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2014.11.03

「おんな武将NAOTORA」を見る

扉座イカサマ歴史劇シリーズ第1弾「おんな武将NAOTORA」
作・演出 横内謙介
出演 有森也実(客演)/岡森諦/杉山良一/伴美奈子
    犬飼淳治/高橋麻理/累央/鈴木利典
    岩本達郎/上原健太/鈴木里沙/高木トモユキ
    川西佑佳/新原武/江原由夏 / 他
観劇日 2014年11月2日(日曜日)午後2時開演
劇場 座・高円寺1 C列3番
上演時間 2時間20分
料金 4500円

 パンフレット等を売っていたかも知れないのだけれど、チェックしそびれてしまった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 扉座の公式Webサイト内、「おんな武将NAOTORA」のページはこちら。

 配られたフライヤーを読んだときは、井伊直虎という人は実在はするものの「男性」で、設定を女性に置き換えたのかと思っていた。
 しかし、よくよく読んでみれば、「女が活躍できる歴史物」を探していたと作・演出の横内氏は書いている訳で、家に帰ってネットで探してみたら、本当に井伊直虎という女性が井伊家当主を務め、井伊直政を養子に迎えていたらしい。
 驚いた。

 井伊直政といえば、徳川四天王とも言われた徳川家康の重臣の一人でいわば「歴史上の有名人」である。
 その養母が実は井伊家の当主も務めていたなんていう美味しい話が今までよくも眠っていて、よくも掘り出してきたものだと、まずそこのところで家に帰って来てからしみじみと驚いてしまった。

 ちなみにこの辺りの人間関係は、配られたフライヤーに役者さんの顔写真入りで「人物相関図」が載せられていて予め予習できる。
 開演前にじっくりとこの人物相関図を眺め、頭に入れようと努力したのだけれど、全く理解出来ずに「何も判らなかったらどうしよう」と思いながら見始めたのだけれど、始まってしまえば全く混乱することなくすらりとその世界に入ることができた。
 多分、それは凄いことだ。

 しかし、何しろ「イカサマ歴史劇」と銘打っているのだから、多分、その他の部分では大分「嘘」をついている筈だ。
 でも、何しろ「イカサマ歴史劇」と銘打たれているのだから、例えばNHKの大河ドラマを見てい「そんなことが史実であった筈があるまい!」とか、「歴史を脚色するにもほどがある!」みたいに怒りたくことはしょっちゅうあるけれど、このお芝居の場合は、「なるほどね〜」とそういう史実としてどうかというところは全く放っておいて楽しめてしまう。
 タイトルの勝利だ。
 それに、私は「井伊直虎が女だったっていうところからして翻案なんでしょ、性別を置き換えたんでしょ、有森也美をフューチャーするための翻案なんでしょ」と思っていた訳で、それが前提なのだから史実がどうこうというような固いことは全く頭に浮かばなかった。

 井伊家は、家臣の但馬守の裏切りに遭い、養子の亀之丞は信濃に隠し、その許嫁である当主の一人娘は尼寺へ行かせるハメになる。
 一人娘を預けたのが南渓という僧侶で、この僧侶が実は当主の兄であり、何故か裏家業で儲けまくっているという破戒坊主だというのだから念が入っている。そして、死に場所を得たつもりになっていた娘(これが後の直虎である)に裏家業のすべてを教えようとけしかけるのだから、始末に悪い。始末に悪いけれど、なかなかの人物である。

 信濃に落ち延びさせた養子を手元に戻せたのが12年後で、さらに3年後、ときは桶狭間の戦い前夜である。
 直虎は、行き場所をなくした女性を尼として引き取り、宴会に派遣して金儲けをしているらしい。これまた、いいんだか悪いんだか判らないけれど、たくましいことだけは確かだ。
 亀之丞が信濃に落ち延びるときに影武者となった牛丸が、その後、南渓に引き取られ、ついでに直虎と恋仲となっており、ますますたくましいことこの上ない。直虎の乳母でともに出家した筈のお沢も、すっかり女衒(といっては若干違うのだろうけれど)稼業が板に付いている。

 今川方に付いていた井伊家は先鋒を仰せつかり、しかし、周知のごとく桶狭間での今川勢は無残な負け戦を遂げ、井伊家も主君を始め重臣達が根こそぎ亡くなってしまう。
 しかし、跡継ぎの亀之丞あらため直親は健在、徳川家康とも昵懇で、馬鹿息子と名高い今川氏真を見限って徳川方に付こうとしたところを、再び但馬守の裏切りにあって、直親たちは殺されてしまう。懐妊している妻の桂も命を狙われ、紆余曲折の末、直虎の母の指名で直虎が当主の座につき、直虎の指名で南渓も武士として井伊の家に戻ることになる。

 しかし、女が当主の座についたことで、「当主代理」に無期限で指名された但馬守も、指名した今川氏真も、そして周辺諸国も黙っている筈がない。
 果たして、ほとんど四面楚歌の状態になった井伊の谷では、井伊一党が劣勢に追い込まれたが、そこに出奔していた直親と親しかった家臣が徳川家康とともに登場し、直虎の当主としての仕事が始まる、というところで幕である。

 史実を若干いじってはいるようだけれど、これだけ波瀾万丈の物語をよくも見つけ出したよなぁ、そして、こういう「家の動き」とか「戦の動き」の話の中に、やけに商売に長けて捌けた南渓という僧侶や、やけに武芸に秀でるようになった元影武者、たくましく生きる女たちに、たくましくならざるを得なかった直親の正妻、彼女と直親の側室との和解と共闘もあれば、但馬守にはその操り手としてどこの手の者なのか判らないけれどやたらと有能な猿回しを付けてくる。
 イカサマの名に相応しい、派手派手しさだし、エンタテイメントだ。

 これだけ盛りだくさんのエピソードと人間関係を2時間20分に詰め込み、殺陣も入っているし、舞台の両脇で(恐らくは)役者さんたちが交替で鳴り物まで担当する。
 がっと入り込んで見ていたのであまり意識しなかったのだけれど、横内氏がリーフレットで断言しているように、セリフの量も相当だった筈である。

 舞台は、黒地に金で松の絵が描かれた「壁」があり、その壁を左右に開け閉めすることで役者さんたちを出入りさせ、同時に場面転換までしてしまう。
 壁もそうだし、床面も黒く、大道具のようなものはほぼ何もないので、場所を変えるのも自在だ。お城の中にも、寺の中にも、陣中にも変わる。

 実は扉座のお芝居を観たのは久しぶりで、劇団員も南渓を演じた岡森諦とお沢を演じた伴美奈子のお二方しか判らないという感じだった。私にとって馴染みのある役者さんだというだけではなく、この二人の吸引力というか、雰囲気を作る強引さは凄いと思う。力尽くで場を作ってみせましょう、という感じだ
 やっぱり劇団のお芝居というのは凄い。
 プロデュース公演とは、どこかが違うと思う。
 シリーズ第1弾と銘打っているのだから、第2弾、第3弾と続くのだと思う。フライヤーの挨拶には「まだ少し劇団は続きます」と意味ありげなことが書かれていたけれど、ぜひずっと続いて欲しいと思ったのだった。

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