「チューリッヒ美術館展」に行く
先日、国立新美術館で2014年12月15日まで開催されているチューリッヒ美術館展に行って来た。
母が知り合いの方からチケットをいただいたということで、ご相伴にあずかったのだ。有り難い。
途中まで気がついていなかったのだけれど、この絵画展は「**派の部屋」「**(画家)の部屋」と交互に配置されている。
そこでフューチャーされている画家は、さすがは「チューリッヒ美術館」ということで、スイスの画家が多かった印象だ。セガンティーニ、ホドラー、クレー、ジャコメッティらだ。
このうち前から知っていたのはクレーだけで、そうなると「74点すべてが代表作」という売り文句の美術展ではあるけれど、印象としては地味になる。
だからなのか、平日とはいえ、意外と空いていたことに驚いた。
とりあえず、行列はしていないし、一番前で絵を見ることも、2〜3m離れたところから絵全体を眺めることも(少し待ったりはするけれど)可能である。
椅子もちらほらと空いている。
かといって寂しいという感じではなくて、ほどよい人の入り方だったと思う。
ところで、美術展は大抵、部屋の入口や、コーナーの変わり目に全体の説明が書いてあることが多い。
このチューリッヒ美術館展は、この説明が何だか難しかった。私の国語力の問題なのかも知れないけれど、「うーん、何を言っているんだか判らないや」という感じで後の方ではついつい斜め読みになってしまった。
そして、その部屋に展示されている絵の関係性も説明してあるのだけれど、自慢じゃないけれど、それらの絵に辿り着く頃には説明板の内容なんて忘れているのだ。
何とかもう少し素人にも判りやすく楽しく絵を見る方法を提案して貰えないものだろうか。
それはそれとして、やっぱり、楽しめる美術展だったことは間違いない。
2つめの部屋にでーんと飾られた、モネの横6mという対策の「睡蓮の池 夕暮れ」という作品は、どこに睡蓮があるんだか判らないよと思うのだけれど、やっぱりインパクトがあるのだ。
水面だけを見つめ続けて、そこに映っているものだけをキャンバスに写し取りました、という感じだ。
そう言われれば、睡蓮かどうかは判らないのだけれど、水面がゆらゆら揺れ光っている感じに見えてくるから不思議である。
ゴッホの絵も2点あって、片方は暗褐色の画面にすっと立葵が描かれている、潔いといえば潔い、お花の絵なのに何故こんなにも瑞々しさがないんだろうと不思議になるような絵だ。
もう1点が、母が「可愛い」と絶賛していた「サント=マリーの白い小屋」という絵である。
ゴッホの黄色とゴッホの青が画面を二分し、でも一番目立っているのはもちろん「白い小屋」だ。
絵のサイズも小さくて、こじんまりとまとまり、でも明るい光を放っているという感じの絵だった。
絵の保護のためだと思うのだけれど、この美術展でも相当に照明を落としてあったようで、説明に「明るい色彩が」と書かれていても「全然明るくないと思う」と言いたくなることが多かった。
その中で間違いなく、明るい色彩を放っていた絵だ。
ピカソの「大きな裸婦」という絵も印象に残っている。
「裸のマハ」を題材に描いたということで、確かに構図は似ている、と思う。
カウチに寝そべって、頭の後ろで腕を組んで、顔が右足が左に描かれ、顔はこちらの正面を向いている。
ピカソはそれを、青と緑という冷たい色で描き、しかし、女性の身体はより大きくというのか豊満にというのか、でっぷりと描かれている。
あら、こうなっちゃうのね、という感じだ。
ゴヤの絵のモデルになった女性は、絶対この絵は許さないよね、と阿呆なことを思ったりした。
クレーの絵も4点集められていて、中でも、「スーパーチェス」という絵が目立っていた。
大体、大きかったのだ。
でも、私の好みのクレーの絵は、どちらかというと厚く絵の具を塗り重ねたキャンバスをひっかくように描かれた絵だ。ベースが赤だったので、余計に何だか懐かしいような気がした。
それも小品の方が何だか落ち着くような気がする。
モンドリアンの「赤、青、黄のあるコンポジション」という絵は、正しく代表作という絵だと思う。
モンドリアンと言えばこの絵、オランダに行ったときに、これに似た絵を見たような気がするぞ、その絵を見ているミッフィーが手前に描かれたブルーナの絵はがきも買ったぞ、と古いことを思い出したりした。
線でキャンバスを区切り、適当にできた四角に三原色を1つずつ塗っただけといえばそれだけなのだけれど、「実は線の太さもそれぞれ違うのです」などと説明されると、確かにそうねー、と頷かざるを得ないのだ。
でも、適当に、計算ではなくココロの赴くままに線の位置も幅も決めましたって言ってくれれば楽しいのになぁと思う。
シャガールファンの私としては、シャガールのお部屋があって、6点が展示されていたのも嬉しい。
ついでに、シャガールが出てくると、この美術展もそろそろ終盤ねという雰囲気になる。
牛が出てきたり愛がテーマだったりの、「いつものシャガール」に再会できたのも嬉しいけれど、今回は「窓から見えるブレア島」という絵が気に入った。
窓枠があって、そこから緑色の島の海岸線が見えているという、「いかにもありがちな観光地」という感じの場所を描いているのだけれど、これが、ゴッホの「サント=マリーの白い小屋」に負けないくらいに明るい。
穏やかだなぁ、という絵が何だか少ない感じのするこの美術展で、ほっとできる一枚だったと思う。
これだけの美術展なのに、意外とミュージアムショップが地味だった。
もっと派手に展開しているのかと思っていたので、意外と狭い、そして、意外と混雑していない、と思った。
空間を贅沢に使った、落ち着けるいい美術展だった。
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