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2013.07.21

「盲導犬-澁澤龍彦「犬狼都市」より- 」 を見る

「盲導犬-澁澤龍彦「犬狼都市」より- 」
作 唐十郎
演出 蜷川幸雄
出演 古田新太/宮沢りえ/小出恵介/小久保寿人
    大鶴佐助/金守珍/木場勝己 ほか
観劇日 2013年7月20日(土曜日)午後7時開演
劇場 シアターコクーン Q列24番
上演時間 1時間35分
料金 9500円

 ロビーではパンフレット(1500円)等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 シアターコクーンの公式Webサイト内、「盲導犬-澁澤龍彦「犬狼都市」より- 」 のページはこちら。

 ネタバレありと書いてはみたものの、正直に言ってよく判らなかった。
 ただひたすら、このお芝居はやっぱり書かれた当時の空気と上演された場所、当時の空気を知っている役者さんが演じてこそ生きるんじゃないかという気がずっとしていた。
 正直に言って、今、私が見ると、とても遠い感じがする。お芝居は全部作り物といえば作り物なのだけれど、でも、その作り物感が強すぎるくらいに迫ってくる。あるいは、1970年代の空気を実際に体感している方が見ると、感想は全く変わってくるのだろうか。

 舞台は、横一列に並んだコインロッカーが置かれ、その手前の狭い横長の空間だけしか使われない。
 いきなり、本物のシェパードが(盲導犬なのか?)5人に連れられて舞台上を歩き始めたのには驚いた。本物? と思って最初はじっと凝視してしまったくらいだ。
 ビシっとムチで殴るような音が何回か入ったけれど、犬たちはまるで気にする素振りを見せない。盲導犬として訓練された犬にとっては、舞台に上がるということはそれほどの難事業ではないということなのか、それとも舞台に上がるための訓練を重ねた成果なのかは私には判らなかった。

 物語も当然のことながら、コインロッカーの前で進む。
 古田新太演じる盲人の影破里夫は自らの盲導犬「ファキール」を探し求め、そこに通りかかった小出恵介演じる少年(という設定らしい)にファキールを探すことを頼んでいるのか命じているのか、とにかく探すように言っている。
 宮沢りえ演じる赤いワンピースの女奥尻銀杏は、夫が鍵を持ち去ってしまったコインロッカーを開けようと奮闘している。というか、奮闘した結果鍵穴に入り込んでしまった爪を燃やしている。そのロッカーには、銀杏が付き合っていた男宛のラブレターがしまわれているらしい。

 その執着はほとんど物狂いというのに近くて、だったらもっと極端な方が似つかわしいと思いつつ、宮沢りえはこういうポジションなんだなと思う。
 そういえば、古田新太、宮沢りえ、小出恵介の3人は、この秋に上演される野田秀樹作・演出の「MIWA」にも出演することが決まっている。変な言葉かも知れないけれど、「傾向」ということなんだろうか。あるいは、この時代の空気を持つ役者さん達ということなんだろうか。

 古田新太は髪を伸ばし(鬘か?)、黒く塗られた丸眼鏡をかけ、誰かを念頭に役を作り演じているのだろうなという感じがする。それが誰かは判らないのだけれど、その誰かの雰囲気やニュアンスまでを舞台上で再現しようとしているように見える。
 一方の小出恵介は、金髪にジーンズの「少年」で、古田新太に引っ張られてどこか飄々とした感じも漂わせている。

 銀杏は、ラブレターを取り戻す前に、小久保寿人演じる恋人だったタダハルと再会する。そのタダハルは盲導犬訓練士を育てる学校に通っており、木場勝己演じる盲導犬と盲導犬訓練士の両方を育成しているらしい学校の校長に学んでいるらしい。
 銀杏とタダハルの再会は、案の定、少なくとも銀杏にとっては理想的とはほど遠く、しかもコインロッカーには波が映し出されてそこは南の海となり、校長はいつしかバンコクで亡くなった筈の銀杏の夫になっている。

 この辺りから後はもう虚実織り交ぜてその境は曖昧、何故か銀杏は胴輪を嵌められて「盲導犬」にされてしまっている。ここで「これは何かの暗喩なのか?」と思ってしまうこと自体、だめな気がするのだけれど、そう思ってしまったのだから仕方がない。
 やはり、「時代の空気」がこのお芝居には必須なんじゃないだろうかと思う。

 破里夫が探し求めていた盲導犬のファキールは、「不服従」の盲導犬として伝説の存在であったらしい。
 盲導犬はそもそも、主人の指示通りにすると危険だと判断した場合には、その指示に従わないという訓練を受けているのだそうだ。

 突然、集団に暴行を受けた破里夫はその場に倒れ、その剥がされた爪を使ってついにコインロッカーを開けた銀杏は、ロッカーから飛び出した黒い影に喉笛を食い破られ、ファキールの名を叫びながら倒れる。
 そこで、幕である。

 芝居はナマモノだ、私には多分何も判っていない、ということをやけに強く感じた舞台だった。

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