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2013.12.21

「ア・ラ・カルト2 ~役者と音楽家のいるレストラン」 を見る

「ア・ラ・カルト2 ~役者と音楽家のいるレストラン」
役者 高泉淳子/山本光洋/本多愛也/中山祐一朗
音楽家 中西俊博(vn)/クリス・シルバースタイン(b)/竹中俊二(g)/林正樹(p)
日替わりゲスト 篠井英介
観劇日 2013年12月20日(金曜日)午後6時30分開演
劇場 青山円形劇場 Dブロック11番
料金 6500円
上演時間 2時間55分(10分間の休憩あり)

 ロビーでは、高泉淳子の著作や、中西俊博のCDなどが販売されていた。

 最後になるかも知れないステージを最前列で見られたのは嬉しい。
 私は「遠くの正面か近くの後ろ姿」「テーブル3つが一直線に視線どおりに並ぶ」という席で、最初は後ろ姿がとても気になったのだけれど、最後にはそんなことはすっかり忘れていたから、かなり楽しい席だったと思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 タイトルというかチラシには「ファイナル」と銘打ってあったけれど、お芝居の中でファイナルを前面に出すと淋しくなりすぎるということだと思う、どちらかというと「25周年」を前面に出した校正になっていたと思う。

 Aperitifの「ひとりだけの特別席 −人生はおとぎ話では終わらない−」では、ここのところ(当初からなのかは私には判らない)最初のシーンに必ず現れ、この「ア・ラ・カルト」というお芝居は、彼女に供されたア・ラ・カルトのお料理なのだという枠組みを作り上げる、その彼女が「25年前に初めてこのお店に入った」「それが一人でレストランに入った最初だ」とこの25年間を振り返るところから始まる。
 25年は長い。
 けど、短い。

 2013年のア・ラ・カルトは、巨峰のシャーベットの入ったシャンパンから始まった。

 次のステージは、「フランス料理とワインを嗜む会 −三度炊く飯さえ硬し柔らかし−」である。
 高泉淳子演じるタカハシと、中山祐一郎演じるナカタくんが2人で開催している「フランス料理とワインを嗜む会」が、今年もレストランで開催されている。
 しかし、結婚して来春には子供も産まれるナカタくんはなかなか会の活動に参加できないし、1年ぶりに集ったこの会でも「来年のクリスマスは無理かもしれない」とあっけらかんと言い放つ。
 危機を感じていたらしいタカハシは、お店の2人のギャルソンと語らってナカタをおこわにかけ、ついには「自分一人になっても続ける」という台詞を引っ張り出す。
 25年前を振り返った後は、多分25年は続いていないけれど、でも「続ける」というテーマになっているところがニクい。

 タカハシは「吟じます」と言っていたけれど、さて彼が吟じていたのは何だったのか。
 都々逸は吟じるとは言わない? などと間抜けなことを考えてしまう。
 
 「おしゃべりなレストラン −あなたに今夜はワインを振りかけ酔わせたい−」に登場するのは、マダム・ジュジュである。今年は桃色というか紅色というか、ピンク系のぼかしの着物に黒い羽織というのだろうか、華やかな装いである。
 そこにやってきた篠井英介も着物姿だったのがいい感じだ。
 お約束の「メルシャン」と「富士通パソコン」もつい待ち構えてしまう。
 そしてまた、この2人が同い年だということにも驚いたし、ア・ラ・カルトが始まる前にそのプレステージともいえるような舞台を高泉淳子と篠井英介と加納幸和らが上演していたというのも初めて知った。

 さらに、早稲田にいた高泉淳子と、日芸にいた篠井英介と、2人が何の雑誌だと言っていたか見開きに載って、かたや「怪優」かたや「怪女優」と書かれていたと笑いあうのも何だか不思議である。
 30年以上前だということもあるんだろうか。少なくとも今の私に2人が怪優というイメージはないなぁと思う。
 また、篠井英介が男役を演じるときには「えいっ」となるし、高泉淳子はハイヒールを履かないと女を演じられないというのも、2人とも「普通にナチュラルに」というのが一番難しいと言うのも、いつまでも聞いていたいようなおしゃべりだった。

 そういう前振りがあったけれども、それにしたって「フランス料理恋のレシピ小辞典 −ワイン一杯よりお茶碗一杯のシアワセ−」で、高泉淳子がハイヒールで登場したのはいいとして、篠井英介までが「女性」として登場したときには驚いた。
 そう来たか、という感じである。
 もちろん大喝采だ。
 他の3人のゲストの回はどうしたんだろうと思ってしまう。
 今回は、メニューに台詞が書いてあることもないようで、高泉淳子が「うんうん、そうねって相づちを打ってくれていればいいから」と笑いを堪えて言うのが可笑しい。
 でも、まとまり方としてはキレイ過ぎたし、これは事前にある程度以上のお稽古か、筋書きがあったんじゃないかなぁと思ってしまった。
 全く疑い深いというのはよろしくないことである。

 休憩10分の間に、ワイン(1杯300円)が供される。
 これまでワインを飲んだことはなかったのだけれど、最後くらいはと赤ワインをいただいた。何も食べないでグラス1杯を空ける自信がなかったので、途中のお店でナッツを買って置く周到さである。
 これって、やっぱり楽しいわ、こんなことなら毎年ワインを飲んでいれば良かったと思ってしまう。

 後半はショータイムである。ギャルソン4人による息の合ったステージに、マダムといった風情の篠井英介の歌とくれば盛り上がらない訳がない。
 公約どおりにハイヒールを履いて女性の姿になって現れた高泉淳子の歌も格好いい。
 ここ数年固定化しているミュージシャンたちの息の合った演奏も楽しく、やっぱりいいよなぁと思う。

 ここまで来るとあとは残り少なく、「夢見る頃を過ぎても −ワンダフルワールド−」では、老境に入っている夫婦ではない男女2人の物語である。
 今回は、男2人に女1人、仲の良かった3人のうち2人が結婚し、その後ずっと会っていなかった女ともう一人の男が、夫が亡くなって久しぶりの再会を果たすという、「これ以上ないくらいのベタな恋愛物語」である。
 それもまた、羨ましい。
 見た感じは70代後半という辺りなのだけれど、それでも間違いなく「青春」だし「恋愛」なのが凄いと思うのだ。

 そして、最初のシーンに戻る。
 レストランに一人で来た彼女の食事も終わった頃だ。
 最後に彼女が食後酒に頼んだのがマンハッタン。ベースをウィスキーからブランデーに変えた「キャロル」をクリスマスに頼むのは恥ずかしいという話をしているところに、タキシードの篠井英介が再登場し、彼女の知り合いではなさそうなのに同席し、その「キャロル」を恥ずかしげもなく注文する。
 その感じが「恋の始まり」ではなく「よき仲間」な感じなのがいい。

 そして、〆のステージがあって、私にとっての、今年のア・ラ・カルトは幕を閉じた。
 来年は会えないだろうことがとても寂しい。

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