「国民の映画」を見る
パルコ劇場40周年記念公演「国民の映画」
作・演出 三谷幸喜
出演 小日向文世/段田安則/渡辺徹/吉田羊
シルビア・グラブ/新妻聖子/今井朋彦/小林隆
平岳大/秋元才加/小林勝也/風間杜夫
観劇日 2014年2月11日(火曜日)午後1時開演
劇場 パルコ劇場 J列15番
上演時間 3時間10分(15分の休憩あり)
料金 9450円
ロビーではパンフレット(1500円)や、三谷幸喜演出作品のDVDなどが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
初演を見たことは明確に覚えていて、大枠のストーリーも覚えていたし、決定的な一言を誰が言ったのかも覚えていた。私にしては珍しいことだ。
しかし、その決定的な一言がどういうシチュエーションで発せられたのかは全く覚えておらず、逆に初演を見たときよりも緊張感を持って見ていたように思う。
初演の感想を帰宅してから見てみたら、ほとんど今回も同じ感想を持ったことに気がついた。
私も進歩がない。
初演は、東日本大震災直後に見たのだったなと思う。
そういえば、最近は、劇場で募金箱等を見ることも少なくなった。
それはともかく、本当に感想としてはほとんど同一なので、「違ったこと」を書くことにしたい。
配役は、ヘルマン・ゲーリングが白井晃から渡辺徹に、ゲッペルス夫人が石田ゆり子から吉田羊に、新進女優のエルザ・フェーゼンマイヤーが吉田羊から秋元才加に変わっている。
女優陣は、今回の方が私は好みだ。吉田羊のエルザ・フェーゼンマイヤーより秋元才加のエルザ・フェーゼンマイヤーの方がその莫迦っぽい感じが印象に残っているし、石田ゆり子のゲッペルス夫人より吉田羊のゲッペルス夫人の方が、ゲッペルス夫人としてそこに居たという感じがする。
ここで、新妻聖子演じるレニをつい避けたくなるのは、多分、彼女が自分に一番近いからだ。
しかし、やはりこの舞台を動かしているのは男たちだ。
小日向文世演じるゲッペルスの小心で嫌味な感じ、段田安則演じるヒムラー親衛隊長の存在感の薄さ、渡辺徹演じるゲーリング元帥の演じられた豪放磊落さ、小林勝也演じるグスタフ・グリュンドゲンスの静かに抵抗している佇まい、平岳大演じるグスタフ・フレーリヒのただ二枚目だけなダメさ加減、風間杜夫演じる実は普通の男の風情、今井朋彦演じるエルリッヒ・ケストナーの演じられた大胆不敵さ、そして、もちろん、小林隆演じるゲッペルス家執事フリッツの常に動じない静かな反骨。
いずれも、はまり役である。
ストーリーを知っているにも関わらず、決定的な一言をシルビア・グラブ演じる大女優が言ってしまうことも覚えていたにも関わらず、ひたすら没頭し、余計なことを全く考えずにただお芝居を観ている、そういう3時間を味わえた。
本当に本当に幸せなことだと思う。
初演の印象と違っていたのは、小林隆演じるフリッツが、今回は最初から最後まで激高することがなかったということだろうか。
そして、ヒトラーが常に「あのお方」と称されていたのと同じように、「ユダヤ人」という言葉も、結局、大女優のツァラが口にするまで舞台上の人物が口に出すことはなかったと思う。その、あまりにも明らかな避け方というか言い換えが、この舞台にさらに緊張感を呼んでいたと思う。
そして、今回のツァラは、自分が口にしてしまったことに悔恨までは行かずとも後悔はしているように見える。
最後の最後に、ゲッペルス夫人が背筋の凍るような台詞を言うのは同じだ。
ユダヤ人の割に親切だったもの、と振り返りもせずに、ごく普通のことを言うように言い、去って行く。やっぱりここでぞっとした。
ぞっとしたし、最後にフリッツが語る彼らの「その後」を聞いても、全くもって気持ちのいい終わり方ではない。
ハッピーエンドでもない。
コメディでもない。
本当を言うと、初演を見ているし今回は見なくてもいいかなと思っていたのだ。
でも、やっぱり見て良かったと思う。本当に、見に行って良かったと思う。
そういうお芝居だった。
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