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2013.09.15

「真田十勇士」を見る

「真田十勇士」
脚本 中島かずき
演出 宮田慶子
出演 上川隆也/柳下大/倉科カナ/葛山信吾
    山口馬木也/松田賢二/渡部秀/相馬圭祐
    小須田康人/粟根まこと/植本潤/小林正寛
    俊藤光利/佐藤銀平/玉置玲央/三津谷亮
    賀来千香子/里見浩太朗 ほか
観劇日 2013年9月15日(日曜日)午後1時開演
劇場 赤坂ACTシアター S列37番
上演時間 3時間30分(20分の休憩あり)
料金 9800円

 ロビーではパンフレット(2000円)の他、様々なグッズが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

  「真田十勇士」の公式Webサイトはこちら。

 主演の上川隆也が「真田十勇士自体にも仕掛けがある」といった感じでインタビューに答えていたのをどこかで見て、「実はその正体は」みたいな話なんだろうとは思っていた。
 そこへ、割と早い内に、柳下大演じる猿飛佐助が豊臣秀頼の寝所に忍び込み「顔を見てみたかった」と言っているのを見て、なるほど、と思った。
 しかし、誰が猿飛佐助が豊臣秀吉の息子だった、なんて設定を思いつくだろう。

 三味線とバイオリン(だと思うけれど確信はない)の音楽が鳴り響き、殺陣満載、舞台は縦方向にも横方向にも八百屋で組んであって、後方の私の席からもとても見やすかったし、恐らく死角はほとんどなかった筈、照明も派手に使って目立たせたい人物にはピンスポットをばっちり浴びせて浮きだたせる。
 衣装も派手なら(真田の赤備えはもちろんここでも健在かつ効果的である)、メイクも髪型も派手、外連味たっぷりでしょっちゅうあちこちで見得を切っている。
 やっぱり私は判りやすい、「この先どうなるんだろう」とわくわくするお芝居が好きだ。

 それはそれとして、舞台はずっと八百屋のままで、演じていた役者さんたちは死にそうだったんじゃなかろうか。
 しかも、そこで派手に闘ったり、一輪車で走りまくったり、ジャンプして飛び乗ったり飛び降りたり、縦横無尽の活躍である。
 その動きを見ているだけで、溜息が出てしまう。
 殺陣も「切っていない」ことが判るのだけれど、派手な効果音を使っていない分、バランスが取れているのか、後半になるにつれて「相手の体と刀との間が常に見て判るくらい離れている」ことの違和感を感じなくなったのが不思議である。どころか、より迫力が増しているようにも感じた。

 音楽も派手な照明も火薬も煙幕も使い放題あるけれど、実はこのお芝居の「演出」は、非常に手堅いもののような気がする。印象として端正なのだ。
 それは、例えば十勇士の中に粟根まことや植本潤が入っていたり、大野修理亮治長を演じているのが小須田康人だったり(舞台で拝見するのはもの凄く久しぶりな気がして嬉しかった)、真田幸村の上川隆也がどんと真ん中で重心低く立ち、周りを固める役者陣が充実していて、演出家が役者さん達を信頼しているからこそのオーソドックス、という感じがした。

 題材はタイトルのとおり「真田十勇士」で、決して先行き明るい物語ではない。
 ロビーで流されていたプロモーションビデオ(みたいなもの)だって、大きく「負けて、」「勝つ」と銘打っていたくらいで、要するに真田幸村が大阪夏の陣で負けたことは確かだし、これをもって豊臣が滅びたことも間違いない。
 その「滅び」の中で奮戦した真田十勇士を描こうというのだから、明るい物語になる筈もないのだ。「いかにして滅ぶか」という物語である。

 真田幸村が、大阪入城の時点で「名声」を持っていなかったのは間違いない。
 父の昌幸の生前は父の活躍の影に隠れてしまっていたし、関ヶ原の戦い以後は九度山に蟄居を命じられていた。私の中では、真田幸村は「遅れてきた人物」である。もう少し早く生まれていて、もう少し大阪入場の時点で「名声」を手に入れていれば、その後の大阪冬の陣、夏の陣では彼の唱える戦術が採用されていたかも知れないし、そうなっていれば、徳川方が苦戦しただろうことは間違いないと思う。
 だから、真田幸村というと、その「遅れてきた自分」にもがいていた人物という印象が強い。
 そう考えると、2日連続で「名声」に振り回された人を描いたお芝居を観たということにもなるのだけれど、その「名声」のあり方は、昨日と今日とで全く違う。

 この「真田十勇士」の真田幸村も、全てを見通した「出来た」人物のように描かれつつも、やはりその葛藤は抱えているし、徳川家康に対して「敵わない」という意識が常にある。幸村の父親の昌幸は、年の功の分、幸村よりも冷静に見ていて、徳川の天下は揺るがない、だったら豊臣の血筋を残すことが一泡吹かせてやれ、と遺言したのだそうだ。
 淀の方の独善ぶりと秀頼のマザコンぶり、家康の「豊臣の血筋が残る限り、そこに寄って反旗を翻そうという輩は後を絶たない」「豊臣の血筋をなくすことが天下太平への道」という考え以上の「天下が治まる道」を見いだせなかった幸村が敗北感にまみれて酒に負けるシーンは、「こんなところは見たくなかった」と思いつつも、この芝居の重要な転換点だ。

 大阪入城を求められた真田幸村が、里見浩太朗演じる徳川家康に宣戦布告しにわざわざ駿府に赴き、その様子を見ていた松田賢二演じる由利鎌之助と猿飛佐助が幸村の配下について十勇士が揃うところから話が始まる。
 初っぱなかから忍び同士の戦いを見せて、一気にこの世界に取り込んでしまうのが見事と言うしかない。というよりも、取り込まれてやられてしまったのは私である。
 大阪城下でめしやを一人で営む倉科カナ演じるはなの店に十勇士が入り浸っていたのは実は彼女を疑っていたからで、そんな中佐助一人はどうも本気で彼女に惚れたらしい、という辺りからすでに伏線は張りまくりである。

 佐助の正体を知った幸村は、秀頼を助けることを諦める代わりに佐助を生き延びさせようとする。
 結局、秀頼や、秀頼から依存されているようで依存しきっている淀殿を説得することも翻意させることもできず、自分の無能感にうちひしがれていた幸村が、「実は佐助が秀吉の子供だった」という自分の努力とは関係ないところに活路を見出してしまうのが何とも不満だったのだけれど、一度決めた後の幸村は、そうして張りまくった伏線を、後半で一気に回収して行く。
 いや、幸村は佐助を生き延びさせるという一点に自分と真田家の全てを賭けようと決め、そうするだけのことで、伏線を回収しようとしている訳ではないのだった。

 徳川方を出し抜き、佐助を明国に送り出すため、真田軍は負け必至の状況で秀頼を守るべく奮戦する。
 それが、幸村の作戦で、何故か秀頼と淀殿もこの作戦にあっさりと同意する。だったらこれまで! と思ってはいけないのだ。
 この「大きな作戦」は、さらに十勇士たちに二重三重に裏切りを装わせることで徳川方を翻弄し、自分が撃った筈の佐助が自分の送ったお守りで命救われたことを知ったはなとともに、佐助は無事に脱出する。
 それを知った徳川・真田の両軍は正面衝突し、真田十勇士は次々と闘い破れて死んで行く。
 その一人一人に見せ場を作り、スポットを当て、見栄を切らせて行く。
 どこまでも、外連味たっぷりだ。

 最後に幸村の死とともに流れる中島みゆきの歌がやっぱりインパクトがありすぎるとか、徳川260年の幕を引いたのはペリーの黒船で、その中の一艘は「サスケハナ」という名前であったとか(嘘かと思って調べたら、本当だった!)、最後の最後まで気を抜かせない、畳みかけるように、次から次へと必殺技が繰り出される。

 It's the entertainment!
 見終わって、私の頭の中にはこの言葉がどどーん! と居座っていた。
 楽しかった!

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コメント

 みずえ様、お久しぶりです&コメントありがとうございます。
 「おのれ ナポレオン」のときはお世話になりました(笑)。

 「真田十勇士」良かったですよねー。
 あまりにも良かったので、もう1本の「真田十勇士」も見ようかしらと思い始めました。今からではチケットはぎりぎり取れそうですし。

 確かに、「どうしてとどめを刺さない!」と思いましたよね。私も、あそこで「才蔵は死んでないのね。全部お芝居なのね。」と確信しました(笑)。
 何も刀をあそこまで近づけておいて、鼓動と呼吸だけ確認なんてヒマなことしなくても・・・、と思いましたです。

 ラッパ屋もイキウメもこれから公演がありますね。
 楽しみです!

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2013.09.18 22:53

姫林檎さま

以前もコメントさせていただいた「みずえ」です。
憶えていらっしゃいますか?

「真田十勇士」は私も観ました、上川さんファンなので。
あまり真田幸村に関しての知識なく観たのですが、すぐに引き込まれました。
みゆきさんの歌は勿論、戦闘シーンで流れる吉田兄弟の三味線も良かったですね。
十勇士だけでなく、家康役の里美浩太郎さんはさすがでしたし、半蔵役の馬木也さんも素敵でした。
でも、後半の騙されシーンは、いくらなんでもプロの忍びなら、そこで息の根を止めるだろう、と心中突っ込みましたけど。
まあ、そんなことを差し引いても、素晴らしい舞台だったと思います。
「サスケハナ」はウィキ率高かったと思いますよ(笑)

ところで、私もイキウメやラッパ屋のファンなんです。
今後もブログ、楽しみにしていますね。

投稿: みずえ | 2013.09.18 15:48

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