「マサイに嫁いだ永松真紀さんが語るサファリの魅力」
(株式会社グローバルユースビューロー 特別旅行説明会)
講師 永松真紀
講演日 2014年5月23日(金)午後3時から
場所 株式会社グローバルユースビューロー
株式会社グローバルユースビューローで開催された、旅行説明会に行って来た。「マサイに嫁いだ永松真紀さんが語るサファリの魅力」と題して、彼女の講演会が同時に開催されるというのが参加申込みの大きな理由である。
旅行社の方もその辺りは心得ていて「普通の旅行説明会だと、参加者は5名くらいなんです」と正直すぎる発言をされていた。
2014年5月に私の夫はマサイ戦士 (新潮文庫)が出版されていて、そちらの宣伝も挟みつつ、写真を投影しながら約1時間、サファリとマサイについての、講演というよりは紹介があった。
思えば私がケニアを旅行したのは10年以上前で、「ナクル湖のフラミンゴは環境汚染等の影響でかなり減少している」「キリマンジャロの万年雪と氷河は段々減少し20年後にはなくなってしまうかも知れない」「サファリカーに囲まれてハンティングができないなどということがあり、チーターも減ってきている」などという話を聞くと悲しい。
一番驚いたのは、ヌーの川渡りを見るためにサファリカーが川岸にずらっと10台以上も(恐らく、写真に写っていなかっただけでもっと並んでいただろう)並ぶという話だ。
いつの間にそんなことになってしまっていたのか。
マサイの話ももちろん出た。
もっとも、ケニア国内には42の民族がいて、一番人口が多いのはキクユ族だそうだ。2番目に多いルオ族は、オバマ大統領の父君が出身だということで少し有名になったかも、とおっしゃる。しかし、ケニアと聞けばマサイ、という印象はやはり強い。
マサイ族は、牧畜を生業とする人々で、野生動物は食さないのだそうだ。
マサイにとって「牛」「牧畜」はアイデンティティに近く、タンザニア国内にマサイから分かれ農業を生業としている人々がいるのだけれど、彼らは「マサイ」とは名乗らないし、「マサイ」ではないと言う。
マサイは、人生を4つの段階に分けて考えており、逆に言うとそれ以上細かいことは考えないそうだ。だから、「その人が何歳か」ということは全く意識されないし問題にもならない。「何の時代か」ということが重要なのだそうだ。
子供時代は、3歳くらいから牧畜を学ぶ。
青年時代は、13歳くらいに行われる割礼の儀式がスタートで、同年代の「青年」が集まって修業を行う。青年時代は戦士の時代でもあって、戦士の卒業式である「エウノト」が10年に1回くらい行われ、そこで青年時代が終わる。
大人時代は、女性は火事(水汲みや牛の乳搾りや家造り)を行い、男性は放牧を行う。
長老の時代は概ね50歳以降で、彼らは人々から尊敬され、頼りにされているという。
マサイの主食はひたすら「牛」で、牛肉を食べ、牛乳を飲み、牛血を食すという。
牛乳を保存するひょうたんは、オロイリエン(だったと思ったけど違うかも)という薬効のある植物に火を付けてひょうたん内部で燃やすのだそうだ。そうすると、牛乳が傷みにくくなり、僅かに発酵した状態を保つという。
この牛乳を飲むことでマサイの人々の健康が保たれているという説もあるそうだ。
しかし、近年、干ばつが激しいため、森の伐採が進んだり草原が減ったりといった現象が起こっている。そのため、牛乳が搾れなくなるといった影響が出ており、大きく「動物と人間との共存が難しくなってきている」ことがあるという。
マサイの人々も、牧畜ができなくなるかも知れないという危機感を持ち、万が一そうなったときに他の人生を選ぶことができるようにと9年前に学校を作り、教育を行うことを決めたそうだ。現在、140人くらいが通っており、また、2014年2月に最初の卒業生を送り出したところだという。
学校に通わせるためにはお金もかかるし、子ども達が学校に行っている間は「子供時代」に学ぶべき牧畜が学べなかったり、「青年時代」の修業ができなくなったりする。
放牧は人手が必要なので、一夫多妻制が行われていたのだけれど、例えば多くの子ども達を学校に通わせるとなると多くのお金が必要になる。それは難しいとなると、家族も減少する傾向になる。
永松さんの旦那様の世代では、半分くらいの人が奥さんは1人、多くても2人という状況だという。
また、牛肉と牛乳と牛血だけを食べて暮らして行けないとなると、トウモロコシなどを購入して食べるようになっている。そうすると、今までかからなかった病気にかかることも出てくるし、これまでは薬草で治っていたものが薬草が効かない病気であることも出てくる。すると、病院に行かなくてはならない。
そういう風に、どんどん「お金」を必要とする暮らしになりつつあるということのようだ。
だから、例えば永松さんが主催するエコツアーで村を訪れる人が増え、村の現金収入が増えることには大きな意味を持つことになるのだろうと思う。
永松さんは旦那様と来日し、各地で講演を行ったりもしているそうだ。
何年か前に初来日するまで、旦那様は、日本は全部がナイロビみたいな都会だと思っていたらしい。
しかし、実際に来てみると「潤いのある自然」が豊富にあって驚いたのだそうだ。
温泉もとても気に入った(マサイの人々は文化を非常に重んじるので、温泉は日本の文化だと言われたらそれは入らない訳には行かない、と言ったという)そうで、その話の後だったので「日本から持ち帰りたいもの」を問われた答えは何だったと思いますかと言われ、温泉だと思ったのだけれど、それは違った。
「川」だそうだ。
サバンナは乾いた土地で、乾季には3時間もかけて水汲みをするという村のことを考えたのだと思う。
1時間は短いなぁ、もっと色々なお話を聞ければ良かったなぁ、でも考えてみればこの場は旅行説明会だったわ、と思ったのだった。
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