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2014.03.13

「眠らない男・ナポレオン −愛と栄光の涯に−」を見る

宝塚星組公演
ル・スペクタクル・ミュージカル「眠らない男・ナポレオン −愛と栄光の涯に−」
作・演出 小池修一郎
観劇日 2013年3月11日(火曜日)午後6時30分開演
劇場 東京宝塚劇場 2階4列43番
料金 8000円
上演時間 3時間(30分の休憩あり)

 職場の友人に誘って(そしてチケットの手配までして)いただいて、生涯6回目の宝塚である。

 ネタバレありの感想は以下に。

 宝塚歌劇の公式Webサイトはこちら。

 6回目の宝塚は、初めての「一幕もの」といえばいいのか、3時間まるまるを「芝居」に使い、レビューは最後に少しだけ、という構成だった。
 宝塚100周年記念ということで、ナポレオン・ボナパルトを一生を描いている。
 最後のレビューで「羽」がほとんど出てこないのが寂しいのだけれど(私は、宝塚は大階段と羽こそが醍醐味と思っているのだ)、しかし、宝塚の歌と踊りと芝居を堪能できた。

 ナポレオン・ボナパルトの一生を描くために、当然、狂言回しが用意されている。
 ナポレオンと二人目の妻であるマリー・ルイーズとの子供であるナポレオン2世に対して、最後にナポレオンを裏切った腹心の部下であるマルモン元帥がナポレオン・ボナパルトを語る。
 そして、語る場には、白馬に乗って旗を翻したナポレオンの肖像画の写しが常に飾られている。

 最初のシーンは、ナポレオンが士官学校で雪合戦を指揮し、上級生に買ったという有名なエピソード(しかし、史実ではないという声が有力のようだ)から始まる。
 最初見たときは、失礼なことに「柚希礼音ってこんなに短足だったっけ? 真上から見ているからか?」と思ったのだけれど、何度も見ている友人に聞いたら、子供時代のシーンであるので、子供の体型に作ってあったのだそうだ。
 芸が細かい。

 その後も、1シーンに時間をかけることなく、時を超え、空を超え、ナポレオンの一生を追って行く。
 士官としてのナポレオンだけでなく、そこは宝塚であるので、ジョゼフィーヌとのエピソードが物語の軸になっていく。
 ジョゼフィーヌが子供の頃に「王妃になる」という占いを得たことや、婚姻届を出す際に双方ともがサバを読んで同い年であるとして届出をしたといったエピソードを細かく拾って行く。
 ただ、こうしたエピソードを細かく拾っている分、一つ一つのエピソードはどうしてもあっさりと語られる印象だし、エピソードとエピソードの間隔が大きく飛んだりしている。シーンの最初に「****年」と狂言回しの2人が語るのだけれど、覚えていられないので、さて、どれくらいの時間が過ぎたのか、ということがピンと来ないのだ。

 戦いのシーンなどは、剣を持ったダンスで表現されていたこともあって華やかさをキープし、どちらかというと、ナポレオンと家族の物語という印象だ。
 特に、イタリア遠征の際に、ナポレオンの妹たちと部下たちとの間に丁々発止のやりとりがある。カロリーヌとミュラ元帥のやりとりにピンと来なかった自分に後になって呆れたくらい、何だかクローズアップされていない感じの2人だし、ナポレオンの家族は「ジョゼフィーヌの敵対者」や「ナポレオンを悩ます者」として描かれる。

 この舞台の白眉は、やはり、二幕冒頭の戴冠式だ。
 ルーブルにある「ナポレオンの戴冠式」の絵をそのまま再現したという。ケープというには豪華すぎるケープを引く様子が優雅かつ贅沢である。
 このシーンですら、割とあっさりと流されてしまうのが実に勿体ないように思う。
 ストップモーションにして強烈なライトを当てるとか、絵とオーバーラップさせるとか、もっともっと派手な演出で飾ればいいのにと思った。そうした派手な演出に十分に応えられる場面だったと思う。

 「共和国の守護神」と呼ばれたナポレオンが、民衆に選ばれたとはいえ皇帝となって戴冠式を行ったことで、あとは、ひたすら苦悩だけを道連れに「皇帝位」にしがみつくことになる。
 それを、彼の上司であったバラスは、「軍人の皇帝は、一生戦い続けるしかない」と呪詛のように言ったけれど、「全くそのとおり」という人生が待っていたらしい。
 一方で、「家族」という面でも恵まれず、自分たちの子を跡取りにとのべつまくなし言い寄る家族たちに苛立ち、しかし、側近の意見を無視することはできずに、懐妊しないジョゼフィーヌを離婚し、マリー・ルイーズと結婚する。
 その待望の跡継ぎが生まれた頃には、ナポレオン帝国は完全に斜陽を迎えていたというのが皮肉だ。

 物語は、ナポレオンが敗北し、エルバ島に流されるところまでが演じられる。
 その後、フランスに戻って「100日天下」を取るけれど、結局、イギリスとの戦いに敗れて、今度はイギリスの手で遠く大西洋上のセント・ヘレナ島に流されてそこで一生を終える。
 エルバ島以降のナポレオンの人生は、2人の狂言回しによって語られる「だけ」というあっさり加減だ。
 それが、スピード感ではなく、あっさり感になってしまっているのが勿体ないように思うのだけれど、しかし、舞台全体としては丁度いいバランスなのかも知れない。

 ナポレオンの人生を俯瞰して「ナポレオンとは何ぞや」ということを描き出したのがこの公演なら、セント・ヘレナ島に流された後のナポレオンを描くことで「ナポレオンとは何ぞや」という問いに答えたのが「おのれナポレオン」だな、タイプの全く違うナポレオンを見たな、というのが、正直な感想である。
 そして、3時間をかけても駆け足のナポレオンの人生だったけれど、やっぱり華やかで最後のレビューはまるでお芝居のハイライト部分を歌で繋ぎましたといった感じで、十分に堪能した。

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