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「障子の国のティンカーベル 」
作 野田秀樹
演出 マルチェロ・マーニ
出演 毬谷友子/野口卓磨
観劇日 2014年2月11日(火曜日)午後1時開演
劇場 東京芸術劇場 シアターイースト J列15番
上演時間 1時間35分
料金 3500円
ロビーのチェックをほとんどしなかったので、パンフレットが販売されていたかどうかもよく覚えていない。
ネタバレありの感想は以下に。
破れた障子やピアノ、よく判らないモノが半円を描くように置かれた舞台がある。
毬谷友子は全身真っ黒の衣装で客席から登場し、「飴ちゃん」を客席に配りつつ、舞台に登場する。
老婆にも見えるし、少女か? と思う瞬間もある、不思議な風情だ。年齢不詳不老不死の生き物、というのが一番近いような気もする。
実際、登場したときの彼女はティンカーベルだった。
黒衣から人形遣いから二番目以降の登場人物(台詞はない)を全て務めた野口卓磨が、その障子を立てかけて背景を作り、舞台を整える。
一人芝居じゃなくて二人芝居だよ、と思うくらい、彼のこの舞台での活躍の幅は広い。
最初は、ティンカーベルがピーターパンの世界を語っていたようだ。
実は、「ピーターパン」の芝居は見たことがあるけれど、本は読んだことがなく、芝居のストーリーもちゃんと覚えている訳ではない私には、どこまでが「ピーターパン」の世界の引き写しで、どこからが「障子の国」のオリジナルなのか、区別が付かない。
妖精の粉を浴びて信じる心を持てば空を飛べるとか、赤ちゃんが最初に笑ったときに妖精の粉が飛び散るという冒頭の語りは、ピーターパンの世界の話だったらしい。
野田秀樹の戯曲なのだけれど、意外と、言葉遊びは少ない。
やはりかけあいがあってこその言葉遊びで、一人芝居というのはそれはなかなか技巧を要するということなんだろうかと思う。
毬谷友子の緩急の付け方や台詞の感じが、何故か野田秀樹を彷彿とさせるのが面白い。野田秀樹自身がティンカーベルを演じたらどんな風になるのだろう。もっとも、作は野田秀樹だけれど、野田秀樹がこの作品を演出したことはないという。
ティンカーベルがピーターパンや妖精の国を語っていたかと思うと、ティンカーベルが消え、そこにはピーターパンが現れる。
ピーターパンは、それまでのティンカーベルの語りを聞いていたようで、今度は逆にピーターパンがティンカーベルを語り始め、「障子の国」である日本を語り始める。
とりとめなく語る(ように聞こえる)ティンカーベルとピーターパンの話を聞くうちに、今は、ティンカーベルは一人であり、ピーターパンは障子の国に来たことで死んでしまったらしいことが判ってくる。
ストーリーとしては多分そこが主な流れなのだけれど、そのストーリーを語るために紡ぎ出される言葉やイメージの奔流に、私の硬いアタマは付いて行けないのが悲しい。
毬谷友子は、ピーターパンとティンカーベルの自在に行き来しながら、そして歌を歌い踊りながら、ピーターパンの日本人形であるえいこに向けた恋、ティンカーベルのピーターパンに向けた恋、もしかしたら恋だったかも知れないピーターパンとティンカーベルの逃避行を語り継ぐ。
お話を聞かせているのではなく演じているのだけれど、でも、その佇まいは「語る」という感じがする。
私の耳はかなり信用できないのだけれど、もしかして、踊っているときの毬谷友子は生で歌っていた訳ではないのではないかと思う。何だかそこにもの凄く違和感を感じてしまった。歌わないなら、口を動かさない方が良かったんじゃないかしらという気がする。
ピーターパンの恋を語り、ピーターパンの死を語り始めた辺りから、それまであちこちに散りばめられてきた物語やイメージが一気に集まって来て、大きな流れになってきたように感じる。
「ひとでなしの恋」という言葉が繰り返される。
ピーターパンもティンカーベルも「人ではない」からだ。
妖精の国の裁判で死刑を告げられた(でもそれは実はいわば「どっきり」だったらしいのだけれど)ピーターパンと、ピーターパンの弁護に立った筈が思わず死刑を求めてしまったティンカーベルは、ただひたすら逃げ、その逃避行の果てに、ピーターパンがティンカーベルに自分を呑み込むことを求め、ティンカーベルは頼まれた通りにする。
「MIWA」にも出てきたアンドロギュヌスのモチーフがここでも(というか、このお芝居全体を通して)使われていて、野田秀樹といえば「少年を演じる女優」というイメージもそういえば持っていた訳で、このお芝居には、そういう野田秀樹の拘りが詰め込まれていたのかもしれないとも思う。
正直に言って、見る方のコンディションをもの凄く要求しているお芝居だと思う。
答えられなかったのが申し訳なかったし残念だ。
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