「安野光雅が描く野の花」展に行く
先日、友人に誘って貰い、芳澤ガーデンギャラリーで開催されている、「安野光雅が描く野の花」展に行ってきた。
京成市川真間駅から徒歩10〜15分のところにあるこのギャラリーは、個人の方の邸宅が市川市に寄付され、その庭を活かしてガーデンギャラリーとして整備したもののようである。
私は今回初めて行った。
庭園部分は自由に出入りすることができる。
ちょうど行ったときは無料コンサート(ただし、入館料は別途必要)が開催されていて、ピアノとクラリネットの音が響いていた。
席も一杯だったし、ギャラリーで絵を見ながら音楽を聴くというのもなかなか趣があるということで、絵を見始めた。
これが正解で、音楽を聴きながら空いているギャラリーで絵を独り占め状態で見ることができた。優雅である。
この「安野光雅が描く野の花」展は、ギャラリーの開館10周年を記念して開催されていて、安野光雅氏の故郷である津和野にある安野光雅美術館に所蔵されている、「野の花と小人たち」「もりのえほん」「みちの辺の花」という三冊の絵本の原画から、ギャラリーに植えられている草花などを選んで展示しているということだった。
面白かったのはやはり「もりのえほん」で、木々や葉っぱの間に動物たちが「だまし絵」の様に隠されているのだ。
もうずっと見ていると酔いそうな感じの細かい葉っぱや草、木の枝振りなどの中に、ウサギだったり、熊だったり、アリだったり、人の顔だったり、九州地図だったりが隠されている。
描いているご本人の「目が悪くなる」というコメントがどこかにあったけれど、見ている方も凝視するのでクラクラしてくる。
しかし、面白い。
どうしても「九州地図」を発見できなかったのが心残りである。
この絵本を甥っ子にプレゼントしようかしらと思ったりした。
「みちの辺の花」という絵本からの作品は、真っ白な背景に例えばすいせんが何本か、おけらとのあざみとなかぼのしろわれもこうが1本ずつ、など、ちょっと植物図鑑のような感じでスケッチされている。
シンプル イズ ベストという感じだ。
水彩で淡く彩色されているので、余計にひっそりというか、楚々としたという感じの草花たちである。
ぼたんなんて、華やかとか艶とかの代名詞のようなお花だと思うのだけれど、白いぼたん一輪をひっそり描かれると何故だか慎ましやかに見えてくるから不思議である。
しかし、私が一番スキだったのは、「野の花と小人たち」のシリーズだ。
のぶどうやなずな、たんぽぽやつくしといった子供の頃にその辺に生えていて親しんだ花たちの中に、小人が遊んでいたり歩いていたりする。小人は「母と子」の組み合わせが多いのだけれど、子供が一人でぽつんといたり、ブランコに乗っていたりする。
うわ、これ欲しいと思ってしまう。
中でも私が一番好きだったのは「ひがんばな」で、彼岸花を引っ繰り返して線香花火のようにしている小人が可愛らしいし、やはり緑を基調とした絵の中に赤いお花が咲いているというのは、華やかだし可愛らしい。
だから、「れんげ」の濃いめのピンク色が咲いている様子も好きだ。ただ、私は子どもの頃に田んぼがレンゲ畑のようになっている風景を見た記憶があまりない。それで「ひがんばな」の方に軍配が上がるのかも知れない。
「ほたるぶくろ」の白っぽい清楚な姿、小人のお洋服もやはり白っぽい色で揃えた上品な感じも好きである。ほたるぶくろって、大体名前がいいではないか。
じっくりゆっくり、全60点の絵を鑑賞した。
別のお部屋に、デジタル技術を用いて版画として複製したという、主にヨーロッパの街並みや風景を描いた絵が飾られていた。「販売もしています」という張り紙があったけれど、値段が書いていないというのは恐ろしい。
じーっと見たけれど、版画とはとても思えない感じで、水彩のにじみまでしっかり描かれている。版画であることを示すのは、絵を描いた部分がやけにきっぱりくっきりと四角形であることと、2/15といったサインが入っていることだけだ。
いいなぁとじーっと見入ってしまった。
入口のところに小規模ながらもグッズショップが展開され、絵はがきやクリアファイル、絵本などの販売も行われていた。
迷った末、「野の花と小人たち」からの8点を絵はがきにしたセットを購入した。
久しぶりに、私が持っている唯一の安野光雅氏の絵本である「旅の絵本V スペイン編」を眺めようと思ったのだった。
| 固定リンク
「*美術館・博物館」カテゴリの記事
- 「マティス 自由なフォルム」展に行く(2024.03.09)
- 「モネ 連作の情景」に行く(2023.12.09)
- 「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」に行く(2023.11.05)
- 特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」に行く(2023.08.18)
- 「ガウディとサグラダ・ファミリア展」に行く(2023.07.22)
コメント