「ライクドロシー」 を見る
M&Oplays プロデュース「ライクドロシー」
作・演出 倉持裕
出演 長澤まさみ/高橋一生/片桐仁/塚地武雅
川口覚/竹口龍茶/吉川純広/銀粉蝶
観劇日 2013年11月16日(土曜日)午後1時開演
劇場 本多劇場 Q列13番
料金 7000円
上演時間 2時間10分
ロビーでは、Tシャツやバンダナ、パンフレット等が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
高橋一生、片桐仁、塚地武雅演じる3人組、アクロ、バイス、リオは脱獄囚だ。どうしてそれと判ったかというと、白と黒の太い縞という判りやすい格好をして、それぞれの手と足が鎖で繋がれていたからということもあるけれど、長澤まさみ演じるマッツが「心の声」みたいな感じでナレーションを流していたからだ。
そういう意味では「判らない」ということはまずない、親切設計で安心お気楽、「どうぞ楽しんでください」といった感じの芝居である。
タイトルからして「オズの魔法使い」のパロディーかと思わせるけれど、私が「オズの魔法使い」のストーリーを綺麗サッパリ忘れ果てていたというだけではなく、ストーリーには特段「オズの魔法使い」との関連性はなかったと思う。
ストーリーでなければ何かというと、登場人物の設定で、アクロは脳のないかかし、バイスは心のないブリキの樵夫、リオは臆病なライオンから取られているし、マッツとドロシーに共通点があるかどうかは今ひとつよく判らなかったけれど、銀粉蝶演じるザポット市長はともかくとして、その双子の姉(名前も登場したけどすでに忘れている)はとりあえず登場のときには霊能力者である。
3人の脱獄囚の乗った船は難破し、見知らぬ島の海岸に打ち上げられる。そこにやってきた車が事故を起こして大破し、3人人間が死んでしまう。
その3人はどうやらこの島の市長に招かれた芸術家だったらしく、彼らの服を奪った3人は、市長の邸宅の小間使いマッツによって「芸術家」に仕立て上げられ、とりあえず脱獄囚ではない格好と身分を得る。
しかし、マッツも決して親切心から助けたわけではなく、指名手配犯を匿う代わりに、悪逆非道の市長の家から自分が逃げ出すための脱出口を掘るのを手伝えと3人に命じる。
3人を警察や、市長の息子の疑いから守るためには、「自分は可愛い」ということを徹底的に武器にする一方、3人には超高圧的という、なかなか厄介なお嬢さんは長澤まさみのはまり役なんだろう。上手くはないけれど、生き生きと演じている。
生き生きとといえば、姉の一派が襲ってくればマシンガンや猟銃をぶっ放し、密輸で儲け、自分の息子を後継者に仕立て上げようという強かな市長を演じる銀粉蝶もかなり楽しそうだ。悪役を演じるって、しかも、ここまで判りやすい悪役を演じるっていうのは本当に楽しいんだろうなと思う。
よくよく考えれば「生き生きしている悪役」というのもどうかと思うけれど、しかし、「悪役を生き生きと演じている」のとはやはりそこは違っていて、後者であれば芝居を壊すことはないのだ。
楽しそうなのは、アクロとバイスとリオを演じた3人も同様で、それぞれ「欠けたところのある」キャラを楽しそうに演じている。3人は、喧嘩をしながらも、何とか「芸術家」になりすまし、マッツの依頼を受けて穴掘りに従事する。
バイスが時折「やってらんねーぜ」という態度に出るのだけれど、アクロが天性の人の良さで宥めたり、リオが本当はライオンなんだもんねという迫力を見せたりして、つまるところ仲良く3人でマッツに協力するのだ。
それは、実は「脱出口を掘る」なんてのは大嘘で、市長の姉によって、亡くなった市長の息子の心を入れられてしまったマッツの兄の体から市長の息子の心を追い出すため、市長に地下牢に幽閉されてしまった市長の姉を助け出すための穴だということが判ったときも同様だ。
市長の姉(銀粉蝶の一人二役である)を助け出したものの、彼女に神通力や霊能力はなく、マッツの兄がマッツの兄に戻ることはなかった・・・、という方向で進むのかと思いきや、実はマッツの兄は最初から市長の息子の心に乗っ取られてなどおらず、市長の姉は「人格者」などではない「インチキ霊能力者」で、マッツの兄は市長の改心を促すために市長の息子のフリをし、追い出されなかったフリをしたらしい。
マッツの兄は、芸術祭を企画して全島民を集め、こんな派閥争いで戦争すら起こすようなことは止めるよう訴えようとしていたというのだ。
いや、それでは、今までの所業の意味が判らないだろうとツッコミを入れたくなったけれど、まぁどうでもいいかという感じもする。いいよね別に、整合性なんてあったってなくたって、と思わせてしまうところが、多分このお芝居の持ち味だ。
でも、市長とマッツが対決して、理由は忘れたけれど市長は改心したし、密輸の荷物に化けて脱出する筈が逃げそびれて芸術祭の舞台に立ったアクロが感動ものの演説をして島民の心を和ませ一つにする。「相手の悪いところを嫌うとどんどん上手く行かなくなる」「相手の悪いところはなるべく嫌わないようにすればいい」というアクロの詩作というか演説は、ストレートすぎるけれど胸を打つ。
なんだ、楽しかったじゃん、と思いながら劇場を後にしたのだった。
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