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「SONG WRITERS」
脚本・作詞・音楽プロデュース 森雪之丞
演出 岸谷五朗
作曲 KO-ICHIRO(Skoop On Somebody)/さかいゆう
杉本雄治(WEAVER)/中川晃教/福田裕彦
出演 屋良朝幸/中川晃教/島袋寛子/泉見洋平
藤林美沙/植原卓也/平野良/コング桑田/武田真治/他
観劇日 2013年10月25日(金曜日)午後6時30分開演
劇場 シアタークリエ 12列19番
料金 10500円
上演時間 2時間30分(20分の休憩)
ロビーでは、パンフレット(1500円、だったと思う)やTシャツなどが販売されていた。
そういえば、シアタークリエは客席内への飲食物持ち込み可だった。珍しいと思う。
ネタバレありの感想は以下に。
かなり複雑な物語の構造を持たせ、それをかなり多めの歌と踊りで繋いで行く。
2時間半、かなり盛りだくさんである。
登場人物は、エディだったりピーターだったりマリアだったりするのに、どうして楽曲が演歌なんだ? と思って、休憩時間にちらしを見直したら、「脚本・作詞・音楽プロデュース 森雪之丞」で納得した。作曲陣に名前を連ねている方々は知らないのだけれど、私の中で森雪之丞という人は、かなり日本的な音楽を作る人というイメージなのだ。
物語の構造が本当に入り組んでいて、最初のうちは「はて?」という感じになる。どこまでが現実でどこからが偽物の世界ですか? という感じになる。
大体、最初のシーンが、中川晃教演じるピーターが相棒エディの死を悼んでいるところに、武田真治演じるニックがやってきて「おまえのせいじゃない」と慰めるというシーンなのだ。えーっと、という感じになるではないか。
しかも、次のシーンで屋良朝幸演じるエディがピーターの部屋に飛び込んでくるのだから、最初からめくるめく展開である。そういえば、「現在は****年」という画像が出ていたような気もするのだけれど、ちゃんと見ていなかった私が悪いんだろうか。
そのうち、エディとピーターはコンビを組んで作詞/作曲をし、いつかはミュージカルを上演したいと考えており、ニックはその夢を後押ししている音楽プロデューサーだということが判る。
2人の書いた曲をボスに見せたところ非常に気に入られた、でも女性シンガーの声で聞きたいと言われ、エディが昨晩知り合ったという女の子を連れてくる。島袋寛子演じる、しゃべるとえらくなまっているマリアは、しかし歌わせると「歌姫」そのものだ。そうして、とんとん拍子にミュージカル化の話が決まる。
作詞だけでなく脚本も担当することになったエディは四苦八苦している。
ピーターがキャバレーでバイトしているという設定で、ピーターがピアノを弾いているからこれはバイト先のシーンかなと思って見ていると、ピーターは実は背景になっており、そこはエディが考えている話の中だということが判る。
というか、エディが「そんなんじゃない」とエコーの効いた声で乱入してきて初めてそうだと判る。
コング桑田演じるマフィアのボスは、泉見洋平演じる刑事とつるんで麻薬組織の拡大を図っている。そのマフィアのボスの今の「女」が、刑事の元彼女である藤林美沙演じるパティだというのもまたややこしい。
そんなに狭いところで話を回さなくてもいいじゃないかと思う。
エディを演じる屋良朝幸の踊りが上手い、と思う。
どうしてこんなに上手く見えるんだろうと思ってじーっと見ていて、それは、顔が常に前を向いているからじゃないかという気がした。もちろんそれだけじゃなくて全体的に上手いのだけれど、特に「上手い」という印象を与えるのは顔の向きと表情の所以じゃないかという気がする。
歌も上手いから、屋良朝幸と中川晃教の2人で歌っているシーンが一番安心して聴くことができたように思う。また、中川晃教に歌わせると、ソロを取っているときの力強さはもちろんだけれど、誰かの歌声に沿わせているときの存在感のなくてある感じは天下一品だと思う。
島袋寛子ももちろん上手いと思うのだけれど、彼女の場合は、一人勝ちする歌なんじゃないかという気がした。
でも、全体的に「歌える人」を集めていて、全体的にどっしりした感じがあったと思う。
後半になって、エディが書いていた筈の世界で登場人物がどんどん勝手に動き回るようになり、マリアが実はエディにストーリーを示唆していたことが判り、ついには、マリアは実は自分がパティなのだと告白する。
エディもピーターもマリアのことが好きなのだけれど、ここでエディに軍配が上がったも同然だけれど、エディはそれはそれとして「マリアが自分のことをちっとも好きじゃなかった」ことにショックを受ける。マリアの他にも日本人と中国人の女の子と暮らしているくせに、まことに勝手な奴だ。
そもそも、この4人暮らしの設定は必要なんだろうか、と思ってしまう。
そして、パティの世界の「ボス」と、マリアの世界の音楽会社社長が同一人物という偶然があり、パティが整形手術を受けたこともバレてしまい、ついにはマリアとエディはマフィアに追われることになる。
ニックも当然のことながら、パティすなわちマリアの敵である。
この辺で、エディの頭の中の物語の中で、ニックがわざとらしくフードを被って「パティの元彼の相棒」を演じていたところ、実は裏切っていた刑事であったことなどの伏線が生きてくるのだけれど、あまりにも伏線過ぎて「凄い」とすら思えない。
ニックとマリアのやりとりを見ていたピーターが何も気がつかないのもどうかと思うし、エディの同居人である日本人と中国人の女の子が何故かそれぞれ武道の達人だったり、ここから後は、とにかく大団円にするために何でも使ってやるという決意漲る展開である。
しかし、まぁ、口ずさみやすい音楽に、安定した歌声があれば、そんなことはミュージカルの世界ではどうでもいい感じになってくるのがお約束だ。
究極のご都合主義は、ピーターの住むアパートの管理人(実は、最初のシーンでもニックとともに登場している)が、実はパティの元彼のお兄さんであるFBI捜査官で、ニックを尾行するためにピーターの住むアパートの管理人になりすましていたという設定である。
当然のことながら泉見洋平が演じているので「そっくりでしょう」という台詞が出てくることになる。
いいのか、それで、と思ってしまうけれど、何故かニックがいい人になって「エディとピーターを売り出そうとするのは楽しかった」と語っちゃうし、マフィアのボスも「ここでがんばってもパティが戻って来る訳じゃない」と最後はやけに物わかりがいいし、もう何でもありだ! という感じである。
そしてその、「何でもあり」を許させるのが、歌と踊りの力、ということになると思う。
何だかんだ文句を(心の中で)言いつつも、歌と踊り満載の楽しいミュージカルを堪能した。
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コメント
ひかる様、コメントありがとうございます。
うーん、やっぱり私の記憶力はかなり怪しいですね。
何となく、ピーターの部屋にエディがやってきて、「ピザの匂いが充満している!」と文句を言って窓を開けるシーンが最初の頃にあったような気が・・・。
そのままニックにミュージカルを依頼されるシーンに続いて、だったら「生きていたのか!」とピーターが驚く必然性はないような??? などと思ったように記憶していたのですが、完全に私の中でごっちゃになっているようです・・・。
再び、教えていただいてありがとうございました。
投稿: 姫林檎 | 2013.11.01 22:46
冒頭のニックがピーターを訪ねるシーンは、1975年8月、エディの生爪を平野良くんが剥いでいる頃ですね。
ほぼ同じシーンがもう一度あります。
開演直後に、エディがピーターの部屋にやってきて、ピーターが「生きてたのか?!」と驚くシーンがありましたか?
それは、二度目のニック訪問のシーンの直後だと思います。
開幕直後に暗転して、時間が1ヶ月遡り、ニックがピーターらにミュージカルを依頼するシーンとなります。
投稿: ひかる | 2013.10.31 00:37
ひかる様、コメントありがとうございます。
そして、教えていただいてありがとうございます。
わざわざ年月が投影されているのだから意味があるのでしょうに、劇場で見ているときは「あー、何年だ−」と思ってぼーっと見てしまい、2回目に出たときに「あら、さっきは何年だったかしら」と思うというボケぶりだったので・・・。
そうすると、開演直後の、エディがピーターの部屋にやってきて、ピーターが「生きてたのか?!」と驚くシーンはどういう位置づけなんでしょう??
あのやりとりの中で緩やかに1年前に時が飛んだということなんでしょうか??
投稿: 姫林檎 | 2013.10.30 22:53
》「現在は****年」という画像が出ていたような気もするのだけれど、
ニックがエディとピーターに、ミュージカルを作れと持ちかけるのが1975年7月、エディがニックに捕まって、殺されかけるのが1975年8月、最後にミュージカルが完成するのが1976年7月、ということらしい。
『パティの世界の「ボス」と、マリアの世界の音楽会社社長が同一人物という』設定を『偶然』と言い切る辺り、なかなか面白いと思った。
この偶然がないと、この物語は成立しないけれど、物語なんて、偶然の産物だという割り切りが面白い。
投稿: ひかる | 2013.10.28 01:07