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2013.12.27

「マクベス」 を見る

シアターコクーン・オンレパートリー2013「マクベス」
作 W・シェイクスピア
翻訳 松岡和子
演出 長塚圭史
出演 堤真一/常盤貴子/白井晃/小松和重
    江口のりこ/横田栄司/市川しんぺー/池谷のぶえ
    平田敦子/玉置孝匡/福田転球/斉藤直樹
    六本木康弘/縄田雄哉/伊藤総/山下禎啓
    中嶋しゅう/三田和代/風間杜夫/他
観劇日 2013年12月25日(水曜日)午後7時開演
劇場 シアターコクーン 1階XC列6番
料金 9500円
上演時間 2時間40分

 ロビーでは、パンフレットや「もっと泣いてよフラッパー」のチケットなどが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 シアターコクーンの公式Webサイト内、「マクベス」のページはこちら。

 舞台を潰し、舞台があった場所にも客席を儲け、真ん中に少し高くなった舞台を設置してある。
 その周りを囲むように、さらにベンチ式の客席が並んでいる。
 少し高くなった舞台は中2階という感じで、半地下に当たる部分も役者さんが歩けるようになっており、舞台上の床を跳ね上げるとそこに階段があったり、さらに、舞台を置いたいわば土間の部分の床を跳ね上げてそこにある階段を降りられるようにもなっている。
 文章で書くとヘンなのだけれど、半地下、1階、中2階(ここがいわば「舞台」だ)という立体構造の舞台を、客席が四方から囲んでいる感じである。

 開演前から役者さんが劇場係の方に混じって舞台や客席のあちこちに立ち、席に案内したり、注意事項を話したりしているのも楽しい。
 何故役者さんだと判ったかというと、まだらの白塗りのようなメイクをしていたからだ。
 私の隣の席は通路に面していたけれどずっと空席で、舞台が始まる少し前、大柄な、顔に何故か猫のようなというか、まだらに白塗りしてそばかすを散らしたような「お化粧」をした女性が来た。
 その段階で「この人は、このお芝居のもの凄いファンで、リピーターで、役者さんたちのマネをしてこんなメイクで来たのかしら」と思っていた私は相当に阿呆である。

 市川しんぺーと福田転球の2人が舞台に登場し、注意事項を語り始める。
 客席に何故か用意されている傘の使い方とか、使い方の練習の音頭とか、開演中の出入りの注意とか、そういった内容だ。
 その彼らの語りに大きな声でイチャモンをつけた人が隣の席にいて、その声を聞いて初めて「あら、平田敦子だ」と気がついたのだから、やっぱり私は相当にマヌケである。
 同じように客席から声をかけている人があと2人いて、「なるほど、3人の魔女は客席からの登場なのね」とやっと判ったのだった。

 マクベスで緑色の傘が客席中で開くとなれば、それは「バーナムの森」のシーンに決まっている。「例のものを用意しろ」と言われたら、手元に引き寄せて準備してください」と言われ、「練習してみましょう」とやってみて、結構な人数の人が傘を開いてしまったのには笑えたし、慌てて「まだですまだです」と言っている舞台上のお二方も可笑しかった。
 そうして爆笑していたせいか、「話しかけたりしますので、そのときは暖かい気持ちで」という注意の直後に、すでに何だったか忘れたけれど、そのお隣の「魔女」から、「**じゃないか。なぁ」と話しかけられてびっくりしてしまい、とっさににっこり笑い返してしまった。

 その後も、3人の魔女は出番以外は客席のあちこちに設けられた「空席」で待機していたし、狂言回しのお二人も、他の役者さんも(多分、ダンカンの2人の息子たちはそうだったと思う)どこかに座っていて、いきなりスポットを浴びてその場に登場、というような感じだった。
 そもそも、役者さん達の舞台への登場が、客席の通路を使ってのものがほとんどだったのだ。
 何というか「祝祭」という感じが漂う。
 私の隣の空席は空席であることが多く(やはりベンチシートの使用頻度が高い)、3人の魔女のうち平田敦子さんと江口のりこさんと隣席になれた。あと三田和代さんがいらしたら完璧だったのに、惜しい。

 3人の魔女だけではなく、登場人物はみな、「アダムスファミリー」みたいなメイクをしている。
 はっきりそういうメイクになっていなかったのは、風間杜夫演じるバンクォーや、白井晃演じるマグダフ、池谷のぶえ演じるマグダフ夫人ぐらいだったんじゃないだろうか。他にもいたかな。
 とにかく、ゾンビとか、オバケとか、「兵どもが夢の後」という雰囲気が漂ってくる。
 そして、時代がかった衣装の役者さんと、スーツにトレンチコート、みたいな格好の役者さんとが入り交じり、舞台の両脇には水道の蛇口が立っていて水が流されたりもするし、とにかく「実験的」という感じなのだけれど、それが一人よがりな感じがないのが素晴らしい。

 演出で色々な工夫がされていたけれど、しかし、堤真一演じるマクベスと常盤貴子演じるマクベス夫人の二人が「テキストどおり」という感じでマクベスというお芝居の本流をどっしりと演じていて、だからこそ、他の要素が際立つし、しかしマクベスというお芝居が壊れないまま進行して行っているんじゃないかと思えた。
 それはそれとして、しかし、マクベスで私が一番不可解なのは実はマクベス夫人だったりする。
 あれだけマクベスを罵っては唆し、自分の手まで血に染めて、王妃となった後も気丈に振る舞い、しかし、彼女の心が壊れたのはどうしてなのか、どこからなのか、実はあまり語られていないような気がするのだ。
 そこをこの芝居では「マクベスに差し出した手を無視されたとき」に彼女の心が決定的に壊れた、という感じの演出になっていて、なるほど、という風に強く思ったのを覚えている。

 バーナムの森のシーンではもちろん観客席にも声がかかって、客席に緑のビニル傘の花が咲いた。「例のものを用意しろ」とか「開け」といった客席への合図が聞き取りにくくて、(私は残念ながら傘係にはなれなかったのだけれど)傘がパッと咲くといった感じにならなかったのが惜しいと思う。
 「開け!」とか叫んでいる分、聞き取り憎いのだ。3人の魔女ら客席に配置された役者さん達が傘を開いたのに合わせてみんなが開くという感じだったと思う。

 舞台の真ん中にマグダフに刺されて敗死したマクベスが倒れているけれど、そこにいるマルカム軍の人々にその姿は見えていないようだ。
 そこへ、マグダフがマクベスを倒したとの報告に現れ、その首級が客席後ろに登場する。2mもありそうなはりぼてというか風船のマクベスの頭部である。
 そのマクベスの頭を、客席と役者さんとが協力して送り、客席内を一周させる。そうして、騒いでいた客席がふと舞台を見ると、死んだ筈のマクベスがまさに「きょとん」とした様子で立ち尽くしている。死んでしまった自分、敗けてしまった自分、ここまで人に恨まれ憎まれた自分が信じられないといった風情だ。

 2013年の最後に、楽しい、しかし骨太の舞台を見た。

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コメント

 あんみん様、コメントありがとうございます。

 池谷さんのヘカテとマクダフ夫人、全く別人でしたねー。
 知らなかったら同一人物とは気がつかなかった自信があります(笑)。
 てっきり、池谷さんと平田さんと江口さんの3人が「魔女」だと思っていたので、その意味でも私はだいぶ驚きました。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
 

投稿: 姫林檎 | 2014.01.01 21:24

マクベスについて、ひとこと。
マクダフ夫人の池谷さん、素晴らしかった!
哀しみ、慟哭、家族への慈しみ。
女子プロ並の破壊力のヘカテからの変身振りも驚き!もう振り切ってた。
ちょっと省略された感じも、平坦にも思えた中、グッと掴まれてしまいました。

投稿: あんみん | 2013.12.31 19:48

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