「十二夜」 を見る
Dステ 14th「十二夜」
原作 ウィリアム・シェイクスピア
演出・上演台本 青木豪
出演 碓井将大/三上真史/池岡亮介/荒井敦史
加治将樹/鈴木裕樹/陣内将/山田悠介
近江陽一郎/山口賢貴/坪倉由幸(我が家)
ミッキー・カーチス
観劇日 2013年10月8日(火曜日)午後7時開演
劇場 紀伊國屋ホール S列9番
料金 7000円
上演時間 2時間20分(アフタートークショー含む)
紀伊國屋ホールのロビーが、グッズを買う人で溢れていて驚いた。
驚きすぎて、何を売っていたのかチェックしそびれた。この公演のDVDの予約のテーブルが混雑していた、ように思う。
ネタバレありの感想は以下に。
「十二夜」というこのお芝居は、シェイクスピア作品の中では割と地味めというか、どちらかというとマイナーな感じがしていたのだけれど、ここ数年、上演されることが増えているように思うのは気のせいだろうか。
入れ違いというか勘違いの喜劇だし、ヴェニスの商人やじゃじゃ馬ならしっぽい「若い女性が男装」も含まれているし、楽しく演じて楽しく見られるということもあるかも知れないと思う。
この「十二夜」も遊び心満載という感じだ。
開演前から、出演社たちは舞台上にいて、ウォーミングアップを兼ねたゲームを次々とこなして行く。失敗したら腕立て伏せ5回なんていう罰ゲームもついていて、とても楽しそうだ。
「男だけ」というのは、こんなに楽しそうなものなんだなと思う。そして、何故か舞台上に「紀伊國屋神社」がデンと鎮座ましましているのが可笑しい。シェイクスピア劇なのになぜ? と思う。
ともかく、皆して紀伊國屋神社に舞台の成功を祈ってお参りし、出演者から注意事項(携帯電話やおしゃべりなど)が語られ(こういう役は、大抵、三上真史がこなしているように思う)が語られ、いざ開演だ。
紀伊國屋神社は、劇中劇(しかも、人間が人形振りをする人形劇)が上演される劇場となり、開演前にはロビーにもいた楽隊が演奏するステージにもなる。意外と、そう思って見ると「日本風」でもなく違和感なくそこにあるような気がしてくるから意外だ。
とにかく楽しく可笑しくぎゅっと笑ってもらおうという意図に紀伊國屋ホールは合っている劇場だと思う。
S列だと流石に舞台が遠くて、遠近法でずっと向こうにあるような気分になるのが惜しいところだけれど、その人間が詰まった感というのは大きい。また、若手の男優陣ばかりだから、舞台が実際以上に狭く感じる。その両方の効果で、とてもとても「詰まった」感が出てくるのだ。
カーテンコールでも思ったのだけれど、シェイクスピア劇というのは、女性の登場人物が少ない。
実際、シェイクスピアの時代でも男優ばかりで演じていたということもあるのか、時代として女性が表に出るということがなかったからなのか、この「十二夜」だって恋の喜劇なのに、女性の役は、双子の妹のヴァイオラと、ヴァイオラが仕えるオーシーノー侯爵が恋い焦がれているオリヴィアと、オリヴィアの侍女のマライアの3人だけだ。
しかも、ヴァイオラは物語の大部分で男装しているから、スカート姿の女性は2人だけと言ってもいい。
この2人の女性をどう作るかというのが結構「十二夜」という芝居に対するスタンスを如実に表すように思う。
ここを可憐な女性2人にすることもできるし、オリヴィアを可憐にマライアを強烈にすることもできると思うのだけれど、今回は「2人とも強烈に」して「笑かしてやろう」という意図をビシビシと感じた。
池岡亮介演じるオリヴィアは(少なくとも遠目には)かなり素っ頓狂になっていたし、加治将樹演じるマライアは「イメージはマツコ・デラックスですか?」というキャラに見える。トークショーに出てきた瀬戸康史は「ああいうおばちゃん、いますよね」と評していたが言い得て妙である。
可笑しい。
伯爵家の道化や、サー・トービーなど蹴散らして、この女主人と侍女にかっさわられて、かなり笑わせてもらった。
その分、碓井将大演じる男装してオーシーノー侯爵に仕えてそのご主人様に恋してしまったヴァイオラ改めシザーリオや、三上真史演じる彼女の恋の相手であるオーシーノー侯爵、荒井敦史演じるヴァイオラの双子の兄であるセバスチャンたちは、物語を支える方に力を傾けているように見える。
ちょいちょいと笑いを取りつつも、しかし、彼ら3人が物語の大筋を動かし、その物語を広げるのが、ミッキーカーチス演じるオリヴィアのおじであるサー・トービーや、坪倉由幸演じるオリヴィアの執事のマルヴォーリオらだ。くっきりきっぱりその役割分担を徹底しているようにも見える。
マライアやサー・トービーらがマルヴォーリオを騙してこらしめてやろう大作戦を決行する様子が、「十二夜」のいわばサイドストーリーだ。そこには「マルヴォーリオのオリヴィアへの恋」も加わっている。
オリヴィアは(本当は女性である)シザーリオに恋をし、そのシザーリオに化けているヴァイオラはご主人のオーシーノー侯爵に恋をし、そのオーシーノー侯爵はずっとオリヴィアに求愛し続けいて、その使者をシザーリオに務めさせている。ぐるぐる回って落としどころがないように見えるこの関係に、「ヴァイオラの双子の兄」をぽんと飛び込ませることであっさり解決してしまうシェイクスピアはやっぱりご都合主義だ。
大体、オーシーノー侯爵があっさりとヴァイオラに鞍替えするのが納得いかない。きっと演出の青木豪もそう思ったから、オーシーノー侯爵とシザーリオが音楽を聴きながら手を握り合っているなんていうシーンを強調したのだと思う。それにしたって、オーシーノー侯爵はこのときシザーリオを男だと思っていた筈なのだから、うーんという気がしなくもない。
伯爵家でのできごとをメインに据えて(それは笑って貰おうという意思の表れでもあると思う)いる分、荒井敦史演じるセバスチャンと近江陽一郎演じるアントーニオとの関係や、オーシーノー侯爵家に捕まってしまったアントーニオがその後どうなるのか、描かれなかったのは気になる。
それはともかく、2時間強、ぎゅっと詰まった喜劇を楽しんだ。
こういうオールメールシリーズもありだな、楽しいなと思ったのだった。
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