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「THE 39 STEPS」
原作 ジョン・バカン作「三十九階段」
原作映画 アルフレッド・ヒッチコック監督「三十九夜」
脚色 パトリック・バーロウ
翻訳 小田島恒志
上演台本・演出 福田雄一
出演 渡部篤郎/水川あさみ/安田顕/佐藤二朗
観劇日 2014年10月31日(金曜日)午後7時開演
劇場 天王洲銀河劇場 2階A列19番
上演時間 2時間40分(20分の休憩あり)
料金 9000円
ロビーで恐らくはパンフレット等が販売されていたと思うのだけれど、開演時間ギリギリに到着したのでチェックしそびれた。
ネタバレありの感想は以下に。
「三十九夜」というヒッチコックの映画が2005年にイギリスで舞台化され、2010年に「THE 39 STEPS ―秘密の暗号を追え!―」というタイトルでデイヴィッド・ニューマンの演出で上演されている。
今回は、その2010年の公演の再演というよりは、新たに福田雄一バージョンが作られたと考えた方がいいのだと思う。
イギリスでの舞台が「原作」なので、2010年版も2014年版も、主人公以外の3人で138役を演じるという枠組み自体は同じだ。
舞台は、渡辺篤郎演じるリチャード・ハネイ(聞き取りの悪い私の耳ではずっと「ハニー」と聞こえていたのだけれど)の一人語りから始まる。
「こんな説明台詞を長々と語った私は」と言ってみたり、「こんな内面の心情を語ってみたり」と言ってみたり、そういう内輪ウケというかメタな始まりで笑いを誘っておいていつの間にかどっぷりと世界に浸らされていました、という舞台は結構あると思うのだけれど、このお芝居の場合は割と終わりの方までメタなところが顔を出していた。
つまり、サスペンスよりも笑いを取ったということだろうと思う。
ハネイは、退屈しのぎに出かけた劇場で、安田顕演じるミスター・メモリーという脅威の記憶力を持つ男のショーを楽しんでいたところ、同じボックスに入ってきた水川あさみ演じる女が突然発砲し、しかも彼女を家に連れ帰るハメになる。
彼女は実は某国のスパイを追いかけて劇場まで跡を付けたところだったと告白し、「自分は狙われている」と話し、何故だか39STEPSや、国家機密が盗まれて外国に持ち出されようとしていることや、その親玉の特徴は左手の小指がないこと等々をハネイ氏に語り、明け方にナイフで背中を刺されて殺されてしまう。
この水川あさみ演じるアナベラの話し方や風情が激しくわざとらしくて、笑いを取ろうとしているのは判るけれど、どうも興を削がれる感じが否めない。
水川あさみが、このアナベル、スコットランドに向かうハネイと汽車で乗り合わせた(そして、警察に捕まりそうになったハネイにいきなり恋人役を押しつけられた)パメラ、ニュースキャスターと、スコットランドで警察に追われてハネイが逃げ込んだ農家の主婦と主に4役を演じ、この他の何人いるのか判らない登場人物は佐藤二朗と安田顕の2人ですべて演じている。
それは可笑しいに決まっている。
特に、134役を演じ分けなければならない佐藤二朗と安田顕は、かつらや帽子を次々と付け替えてその場で役をチェンジしたり、舞台袖からダッシュで着替えもままらないまま出てきたり、八面六臂の活躍である。
なのだけれど、いや、このタイミングなら十分着替えは間に合っている筈なのにわざと間に合わなかったのような演出をしているよね、とか、実は全く息が上がっていないのに息も絶え絶えなフリをしているよね、という感じがしてしまい(実際のところ、どっちだったのかは判らないのだけれど)、何だかなぁと思ってしまった。
私の席が2階席で、最前列だったから舞台全体がとてもよく見渡せたのだけれど、その分「あっち側」という感じの遠さがあったことも原因なのかも知れない。
ハネイは、アナベラが言い残した住所の屋敷に向かい、それがヒントあるいは味方かと思っていたら(というか、そういう重要なことは最初に言おうよと思うのだけれど)、実はそこの主人であるジョーダン大学教授が敵方のボスで、あやうく殺されそうになったところを逃げ出す。
スコットランドヤードに訴えるものの全く相手にされず、逮捕されそうになったところを逃げだし、政治集会に紛れ込んだところをパメラに見つかって通報され、しかし警察ではなくジョーダン教授の手下に捕まって車で搬送される。
2人は手錠で繋がれてしまうのだけれど隙を見て逃げ出し、ホテルに一泊したところ、パメラが自分たちを搬送していた男達の電話を偶然盗み聞きして初めてハネイの言っていることは事実だったと気づき、その電話の内容から2人はロンドンの「ミスター・メモリー」の出演する劇場に向かうことになる。
こう書いてしまうとご都合主義の権化のような感じもするのだけれど、意外と見ているときはそういう感じがしない。何と言うか、チルチルミチルを見ているときみたいな感じと言えばいいんだろうか。
ハネイが、機密情報は盗み出されたのではなくミスター・メモリーの頭の中に記憶されたのだと見抜き、舞台上にいるミスター・メモリーに「39ステップとは?」と問いかけると、ジョーダン教授はミスター・メモリーに発砲する。
ミスター・メモリーは瀕死の息の下で、盗み出すために記憶させられた「エンジンの仕様」について語ると息を引き取る。
そのミスター・メモリーを挟んで、佐藤二朗が警察と舞台の司会と、身体の左右で別の衣裳を着て向きを変えることで演じ分けるのが可笑しいのだけれど、だけど、どうしてハネイとパメラはここで舞台上で突っ立っているんだよ! と言いたくなってしまうのだ。
見ている間、もっと小さな舞台で、もっと濃密にそして上手に(たった4人ですべての役を演じることに無理があるんだということをわざと見せるようなことはせずに)やれば、絶対にもっと面白くなるのにと思ってしまった。
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