「レオ・レオニ 絵本の仕事」展に行く
先日、bunkamura ザ・ミュージアムで2013年8月4日まで開催されている、「レオ・レオニ 絵本の仕事」に行って来た。
会期終了間際ということで、夕方から行ったけれどもかなりの人出で、チケット売場には行列ができていた。
中に入っても二重三重の人だったけれど、少し進むと空いていたりして、上手く行ったり戻ったりするとほとんど待たずに最前列で堪能することができた。
レオ・レオニといえば、私は「あおくんときいろちゃん」と「スイミー」なのだけれど、行ってみるとねずみを主人公にした絵本が多かったのが意外だった。
子どもの頃にガラスの入れ物で育てていた生き物たちを絵本で遊ばせたらしい。
また、本人の、ねずみだったら子ども達の世界にすうっと入っていけるのだというようなコメントが、何だかとてもらしいなと思えた。
レオ・レオニの絵本に出てくるねずみは多くの場合貼り絵で描かれているのだけれど、レオ・レオニの机の上には、その貼り絵のパーツが常に用意されていたのだそうだ。
自分を投影したのもねずみだったし、特に思い入れの深い存在だということは間違いなさそうだ。
レオ・レオニはグラフィックデザイナーでもあるわけだけれど、タイトルのとおり、この展覧会は「絵本のしごと」である原画が主な展示作品になっている。
ごくまれに、絵本の原画ではない絵や、彫刻も飾られている。
開場は5部構成になっている。
最初は「Ⅰ 個性を生かしてーちょっぴりかわり者のはなし」で、詩人であるねずみのフレデリックの話や、画家になったねずみのマシューの話(このマシューには、レオ・レオニ自身が投影されているという)など、私には「ねずみだぁ」というコーナーだった。
そして、ここでまず使われていたのは、貼り絵(コラージュというのが正しいのか?)の技法である。
これが、結構いい加減に貼ってあったりして可笑しくも楽しい。
そして、その貼る紙にも、スイミーの背景のようなマーブル模様の紙が使われていて、何だか懐かしい。
「Ⅱ 自分は自分−みんなとちがうことは すばらしいこと」である。
ここで目を引かれたのは、色鉛筆で描かれた「さかなはさかな」という絵本の原画だ。貼り絵なしで、色鉛筆だけで描かれている。
この展覧会にはレオ・レオニの絵本をたくさん集めて自由に読めるようにしたコーナーもあって、そこで「さかなはさかな」の絵本も見たのだけれど、当然のことながら原画とは全く違うものだ。色鉛筆の原画にある柔らかさや曖昧さが、絵本という印刷物にすると鮮やかさに取って代わられてしまう。
何だかもの凄く惜しいような気がして、絵本を見た後で、もう1回、原画を見に戻ってしまった。
「Ⅲ 自分を見失ってーよくばりすぎはよくないはなし」で目を引いたのは、もう何といっても「みどりのしっぽのねずみ」である。
別に緑色の尻尾が珍しいということではなく、展示では絵本の内容やその「鑑賞のポイント」が恐らくは子ども向けにポップであちこちに出されていたのだけれど、お話の内容がポイントだったということでもない。
何が私の目を引いたかといえば、ねずみの話なのに貼り絵ではなく、すべて油絵で描かれていたことだ。正確に言うと、何故か私は「紙じゃなくてキャンバスに描いているんだ−。珍しいな−。」と最初は思って、画材が油だってことは全く頭に浮かばなかったのだけれど、それはまぁいいだろう。
メキシコでの体験が元になっているということで、色彩がまず違う。淡くないし、そして輪郭がくっきりとしている。
油絵だから当然なのかも知れないのだけれど、他の絵では紙なら紙の地が見えている部分が結構多かったりするのだけれど、このシリーズだけは背景が全て塗りつぶされている。
その重い感じがこの絵本には合うということだったんだろう。ちょっと異様で、印象に残る。
そして、このコーナーでもう一つ印象に残ったのが「平行植物」である。
私には今一つ説明が判りにくかったのだけれど、恐らくは、空想上の植物で、実際の植物の進化の仕組みからは外れている、いわば「異形の」植物たち、という感じ、だと思われる。自信がない。
そして、その描かれた「植物」を見て、私が最初に思ったのは「宮崎駿だ」だったのだから、我ながらイメージが貧困である。でも、そういう感想が浮かんだのだから仕方がない。
絵本では見せないダークサイドが出たということなのか、そもそも「平行植物」にダークサイドという感想を持つ方が変なのか、よく判らなかった。
「Ⅳ 知恵と勇気−小さなかしこいゆう者たちのはなし」では、やっぱり「スイミー」である。
大体、コーナーのタイトルだって明らかに判りやすくスイミーをイメージしている。
ただし、今回はスイミーの原画は展示されていない。孫娘に描いたという「スイミーの元、かも?」といった感じの線画が数点あるだけである。
その代わり、スイミーの絵本の世界を映像で見せようというようなコーナーがある。半円くらいの感じで壁を作り、その壁をスクリーンとしてスイミーの絵本の世界を映し出す。そして、そこには赤いお魚とスイミーがいて、大きなお魚を形作ったり離れたりする。さらに、人間が壁に近づくとその赤いお魚やスイミーが逃げて行く、という仕掛け付きである。
これは楽しい。
小さい子らは大喜びである。「壁に触らないでください」なんていう注意書きは無理に決まっている。
1時間くらい、行ったり来たり空いている場所を探しながら、でもゆっくり見ることができた。
ところで、この展覧会で一番混雑していたのは、間違いなく、ミュージアムショップである。凄い人だかりだ。レジの前にはロープを張ってディズニーランドみたいな通路が作られていたくらいだ。
会期終了目前ということで、売り切れになってしまったグッズも結構あったようだ。
私は、つい、ねずみのマスコットのついた時計と、あと暑中見舞い用に絵はがきを何枚か購入した。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント