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2014.01.12

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「コンダーさんの恋 ~鹿鳴館騒動記~」
作・演出 G2
出演 大地真央/牧瀬里穂/葛山信吾/三上市朗
    久ヶ沢徹/植本潤/荒井敦史/寿ひずる
    未沙のえる/秋本奈緒美/ベンガル/江守徹
観劇日 2014年1月11日(土曜日)午後5時開演
劇場 明治座 1階3列35番
料金 12600円
上演時間 3時間(35分の休憩あり)

 明治座なので、パンフレット(1500円)はもちろんのこと、大地真央のショップも出ていたし、その他ロビーではもちろんたくさんのものが売られていた。
 2014年最初の観劇に相応しい華やかさだと思う。

 ネタバレありの感想は以下に。
 
 明治座の公式Webサイト内、「コンダーさんの恋 ~鹿鳴館騒動記~」のページはこちら。

 明治座に行ったのは、多分、2回目だ。
 けれど、1回目に何を見たのか覚えていない・・・、と思って自分のブログを検索したら、2007年に「仇討物語 でんでん虫」コント55号 40周年プラス1を見ていた。
 そのときはどうだったか覚えていないけれど、今回は花道も使っていた。

 幕開けは、江守徹演じる居眠りしている勝海舟である。
 ふと目を覚ました勝海舟は、聴衆(設定としては記者なのかも知れない)に向かって、幕末から明治という時代、その中での鹿鳴館について語り始める。
 この場面は映像付きだ。
 脳梗塞を患って復帰した江守徹の滑舌は、やはり回りきらないようなところがあって、これらの説明は江守徹の声を録音したものと、本人が舞台上でしゃべるものと、織り交ぜられている。

 そうして、勝海舟が鹿鳴館の思い出を語り始めるというところで物語の幕開けである。
 幕開けは、芸者衆(ではないのかも知れない)が踊っているところに、真打ち登場とばかりに大地真央演じる前波くめが現れる。赤い着物にお姫様のようなかんざしを挿して、その踊りは華やかだ。
 そこへ何故か弁慶だったり鏡獅子の獅子だったり4人の悪党が現れて(いや、弁慶は悪党ではないのか?)暴れだし、寿ひずる演じるお師匠さんが何故か立ち役の声で見得を切って戦い始める。
 何だこりゃ! というところで舞台は一転、これはくめの夢だったことが判る。
 幕開けを華やかにしましょう、お正月なんだし、大地真央を華やかに可愛らしく見せなくっちゃ、というサービス精神もここまで来ればいっそ見事である。
 大地真央の一人勝ちの舞台、いいじゃないか、何が悪い、と初っぱなから見得を切ってきた感じである。

 時は明治、コンダーさんって誰? と思っていたら、鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルのことだった。そのジョサイア・コンドルと結婚した舞踊家の前波くめとの恋物語、が物語の主軸だと思う。
 コンダーさんが設計した鹿鳴館に、しかし日本には西洋のダンスの踊り手がおらず、このままでは鹿鳴館は宝の持ち腐れ、コンダーさんも母国英国に帰ってしまうかも知れない、くめのお師匠さんのところに踊りを習いに来て知り合った(そして恋仲になった)くめとしては、コンダーさんに帰国して欲しくない、そのために一肌脱ぎましょう、ということになる。
 未沙のえる演じる伊藤博文夫人の梅子がこの大作戦の黒幕で、彼女は新橋の芸者衆を連れてくる。その梅子に頼まれた葛山信吾演じる勝海舟の三男梅太郎もくめや、牧瀬里穂演じるアメリカ人のクララに協力を求め、ダンスの先生として秋本奈緒美演じる山川捨松もやってくる。

 クララは梅太郎と付き合っていて結婚したいと思っているけれど、万事において優柔不断な梅太郎ははっきりしないし、ベンガル演じる大山巌は捨松に求婚しているけれど断られている。この2人、大山巌は薩摩弁がきついし、捨松はアメリカから帰国したばかりで日本語をほとんど忘れてしまっており、意思疎通がはかばかしく行かないことこの上ない。
 この2人のやりとりを、三上市郎演じるコックの藤田源吉(大山巌と面識があったらしい)と日本語に堪能なアメリカ人であるクララが通訳して進めようとしているところに、くめ達もやってきて、その英語と日本語のやりとりが続く中、実はくめはコンダーさんにプロポーズされていたことが判明するなど、もうてんやわんやである。

 そこに、コンダーさんの教え子である、荒井敦史演じる滝廉太郎の従兄弟である滝大吉と植本潤演じる後の坪内逍遙が、コンダーさんが設計した鹿鳴館に設計者の承認なく設計変更が行われているのではないかと偵察にやってきて、久ヶ沢徹演じる鹿鳴館の警備を命じられた得能関四郎と逃げた捕まえたの大騒ぎになる。
 この坪内逍遙とクララ、捨松の3人だけが英語を話し、大山巌とコックだけが薩摩弁を解するということが、この混乱をさらに大きくして行く。
 混乱もきわまったところで、こちらもまた真打ち登場よろしく勝海舟が梅子とともに登場し、捨松に大山巌が会津若松城攻めの直接指揮を取っていなかったことを伝え(ここで、山本八重の名前を出すところのサービスである)、鹿鳴館の設計は変更するもののコンダーさんには霞ヶ関の都市計画を任せることになったと話し、全てを丸く収める。
 一つだけ、梅太郎はクララと結婚したいと父親に言い出すことができず、その問題だけが中に浮いたままだ。

 この場面で、大岡裁きを見せた勝海舟と、あと見せ場だったのは「荒城の月」だ。
 滝大吉が歌い始め、そこにくめさんが被せるように歌って行く。マイクなし、途中までは確か伴奏もなかったと思う。明治座はそれほど奥行きがある客席ではないけれど、それにしても、客席いっぱいに歌声が届き溢れるというのは凄いよと思う。
 「荒城の月」が会津戦争のときの会津若松城を歌った歌だということも、今回初めて知った。

 と、ここで35分の休憩が入った、と思う。

 後半は、鹿鳴館での「お稽古」開始から3年後のことである。僅か4年しか活動しなかった鹿鳴館のいわば最盛期から没落寸前といった辺りだ。
 鹿鳴館が「猿まね」という批判揶揄を受け始めており、あちこちに飾られていた外務大臣井上馨が選んだ西洋画が全て水墨画にすり替えられるという事件が起こる。それは坪内逍遙の仕業で、しかし、その彼の口から、鹿鳴館に向けられている世間の「風」が語られると、確かに芸者衆を踊り手として採用するなど彼らの言うことも「嘘ではない」訳で、彼ら、いわば中心人物達は悄然とせざるを得ない。
 しかし、ここで坪内逍遙がすり替えた水墨画が実はコンダーさんが描いたものだということが判明し、くめはその絵の中に自分を描いた美人画があることを発見して、結婚の意思を固める。

 そこへ、極端な欧化政策を進めるものの全く条約改正を進めることのできない外務大臣井上馨を殺してしまおうという武器を持った人々が鹿鳴館に侵入し、彼らのところに辿り着く。ちょうど外国との密談のために鹿鳴館に来ていた井上外務大臣を救おうと、珍しく梅太郎が「私が井上馨である」と大見得を切って時間稼ぎをしようとするが、殴られてあっという間にカッコ悪くなってしまう。しかし、それを見たクララが「我が夫はこんなものです。むしろ、これまでよくやりました」と言うのが可笑しい。
 そこへ、得能関四郎が登場し、天覧試合での勝者であるというその剣の腕を遺憾なく発揮して彼らを蹴散らす。ここで初めて格好いいところを見せたというものだ。
 それぞれに見せ場を作る。そうあるべきだよなという感じだ。

 クララが梅太郎の子を宿したことで父親に2人のことがバレ、なし崩しに結婚が認められる。くめは師匠に内緒で踊りの稽古に加わり、しかも、昔取った杵柄(づか)だと胸を張って男装姿だ。クララたちの国際結婚は認めたお師匠さんも、自分の跡取りにと思っていたくめの国際結婚は認めない。
 ここだけは大団円にならず、逆に溝は深まってしまう。

 そして、鹿鳴館が鹿鳴館としての役目も終えた後の7年後、鹿鳴館での宴を合わせてコンダーさんとくめとの結構披露宴にしましょうということで、過日、鹿鳴館でのダンスパーティを開くべく奮闘した面々が久しぶりに顔を合わせたようだ。
 この舞台ではほとんど和装で通していた(タキシード姿は見せたけれども)くめが、ピンクのウエディングドレス姿で現れる。和装のときは、どちらかというと「おきゃん」という風情を漂わせていた大地真央が、一点、「女王様」に見えてくるから不思議である。
 未沙のえると大地真央は宝塚の同期なのだそうで、何というか、全く別の方向を志向している感じだ。

 その未沙のえる演じる伊藤梅子が、くめさんのお師匠を説得して披露宴に連れて来てくれ、この宴をいつもは帝国ホテルで開催しているのに鹿鳴館開催にしたことや、梅子を師匠の元に遣わしたことなど、どうやら今回も黒幕は勝海舟であったらしい。
 滝廉太郎が登場し、もう1曲、大地真央が「花」を歌って、最後に雰囲気をもう一度盛り上げる。
 鹿鳴館のコックであった藤田源吉が、実は、ニセモノであったことまで判明したところで、大団円である。

 G2らしい脚本と演出で、三上市朗と久ヶ沢徹と植本潤と「いるだけで飛び道具」な感じの役者さんを揃え、大地真央はもちろん当代きってのコメディエンヌだし、最後に出演者全員、一人一人に「その後」を語らせるなど、王道を貫く感じのお芝居だ。
 唯一気になったのが、出演社全員が横一列に並んで「誰か」(もちろん、この「誰か」は大地真央であることが断然多いのだけれど)が台詞をしゃべっているのを聞いている、というシーンが多かったことだ。一人勝ちをみんなで盛り上げようというお芝居だし、その一方で出演者一人一人に「見せ場」があるお芝居だったし、それはそれでやはり王道なのかも知れない。

 新春らしい、華やかな舞台を堪能した。

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