだけれど、物語自体は直球勝負のシェイクスピアである。翻案等々は行っていないし、かといって、例えばかつらを被ったりいかにもな衣装を着けることもしていない。
何というか、シンプルかつストイックな「オセロ」である。
オセロという芝居が元々そうだったのか、赤堀雅秋演じるイアーゴーの視点で話は進んで行く。彼のオセロ(というか、劇中ではムーア将軍と呼ばれていたけれど)に対する様々な罠の存在や計画は次々に本人から語られ、彼が周りの人間をどう動かして行くのか、どうオセロを追い詰めていくのか、ひたすらその「ワザ」を見ている感じだ。
この間、逆に、他の登場人物の心情はほぼ語られることはない。
にも関わらず、そもそもイアーゴーが何故オセロをここまで陥れようと考えたのか、その理由が吐露されることはなかったような気がする。説明的には語られても、心情としては語られないというのか。
それが不思議な感じである。「よく判らない憎悪を抱く人」という立ち位置なのだ。
でも、舞台を見ているときに「オセロって、イアーゴーが主役の舞台だったけ?」と思ったのも本当である。
逆に、仲村トオル演じるオセロを見ていると、どうしてこの人はこんなに簡単にイアーゴーに騙されてしまうのだろうと思う。
本当に、あっという間にイアーゴーの口車に乗せられて、全く証拠もないうちから完全に山田優演じるデズデモーナを疑っている。大体、ハンカチを落とすなんてよくあることだし、そのハンカチを持っているかどうかがどうしてここまでコトを大きくするのか、疑いを増幅させ、思い込みを激しくさせるのか、本当に訳が判らない。
デズデモーナへの疑いを激しくしゃべり続けるのだけれど、それは「理由」ではなく追い込まれていく過程であって、やはり「どうしてこんなに簡単に騙されるのか?」という疑問には答えてもらえない。
シェイクスピアの「オセロ」だし、もちろん結末を知って見ている。
ダンスといえばいいのか、「動き」のシーンでは特に、山田優のスタイルの良さが際立つ。シンプルなドレスを、あれだけウエスト高く着られるのは凄いよなとつい目線が釘付けになってしまう。
そもそもオセロには、デズデモーナの若さや美貌や地位やそういったものに対するコンプレックスがあり、「この娘はどうして自分なんかと」と思う気持ちが心のどこかにあり、イアーゴーはそこを増幅しただけということなんだろうか。
それはそれとして、ずっと抑えて控えて、客席に作られたスタッフ席に座っていることも多かった高田聖子が、最後の最後、夫のイアーゴーを告発し詰るシーンで爆発したのがやっぱり格好良かった。
ここに賭けたわね、という感じである。
そして、その賭は見事に勝利を掴んでいたと思う。
何というか、舞台を見ているときにふと、「このお芝居は、白井晃の演出を観る舞台だな」と思ったことを覚えている。どうしてそんなことが頭に浮かんだのかはよく判らない。
さて、最後はどうやって終わるのだろう。
そう思っていたら、死んでしまったオセロとデズデモーナがベッドに倒れ伏しているところ、カーテンコールのために起き上がってやけにぐずぐずと服を整えているなと思ったら、そこに「この後口を開かない」と宣言したばかりのイアーゴーがいきなり2人を再度拳銃で撃つ。
再び倒れ伏す2人。
そして照明が消えて、舞台が終わった。という感じだったと思う。
何というか、ストイックな舞台だった。
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