「避難体験オペラコンサート」を聴く
「避難体験オペラコンサート」
出演 鈴木愛美(Sp)/後藤春馬(Bs-Br)/西村圭市(Br)/山田大智(Br)
伊藤達人(Tn)/今野沙知恵(Sp)/林よう子(Sp)/日浦眞矩(Tn)/村松恒矢(Br)
ピアノ 石野真穂/髙田絢子
公演日 2014年8月31日(土曜日)午前11時30分開演
場所 新国立劇場オペラパレス 1階17列32番
料金 無料
避難体験オペラコンサートとは何ぞやということの答えは、新国立劇場のWebサイトにあった。
曰く。
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新国立劇場では、日頃より、災害の際お客様に素早く安全に避難していただけるよう、避難訓練をはじめとする様々な準備を実施しております。
近年、防災意識がますます高まるなか、新国立劇場をご愛顧いただいているお客様にもぜひご一緒に、「その時、劇場ではどう行動すれば安全に避難できるのか」といったことを実際に体験していただきたく、この度「避難体験オペラコンサート」を開催することが決定いたしました。
お客様には新国立劇場オペラ研修所修了生によるコンサートをお楽しみいただき、コンサート上演中に地震が発生した想定で実際に避難を体験していただきます。
つきましては、コンサートにご参加のお客様を6月23日(月)より募集いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
*****
「無料でコンサートが聴ける」という宣伝文句に踊り、8月31日に開催された避難体験オペラコンサート に行ってきた。
11時開場、11時半開演で、チケットの引換は10時半から行われるということだった。
11時過ぎに到着すると、正面玄関に「一般」や「町内会」といった受付が設けられていて、ネットで申し込んだ私は「一般」の受付でチケットをもらった。1階後方だけど通路側の席で、まずまずである。
避難訓練のために客席はばらけた感じにしたかったようで、席は受付でチケットをもらうときに判明する。2階席、3階席も埋まっていたからラッキーである。
避難訓練とコンサートに関するちらし(A3両面刷り)の他、今回の避難訓練で得たデータをどう使うかといった説明の紙も渡された。
開演時間となり、まずは支配人からのあいさつがあった。
色々と言っていたと思うのだけれど、映像や画像による記録をご了承くださいとか、チョッキのようなものを着ているスタッフは観察のために配置されているので質問等にはお答えできませんとか、訓練後に戻ってくるときに確認するのでチケットの半券を忘れずにお持ちくださいとか、そういう案内があったことを覚えている。
コンサートの1曲目はウエストサイドストーリーの「Tonight」だ。
もちろんオペラの楽曲ではないけれど、しかし、オペラ歌手によって歌われることも多いのだという。
鳥肌が立つような心持がしたのだけれど、同時に、声が届いてこないなぁという感想も持った。
考えてみたら、新国立劇場のオペラハウスに来たのは10年ぶりくらいだし、今日特に声が届かないという感想を持ったのか、劇場の特徴なのか、それはよく判らない。
2曲目の、「お手をどうぞ(モーツアルトの「ドン・ジョヴァンニ」より)が終わったところで、電車の音のような地震の効果音が入った。
舞台上の3人もちょっと右往左往してみせていて、そうだよね、オペラ歌手って俳優でもあるもんね、と思う。
舞台監督らしき人が出てきて「状況を確認しています」というようなことを言い、客席の案内係りの方々が「客席は安全です」「姿勢を低くしてください」「その場でお待ちください」というセリフを繰り返し巡回する。
逆にいうと、それだけしかアナウンスがなく、避難訓練だと思っている今だって結構イラっとするから、実際に地震があったら多分、客席係の言うことは聞かずに出て行くよなぁと思った。
大体「大丈夫です」と繰り返されると、本当に大丈夫かどうか確認した上で言っているのではなく、マニュアルでそう決まっているから言っているだけよね、と思ってしまうのだ。
だから、実際に確認できた状況を小出しにでも伝えてくれた方が「生の情報」という感じで信憑性がありそうなのに、と思ったりした。
しばらくそうやって客席で待機していたところ、舞台上から「電気系統のトラブルがあったので、念のため、避難してください」というアナウンスがあった。
客席係が誘導するようなことを言っていたけれど、私が座っていた席に接した通路には客席係の人が来ない。勝手に席を立ち、そのまま後ろに向かって歩いてロビーに出た。
ロビーには、肉声で避難経路をアナウンスする人がいたけれど、かなり聞こえにくい。案内係の声よりも、周りの人の流れに従う感じだ。
外へ出ると、テラスに出てそのまま待つように言われた。
テラスには屋根はなく、この日はたまたま曇っていたから良かったけれど、雨だったりかんかん照りだったりしたら大変だったろうなと思う。
テラスに出てしばらくしてから「ガラスに近寄らないでください」という拡声器による案内があり、遅いよ、と思う。
このテラスは、外につながっている感じがせず(もちろん、実際は外につながっている)、建物に囲まれた中庭風の場所なので、実際に地震があったときにここにとどまれと言われたらかなり嫌だろうなぁと思った。
そして、拡声器で震度や震源地を知らせてくれようとしたのだけれど、拡声器というのはかなり指向性の高いものらしくて、右を向いてしゃべり、左を向いてしゃべられると、中央付近にいた私には全く何も聞き取れない。
そして、中央向けのアナウンスはない。
避難訓練だからそのまま流したけれど、実際に地震が起きていたら、たぶん「聞こえないぞ!」という叫び声が充満した筈である。
みな、訓練に参加しようと思ってきている参加者で、当たり前だけれど非常に落ち着いて従順に行動していたにも関わらず、これだけイラッとさせられたのだから、たぶん、実際に地震があったら酷いことになるのだろうなと思う。
訓練終了後、全員が正面玄関に回って再入場したのだけれど、このときの手際もあまりよくない。
チケットを見せて再入場するときにウエットティッシュが配られたのは気が利いていると思う。
ロビーに戻ったのが多分12時10分くらいで、12時半にコンサート再開ということだった。
コンサート再開に先立って、再び支配人が登場し、舞台上から肉声での案内が届くか、拡声器での案内が届くかの実験があり、消防署の方の講評があった。
講評は、特に「コンサート会場での避難訓練」に向けたコメントはあまりなかったように思う。こういった場所で一番怖いのはパニックです、という話があったくらいだろうか。
コンサートが再開され、やっぱり「避難訓練前」は歌手の方がもノリが悪かったのか、「避難訓練後」の方が声も届いたし、楽しげに歌っていたように見えた。
何しろ、オペラというものに全く知識も教養もないので、これくらいしか感想が浮かばないのが申し訳ない。多分、特にオペラファンではない人も多く来ていたのだろうし(町内会の受付が一番多かったような気がする)、もっとベタな選曲の方が良かったんじゃないかしら、私も嬉しいし、などと思う。
なので、馴染みのあった、ピアノ二重奏によるカルメンは楽しかったのだけれど、せっかくなのだからこの曲は歌で聴きたかったなとも思う。
ちなみに、3曲目以降の曲目は以下のとおりだ。
「セビリアの理髪師」よりアリア「私は街の何でも屋」
「シモン・ボッカネグラ」よりアリア「哀れなる父の胸は」
「ラ・ボエーム」より第三幕の四重唱
「タンホイザー」よりアリア「夕星の歌」
「リゴレット」よりアリア「慕わしい御名」
「カルメン」より前奏曲など
「キャンディード」より合唱「僕らの畑を耕そう」
アンコールでは、出演者全員が揃って「椿姫」の「乾杯の歌」を歌い、そうよ、こういうベタで楽しげな曲が聴きたかったのよ、歌手の人たちだって楽しそうじゃない、と思って、コンサートが終了した。
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