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2014.08.25

「メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神」に行く

 先日、東京都美術館で2014年9月23日まで開催されているメトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神に行って来た。
 以前に熊野古道のツアーでご一緒したお姉さま方とたまにお会いしていて、今回もその一環でお誘いをいただいたのだ。

 13時過ぎに東京都美術館に到着したところ、チケット売り場も入場口も行列はなかったけれど、中に入るとそこそこに混雑していて、展示物、特に小さくて目を凝らしてみたいような展示物の前には二重三重に人が取り巻いていた。
 それでも、先日、10万人の入場者を記録した展覧会の週末としては、比較的見やすかったのではないかと思う。

 「女王と女神」というタイトルのとおり、中心になっているのは、ハトシェプスト女王とハトホル女神である。
 展示の最初は、ハトシェプスト女王だ。
 エジプトに女王は複数存在しているけれど、いわば「唯一の成功した女王」という評価がこの展示のポイントである。
 古代エジプトでも「男性上位」は変わらず、そのため、ハトシェプスト女王も、肖像や彫刻では男性っぽく髭を生やし腰布や頭巾を身に着けた姿で表されている。
 しかし、「女性らしく」その在位中に戦争や外征は行わず、交易を拡大し、国を反映させたということである。

 義理の息子であるトトメス3世が8歳で即位し、その摂政として実権を握り、ついには王となってしまったという来歴や、ハトシェプスト女王のレリーフ等がそのトトメス3世により破壊されたと言われていること等々を考えると、その「平和を愛した女王」みたいなまとめ方には何だか違和感があるのだけれど、ある意味、受け入れられやすいというところはあるのかも知れないと思う。

 チケットやちらしにも採用されている、ハトシェプスト女王の頭部の像がまず登場する。
 赤と白の冠をつけ、髭はなく、女性の顔で造形されている。
 美人だと思う。
 一緒に行ったお姉さまは一言「前田美波里だね」と言っていたけれど、つまりは、現代日本にも通じる美人顔ということである。

 ハトシェプスト女王関連の展示で興味深かったのは、1906年から1936年にかけてメトロポリタン美術館の調査団が行ったハトシェプスト女王葬祭殿の発掘作業の様子を撮影した映像である。
 スポンサーや考古学者、写真家などの活動はもちろん、正しく人海戦術で行われた発掘の様子がよく判る。
 棺なのか、像なのか、人の形をしたものが地下から人力で割とぞんざいに地上に押し出されてくる様子など、面白い。それほど長くはない映像なのだけれど、じーっと見入ってしまった。

 ところで、同じく「美人だなぁ」と思ったのは「清めの儀式を受けるキヤのレリーフ」である。
 キヤというのは、アクエンアテン王の2番目の王妃で、ツタンカーメンの母とも言われているらしい人物である。
 アクエンアテンといえば、アテン信仰を強力に推し進め、ついでに美意識についてもかなり強烈に変革を行った人物、というイメージがある。
 実際のところ、正妃ネフェルティティはエジプト三大美人の一人とも言われているらしいけれど、胸像などを見てもあまり綺麗だとも思わない。これは、本人が美人ではなかったというよりも、アクエンアテン王の認める「美」に近いように像が彫られたんじゃないかという気がする。
 しかし、このキヤのレリーフは、今の私が見ても普通に美人で、何というかナチュラルな印象がある。

 ついでに書くと、時代が少し下がって、ラムセス2世の妃であったネフェルタリと女神が並んでいる絵や、ネフェルタリがゲームに興じている絵には何だか見覚えがあって、説明を読んでみると、やはりルクソールにあるネフェルタリの墓の壁画のレプリカであることが判った。
 ネフェルタリの墓の壁画は本当に美しい状態で残っていて、入場制限が行われて僅か10分の見学だったのだけれど、こうして再会でき、再会したことにきちんと気づけたのが嬉しい。
 ネフェルタリもまた、もちろん、エジプト三大美人のうちの一人である。

 女王や王妃は美人なのだけれど、女神たちは今ひとつ美人には造形されていない。
 大体、ハトホル神は「牛」である。
 牛の顔だったり、女性の顔なのだけれど耳だけ牛だったり、動物によってその神の力を象徴させることが普通だったらしい。そして、一人の神様がたくさんの役割を担っていたりするので、一人の神様が様々な姿を取ったりする。
 複雑すぎる。

 ハトシェプスト女王とアクエンアテンの関係などを考えているときなどもそうだったのだけれど、背景が判っていた方が楽しめる。
 展覧会に行く前に芝崎みゆき氏の「古代エジプトうんちく図鑑」などを予習で読んでおけば良かったなぁと思ったことだった。神々の役割と取り得る姿、王家の系図が判っていた方が絶対に面白い。

 ハトシェプスト女王関連も、エジプトに行ったときに葬祭殿を訪れているので懐かしかったのだけれど、女神様関係で懐かしいなぁと思ったのはセクメト像である。こちらは、雌ライオンの姿をしている。
 エジプトに行った際、ルクソールのカルナック神殿で、ガイドさんに連れられて端っこの方の暗い部屋に行き、そこで、やけにきれいなライオンの姿を模した女神像を見たのだ。黒っぽい石を使っているところも同じで、対になっていたり、グループになっていたりするものの一部なのかも知れないと思う。
 気のせいか、カルナック神殿にあったものの方が端正な顔立ちだったように思えた。

 神は動物の姿で表されたり現れたりするのだけれど、何故だかこの展覧会ではカバがポイントだったらしい。
 展示の中ではそれほど目立っていた訳ではないのだけれど、グッズ売り場には結構カバ関連のものが並んでいて、「欲しいと思わないなぁ」「でもカバばっかりだから、メトロポリタン美術館的には押しなのかなぁ」などと思ってしまった。
 もっとも、カバの姿をしていることにはきちんと意味があって、カバは出産や母子の守護を象徴しているそうだ。

 そして、何だかんだ言っても、アクセサリの類はやはり気になる。
 かなり豪華な装身具が並んでいる。
 ガラスが貴重だったのか、貴石ではなくガラスをはめ込んだものも多い。その土台となる部分はもちろん金である。
 重そうなネックレス、意外とシンプルな王冠(ガゼルの飾りがついている)、金の糸を組み合わせつなぎ合わせたようなネックレス、お魚を金の鎖でつなぎとめたようなベルト等々、見ていて楽しい。
 自然のものをモチーフにした様々なビーズも綺麗である。

 せっかくなので、一番重そうなネックレスのレプリカを作って、「試してみてください」「写真撮影OKです」ってしてくれればいいのにと思う。
 その他、一つだけ鏡が出品されていて、覗き込んだらそんなに映りいい訳でもなかったけれど、でもよくここまで磨いたよなぁと思ったりした。この鏡はトトメス3世が妻に贈ったものだという。
 展示物の中には、結構「トトメス3世が3人の外国人の妻に贈った」というものがあって、妻を平等に扱うことが引いては妻たちの出身国を平等に大切にしているとアピールすることになったのかしらとか、単純に嫉妬深い女性達だったのかしらとか思うと楽しい。

 そういえば、展示全体を通して、これらの展示物はエジプト政府の了承のもととか、適法に譲り受けてとか、一々断っているところがあったのが何となく可笑しかった。
 正直にいえば、「そんなことはあるまい」「エジプトから持ち出した際に一つ一つ許可を取ったり、エジプト政府の認証を受けたりしてはいまい」と思ってしまうのだ。
 それでも、どうしても断りの文句を入れたいというところが、何だか可笑しい。

 展示の最後には「再生」つまりはミイラをテーマにしたお部屋があった。
 カノポス容器はエジプトに行ったときにもたくさん見たけれど、ミイラから爪が失われないように嵌められていたという金のサックには驚いてしまった。指と爪の形に模されている。そこまでしなくてもとか、そんなに爪は重要視されているのに脳みそは掻き出されちゃったのよねとか、色々と思ってしまう。
 本当の最後には、アメン・ラー神の歌い手ヘネトタウィという人の棺とミイラに乗せるカバーのようなものが展示されていて、その意外と適当そうに描かれているのだけれどトータルで見るとやっぱり手が込んでいるその装飾にしげしげと見入ってしまった。
 王族でもないのにこの豪華さということは、結構な重要人物だったのかも知れない。

 何だかんだで2時間近くを堪能した。

 そういえば、帰り際、「私、まだメトロポリタン美術館って行ったことないんですよねー」と言ったら、お姉さまに「だったら、行きましょうか」とあっさり返されて驚いた。
 「今、ずいぶんサラリと言いましたね」とツッコミを入れたところ、「言いましたよ〜」と軽く笑っていた。
 それもなかなか楽しそうだなと思う。

 ミュージアムショップもかなり充実していて、そちらでもかなり楽しんだ。
 ジュニアガイドがなかなかに秀逸で、3人とも購入した。
 大満足のエジプト展だった。

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