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2014.08.31

「君となら 〜 Nobody Else But You 〜」を見る

パルコ・プロデュース公演「君となら 〜 Nobody Else But You 〜」
作・演出 三谷幸喜
出演 竹内結子/草刈正雄/イモトアヤコ/長野里美
    長谷川朝晴/木津誠之/小林勝也
観劇日 2014年8月30日(土曜日)午後6時開演
劇場 パルコ劇場  H列7番
上演時間 1時間50分
料金 9500円

 ロビーでは、パンフレット(1800円、だったと思う)等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「君となら」のページはこちら。

 小磯家のセットが何となく懐かしい。
 実際に同じようなセットだったかどうか、実は記憶はないのだけれど、バスケットのリングがあるだけで懐かしいという感じがするのである。
 確か、初演と再演の両方を見ているので、今回が3回目である。

 竹内結子演じる小磯家の長女あゆみは、「青年」実業家とお付き合いしていると家族に言っていたらしい。
 ところが夏のある日、小磯家恒例行事である流しそうめんのためにイモトアヤコ演じる妹のふじみも帰って来て、家族が揃おうという日、実は70歳である小林勝也演じるケニーこと諸星堅也が小磯家にやってきたからさぁ大変! という物語だ。
 まずは、ふじみがあゆみに協力し、本当は大反対している筈の草刈正雄演じる父親も、長野里美演じる母親を慮っていつの間にか協力させられ、何とか今日一日、母にバレないように乗り切ろうという共同戦線が張られる。

 あゆみとふじみ、父親の3人は事情をそれぞれがほぼ全て知っているけれど、ケニーも母も何も知らない。
 ついでに、そこに、昔あゆみに惚れていた木津誠之演じるバーバー小磯従業員である和田と、ケニーの息子である長谷川朝晴演じる諸星玄也(実は、芝居を見ているときは「れんや」と聞こえていた私の耳は相当に危ない)が加わったから更に話はややこしくなる。
 というか、事態をややこしくしているのは「本当のことを言うわ!」と何回も決心しているのに、そのたびに誤解されると「そうなんです〜」と肯定してしまうあゆみである。

 ケニーはあゆみの家族は自分のことをあゆみの婚約者だと受容していると思っている、あゆみの母はケニーの息子をケニーだと思っている(年齢的なことを考えれば、まぁ妥当な誤解である)、ケニーの息子は「ケニー」というのは小磯家の飼い猫の名前だと思っている、従業員和田はあゆみの婚約者はケニーの息子だと思っている、ケニーの息子は自分の父親であるケニーの婚約者はあゆみの母であり、あゆみの父は隣家のおじさんで蕎麦屋だと思っている、ケニーの息子はあゆみが自分に気があると思っている・・・。
 これらの思い込み(一部は、ウソを突き通すためにあゆみかふじみか2人の父親の誰かに間違った情報を入れられているのだけれど)に対して、その思い込みを壊さないように事情を知っている3人が右往左往、ついでにウソの上塗りまでするから大混乱極まりない。

 この大混乱が懐かしい。
 懐かしいといえば、三谷幸喜といえばあて書きという感が強いけれど、このお芝居でも三演目に当たって戯曲は結構変えられているなと思うのだけれど、何故か時代設定はそのままである。
 ケニーの息子玄也が持っているポケベルがしょっちゅう震えて、そのたびに玄也が大袈裟に身もだえするとか、電話を借りるたびに「こういうことはきちんとしておかないと」と言って10円を置くエピソードは変えたくなかったのかなぁなどと思う。
 携帯電話を持たない私が言うのも何だけれど、今の時代に設定を変えたら、何の興趣もなくなってしまうエピソードである。

 それはそれとして、初演と再演ではケニーの息子が益岡徹から小倉久寛に変わっただけだったけれど、今回は全てのキャストが変わっている。そうなると、基本的な筋立てはもちろん同じなのだけれど、雰囲気は変わるし、小ネタも変わるよなぁと思う。
 そういう意味では、今回ふじみを演じたイモトアヤコの感じと、初演・再演でふじみを演じていた宮地雅子の感じが一番近いような気がする。
 今回ケニーを演じた小林勝也と、初演・再演でケニーを演じた佐藤慶の感じも(どちらかといえばということだけれど)近いような気がする。小林勝也のケニーの方が愛嬌がある、かも知れない。

 角野卓造と草刈正雄では印象というかインパクトがかなり違うよと思うのだけれど、でも、実際のところは草刈正雄がかなり情けないけど娘思いの地味な父親になっていて、意外なくらい違和感がない。
 だから小磯家の雰囲気の違いの多くは、母親とあゆみの母子によって醸し出されているような気がする。
 何というか、2人の天然度合いが下がっているような気がするのだ。
 いかにも天然という感じだった初演・再演に比べると、今回の長野里美と竹内結子のコンビは、基本的な属性が賢そうなのだ。賢そうだから、天然というよりは「作為ですか?」という疑いを抱かせるといえばいいんだろうか。
 この辺りは好みだよなぁ、と思う。

 伊藤俊人が演じた和田を継いだ木津誠之は、丁寧に丁寧に演じている感じがして好感度高かったし、長谷川朝晴のわざとらしい感じはかなり可笑しかった。いやいや、玄也を娘の結婚相手としてあっさり受容しちゃうお母さんには、ちょっとばっかし問題があるんじゃないでしょうか、という雰囲気がいい。

 「もう茶番は止めましょう」と言ってケニーが「自分にウソをついてはいけない」とあゆみを諭し、そのケニーに大きな感謝を示しながらも「娘の結婚相手としては勘弁してください」と頭を下げる父親、「娘の連れてくる男とバスケットボールをするのが夢だった」と語る父親を説得しようと、全員がゴールを決めようとするけれど誰も決められず、最後には脚立を持ち出してゴールを決める母親。
 その「何もかも判っているんです」という風情がいかにも長野里美なのだけれど、しかし、結局は玄也を「ケニー」と呼んで何も伝わっていませんでした、というオチも可笑しい。

 最後の最後、来週相手を連れて来ますと宣言したふじみに写真を見せられ、あゆみは「これはマズイでしょう」と自分のことを棚の奥深くに投げ上げて論評し、父親は、いつぞや自分が浮気したのがバレたときの母親と同じように座布団の中味をぶちまけて、ショックを受けているんだか怒っているんだか、とにかく大暴れしている様子をサイレントで見せて幕が降りる。

 そうそう、こういうお芝居が観たかったのよ! でも再演じゃなくて新しいお芝居でぜひ見たいの! と思う。
 ところで、ふじみの相手は結局どんな人なのか、初演・再演のときも今回も、全く思いつかない私なのだった。

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コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 「君となら」楽しかったですよね。
 実は母にも勧めて見てもらったのですが、「大笑いしてきたわ」ということでした。もっとも、よくよく聞いてみると、ふじみがイモトアヤコだったのは判ったけど、あーちゃんが竹内結子だとは気がつかなかったというのです。さらに、お父さんが草刈正雄だと思わなかったと言われ、うーんと唸ってしまいました(笑)。
 そういう我が母でも楽しめたお芝居だったということで(笑)。

 長谷川朝晴さん演じる息子は、一々置いていた電話代の10円を「親戚になるんだからいいか」と一気に回収していたセコさに笑いました。あれ、いいシーンだったなぁ・・・。

 また、楽しいお芝居のお話をいたしましょう!

投稿: 姫林檎 | 2014.09.10 23:08

姫林檎さま

私は昨夜観ました!
「君となら」は、初演をテレビで観て以来なので、何年ぶり?
一度生で観たかったので、やっと念願が叶いました。

私は、佐藤慶の堅い感じが好きだったので、ケニー役は初演に軍配、かな(えらそうなこと言ってますが、実はうろ覚え)。
はせくんは、ジョビジョバ時代からファンなのに、一瞬わかりませんでした、あのもみあげは強烈。

そうですね、竹内結子は、天然な感じはありませんでしたねー。
でも、天然なイメージじゃなくても大丈夫なように、三谷幸喜も創っていた気がします。

まさに抱腹絶倒で、楽しい二時間でした。
私は猫のケニーの下りが好きですね。

ふーちゃんのお相手は、女性なのかな?と私は思っています。

投稿: みずえ | 2014.09.09 09:18

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