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「酒と涙とジキルとハイド」
作・演出 三谷幸喜
出演 片岡愛之助/優香/藤井隆/迫田孝也
観劇日 2014年4月12日(土曜日)午後1時開演
劇場 東京芸術劇場プレイハウス 2階A列30番
上演時間 1時間45分
料金 9500円
ロビーでは、パンフレット等が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
「酒と涙とジキルとハイド」は、2週間ぶり2回目の観劇である。
流石の私でも2週間前に見たお芝居のことはよく覚えているし、「謎が謎を呼ぶ」という種類の舞台ではないことも、結末も判っている。
安心して楽しめる、という感じで、リラックスして見ることができた。
2週間ぶりに見た訳だけれど、細かいところで結構色々と変わっていて、その変わり方は何というか笑いをとることに貪欲である。
その方向でいいのかしら、貪欲だけれど小ネタに貪欲という感じもするよなぁ、と思いながら見ていたような気がする。
その最たる変化が、片岡愛之助演じるジキル博士が、実験失敗を糊塗するための芝居を藤井隆演じる役者のビクターに頼む場面で、「動物実験は200回も成功したんだ!」「実験ノートだって4冊も・・・」というような台詞が増えていた。前回見たときにはなかった台詞だと思う。
この台詞がなかったときでも、ネットでの感想で「理研の事件を揶揄している」というような見かけていたけれど、それをいわば強化したようなものだろう。
確かにこの場面で笑いが起きていたし、私も笑ったけれど、でもこれって必要だったのかしら? とも思ってしまう。
ストーリーを追おうとせずに見ていなかったから、余計に印象が強くなったのかも知れない。
ビクターが演じる前に必ず舞台に手で祈りを捧げていたシーンも、何故だか動きが大きくなって笑いを誘うようになり、かつ、ジキル博士にマネをさせて最後にさらに笑いを取る。
こういう小ネタの仕込み方は、2週間前に見たときよりもだいぶ密になっているような気がする。
それはそれとして、「裏のないドタバタ劇なんだ」というスタンスで見ると、やっぱり楽しいお芝居である。
一見して真面目一方のジキル博士からして、公には実験の失敗を隠して研究助成金を得続けようとしている「ダメ人間」だし、私には婚約者であるイブの心と行動を全く読めない「ダメ男」である。そういうダメダメな博士のフォローをしている助手の彼は果たしていい奴なのか常識的なのか。もしかするとコイツが一番狂っているんじゃないかと邪推したために、前回の観劇では要らぬ集中力を使ってしまった私である。要するに、世知に長けつつ「意味ありげに」そこに存在しているのだ。
最初のうちは常識的に「成功するはずがない」と言っていたビクターだって、いつの間にかその気になっているし、ハイド氏になった自分にイブが目をきらきらさせているのを見て「彼女を救いたい」とかとんでもなく見当違いなことを言い始める。
結局のところ、淑女のイブが好きな博士も、淑女の殻を破ろうというビクターも、どっちも「勘違い男」だということだ。
一人で冷静な(多分、イブにあまり関心のない)助手の彼が場を支配するのはこうなると当然で、ジキル博士は淑女のイブが好き、淑女のイブはジキル博士が薬を飲んで悪の部分だけが凝縮された(と思い込んでいる)ハイド氏が好き、ハイド氏に化けているビクターはイブが「薬が効いた」と思い込んだ結果現れたあばずれのハイジが好き、ハイジはひたすら「いい人」で「可愛い」ジキル博士が好き、というぐるぐる回る四角関係というか三角関係が可笑しい。
その可笑しい四角関係を外側から眺めつつ、「人格を分ける薬」とか「解毒剤」とかを次々と繰り出して場をかき回す助手というのは美味しいよなぁと思う。私もあのポジションに立ちたい。
結局のところ、余りのイブの「思い込み」ぶりに流石のジキル博士も彼女に「薬は完成していない、イブが変身したのは思い込みの結果である」と事実を告げる。
そのことにショックを受けたイブを慰めるために、「実はこの薬は誰が飲んでもハイジになってしまう薬だった」と嘘をついて、ジキル博士とビクターにオネエ言葉をしゃべらせるのは、おふざけではあろうけど客席は大喜びである。
イブはジキル博士に「明日は事実を告げるように」「私も今夜中に父(ジキル博士の恩師である)に本当のことを告げる」と言い、ジキル博士には伝わらなかったけれど婚約破棄の意思を明らかに意気揚々と帰って行く。
結局、このドタバタで一番「トク」をしたのはイブということになるらしい。
そして、相変わらず優香は可愛らしい。こんなに可愛らしい女優だとは思わなかった! というくらいである。
体調も今ひとつで「2回目は見なくてもいいかな」と思ったくらいだったのだけれど、やっぱり見て良かったと思う。
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コメント
あんみん様、コメントありがとうございます。
そうそう、ジキル博士の助手の名前はプールだった!
何故だかこれを書いている時に思い出せなくて、ずっと「助手」と書いていた、滅茶苦茶失礼な私です。反省。
私は2回とも2階席だったので、きっとあんみんさんが受けた印象とはかなり違うんだろうなぁと思いました。オペラグラスは持っていましたが、やっぱり近くで舞台を見るって違いますよね。
三谷さん、「抜目のない未亡人」「君となら」の他に、まだ芝居の予定があるんですか? びっくり。生誕50年祭は終わった筈なのに。もしかして、還暦になるまで「生誕50年祭」が続くのかも知れませんね(笑)。
それにしても、あんみんさん、相変わらず情報がお早いですね。脱帽です。
また遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2014.04.27 23:12
観ましたよ~。楽しかったです。
確かにパルコ劇場がちょうどいいかも。
私は2列目だったので、最初のプールが机で見えなかったり、
優香さんの胸が見えそうでハラハラしました。
本当に舞台向きの女優さんだと思いました。
コメディに限定されるかも知れませんが。
チャーミングだし、セリフの通りも思い切りも良かったですよね。
私も半沢は見ていないので、その関連はわかりません。
主役は愛之助さんでなくても良かったかな?
迫田さん、藤井さん、優香さんはハマってたと思いますが。
三谷さんが朝日新聞の連載コラムでこの芝居は『ただ笑ってもらって、何も残らない』つもりにした、
と言うような事を書いていました。
あ、なるほどね、そういうのもいいかと納得。
次回『抜目のない未亡人』もシス俳優勢揃いで期待出来そう。
あ、『君となら』もあった。
今年はもう1本有るとの噂も。三谷さん大忙しですね。
投稿: あんみん | 2014.04.27 18:17