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2013.11.15

「自作自演」第7回を見る

芸劇+トーク 異世代作家リーディング「自作自演」第7回
出演 松尾スズキ/岩井秀人/徳永京子
観劇日 2013年11月14日(木曜日)午後7時開演
劇場 東京芸術劇場シアターウエスト B列22番
料金 3000円
上演時間 2時間15分(10分の休憩あり)

 ロビーでは「会場限定」というグッズなどが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 東京芸術劇場の公式Webサイト内、「自作自演」第7回のページはこちら。

 60分の「自作自演」、10分の休憩、65分のトークという構成だった。
 最初に徳永京子が出てきて、この「自作自演」という試みについて一応の解説をしてから始まった。といっても、昨年から始まった試みで、この企画が始まったきっかけの話や、第7回の今回はとても人気があって初めてチケットが完売したといった、軽い説明である。
 本日の進行についても、最初の60分が自作自演、10分の休憩の後で、65分のトーク、トークの司会は自分が務めますというくらいで、2人の作家を紹介し、何となく始まる感じだ。
 それにしてもずるずるである。もう少し上手く仕切れないものかとちょっと思う。
 最初に「自作自演」した岩井秀人も「こうやって始まるんだ」という感じだった。打ち合わせはあってもリハーサルはなかったということらしい。

 岩井秀人は、かなりラフな格好である。
 TV Brosという雑誌に連載しているコラムから、大検予備校に通っていた頃のエピソードをメインに何篇か読んでいた。脇のテーブルには大きめのデジタル時計が置かれている。30分という時間制限があって、その時間管理は読み手に任されているらしい。
 コラムに書かれたエピソードは全て「実話」だったようで、書き言葉としゃべり言葉とで違うから変えたくなるし、足りないと思う部分については説明したくなってしまうらしい。そこを抑えて「リーディング」に徹するのが難しそうだった。また、に自分が書いたものを自分で読んでいるので、余計に「リーディング」というよりは、一人芝居に限りなく近くなって行くという部分があるように思う。
 本人の経験を本人が書いて本人が読む際に、中立的に淡々と読むのは逆に難しいのかも、と思った。
 最初の一話が終わったところで岩井秀人が一息つくと、やはり反射に近い感じで拍手してしまう。それを聴いて「僕が、すぐ次に行くようにしますね」と呟いていたのも何だか可笑しかった。

 一方の松尾スズキは、スーツにネクタイ、帽子まで被っている。トークで話題になっていたけれど、TシャツにGパンの岩井秀人は着替えていて、スーツの松尾スズキは来たときのままの格好だったそうだ。
 十数年前に書いた小説ですと断って、最初の1本は哀川翔の付き人視点の小説、次の1本は竹内力の付き人視点の小説だった。哀川翔と竹内力の2人については声色を使うのが可笑しい。
 ご本人曰く「声色に持続力がない」ということで、最後の方はちょっと混乱している? みたいな部分もあったけれど、可笑しいものは可笑しい。
 1本目が終わったところで「ちょっと2本目は落ち着いてやります」と言っているのも可笑しく、そりゃあ哀川翔を「しゃべりたがり」キャラとして演じたら全体のテンションも上がろうというものだろう。
 こちらも正しく一人芝居という感じだった。

 お二方とも、作・演出・出演を兼ねているから、「リーディング」と銘打ったところで、芸達者というか「演じたい」というか「楽しませよう」という性はどこまで行ってもあふれ出てくるんだなという感じで楽しめた。

 10分間の休憩の後、トークとなった。
 どんなことを話していたのか、実はあんまり覚えていない。時々「え?」というくらい、岩井秀人が素で気分を害して怒っているような口調になっているのに驚いたけれど、多分、それは素だったんだろうと思う。
 岩井秀人が松尾スズキのお芝居が好きで発言に注目していて尊敬しているというのは間違いなく本当で、岸田戯曲賞を受賞したときの松尾スズキの直筆選評を岩井秀人は額に入れて飾っていると言っていた。尖がっている訳ではないけれどトゲ(それは時にハリネズミのハリのようにも感じられる)が見え隠れする岩井秀人に対して、その松尾スズキがやけに常識的に見えてしまうところも不思議な感じだ。
 それでも、松尾スズキがしつこく「現代口語演劇」と繰り返していたのが稚気だったのかなという感じもする。
 一言で言うと、刺激的だ。スパイス効きまくりである。

 何が話されていたのか覚えていないのは、会場からの質問の最後の一つがやけに印象的だったからだ。
 質問者は大学で演劇を勉強しており、授業の一環で演出を担当している、二人が演劇(演出)を始めた頃にぶつかった壁をどう乗り越えたのか教えて欲しいという質問だった。
 他人が書いた戯曲を演出するのは難しいというのが岩井秀人の基本的な認識のようだ。題材は何かと真っ先に聞いたし、「台本を変えちゃいけないんだよね?」とも聞いている。
 3つのグループで競演するのでそれはできない、1つだけコメディにする訳にも行かないし、と言う質問者に、松尾スズキは「3つやるんだったら1つはコメディでもいいんじゃない?」「最初から最後まで力いっぱい台詞を言うっていうのはどう?」などという話になってくる。

 「どんな壁にぶつかっているのか」と聞かれて、質問者の彼が「役者のモチベーションを上げること」と答えると、本当に間髪いれずに岩井秀人が「それは演出の仕事じゃない」と答えたのが激しく印象的だ。だったら誰の仕事なのか、演出の仕事は何なのかということまで語ってくれればいいのにと思う。
 松尾スズキが、フォローの意もあったのか「最初の頃は、役者だって上手くないし、自分も怒鳴ったり殴ったり蹴ったりしたこともあったけど、それじゃダメだと気付いて、自分も傷つこうと思った」と言ったことに岩井秀人が「それはおかしい」と噛み付いて、しばらく質問者の彼をそっちのけで2人が(というか、主に岩井秀人が)マイクも無視し、客席もうっちゃり、松尾スズキだけを見て話始めたのも、覗き趣味的ではあるけれど興味深い。
 やっと質問者の彼が立ち尽くしていることに気付いた松尾スズキが「あの人、いいの?」と言ったときにほっとした人は結構いたと思う。間違いなく、徳永京子はその一人だ。

 とにかく刺激的な2時間強だった。

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