「2013年の5本」を選ぶ
2013年に見たお芝居は62本だった。
2011年よりも4本増えている。2013年も随分旅行に行って週末が潰れている筈なのに、この本数はどうしたことだろう。我ながら謎である。
来年も、本数はともかく、楽しくお芝居を観たいと思う。
62本見た中から選んだ「2013年の5本」は以下のとおりである。
「趣味の部屋」@パルコ劇場 2013.3.30
やられた感が満載で、参りました、という感じである。ここまで騙されるといっそ清々しいというものだ。
たくさんの仕掛けがあちこちに仕込まれていて、そのあり過ぎる伏線を(恐らくは)全て回収し尽くすこの計算された気持ちよさと、後味の悪さを一掃する見事な大団円のラストが爽快。古沢良太の脚本の勝利である。
そして、その仕掛け満載の本を活かしきった、芸達者としか言いようのない男優陣と、その中に入って相当に揉まれてがんばったに違いない紅一点の原幹恵の開き直った感と、見終わってみれば楽しくあざとかった演出を駆使した行定勲の遊び心に大拍手のお芝居だった。
「て」@東京芸術劇場 シアターイースト 2013.5.31
ハイバイの10周年記念全国ツアーで上演された「て」は、多分というか、間違いなくこの劇団の代表作だと思う。
ハイバイ自体が初見だったのが何とも悔やまれる。どうしてもっと早く見なかったんだろう。
作り込んで作り込んで、同じシチュエーションをぐるっと180度回して違う方向からも見せることで、その「お話」の確かさと奥行きと、陳腐な言い方かも知れないけれど「見方を変えれば真実も変わる」みたいなことを無言のうちに雄弁に語っている、ようにも思う。
自由席というのも久しぶりだった。自由席の選び方は難しい。
「春琴」@世田谷パブリックシアター 2013.8.9
こちらもまた、再演、再再演と重ねていたと思うのだけれど、今回、初めて見た。
これ以上はないくらいの独特の世界が舞台上で展開されて、まさに別天地。しかし、狂気の世界という印象はなく、意外なくらい静かだ。沈むときは沈む、浮かぶときは浮かぶ、その存在感を自在にコントロールする役者陣が素晴らしい。その沈んだ闇にあらゆるものが沈んで隠れて蠢いているようにも感じられた。
舞台の空気を作り上げた笈田ヨシが圧巻。艶めかしすぎる人形と深津絵里の声がマッチしてさらに煽る。
返す返すも、仕事が終わらずに遅刻してしまったことが悔やまれる。
「OPUS/作品」@新国立劇場小劇場 2013.9.27
弦楽四重奏団を舞台に、濃密かつ緊迫したやりとりが続く舞台。こちらも「趣味の部屋」と同じように、芸達者な男優陣に混じって、伊勢佳世が「必死について行っている」感じが役にも合っていて、ピタリだ。
四方から客席に囲まれた舞台で、「背中を見せる」「顔が見えない」ことが気になったのは最後のカーテンコールのときだけだったなんて凄すぎる。オーソドックスだけれど、この「どの席から見てもOK」というお芝居は実は意外と少ないのだ。
これはもう必死な伊勢佳世と、余裕を持ちつつしかし実は激しくせめぎ合っている段田安則、相島一之、加藤虎ノ介、近藤芳正の4人の役者を堪能するための舞台だ。
「片鱗」@青山円形劇場 2013.11.15
ここ数年の作品は全て見ているイキウメの青山円形劇場での公演。円形劇場を完全に360度囲まれる形で、しかも「こういう使い方もあったのか!」という驚きの舞台だった。
「こういう使い方もあったのか!」といえば、この舞台の要の一つは間違いなく客演の手塚とおるだったと思う。台詞なし、ひたすら怪しげな動きを繰り返す異形の者の役がハマっていて、この舞台の物語世界をすっきり終わらせず、おどろおどろしい雰囲気を漂わせ、かつ全く説明しないことで、別の何かを確実にそこで成立させていた。
そして、その「何だか判らない」「説明がない」ことが、カタルシスになっているのが不思議な舞台だった。
2013年は7本にしちゃおうかとかなり迷ったのが、以下の2本だった。
「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII」@東急シアターオーブ 2013.1.12
「マクベス」@シアターコクーン 2013.12.25
結果的に、割と今年はバランスの取れた5本になった、ような気がしている。
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コメント
あんみん様、コメントありがとうございます。
お片付けを終えて新年をお迎えになられたことでしょう。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
「春琴」良かったですよね。
ほんと、どうしてこれまで見なかったのか悔やまれます。
あんみんさんが挙げられたうち、「不道徳教室」「高校中パニック」以外の作品は私も見ています。ふふふ。
今年もいいお芝居をたくさん観られますように!
投稿: 姫林檎 | 2014.01.01 21:21
こんばんは、片付けがはかどらず、なんだか去年もこんな事を書いたような気がする、あんみんです。
なるほど、私は『て』以外は観てますね。
12/28、29とグッドバイとマクベスを観てきました。
グッドバイのセットはいいですね、気に入りました。
そしてさすがの段田さんと、静も動もいける蒼井優さんでしたね。
マクベスは傘と大玉転がしが無ければ良かったなという感想でした。
ついでに私の2013総括(笑)。
1位はぶっちぎりで春琴!唯一無二の世界感、完璧なチームワーク。
あとは断色、おのれナポレオン、不道徳教室、無休電車。
次点でかもめ・グッドバイかな。
文句なく楽しんだ!という所では、五右衛門ロック・高校中パニックかな。
今年も何度もお邪魔させて頂き、お世話になりました。
来年もどうぞ、いろんなレポートを上げて下さいね。
2014もいろんなお芝居の世界に浸りたいですね。
良いお年を!
投稿: あんみん | 2013.12.31 18:32