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2014.12.21

「ア・ラ・カルト アンコール 役者と音楽家のいるレストラン」を見る

青山円形劇場プロデュース 「ア・ラ・カルト アンコール 役者と音楽家のいるレストラン」
台本 高泉淳子
演出 吉澤耕一
音楽監督 中西俊博
役者 高泉淳子/山本光洋/本多愛也/中山祐一朗
音楽 中西俊博(violin)/クリス・シルバースタイン(bass)/竹中俊二(guitar)
    北島直樹(piano)18-22/林正樹(piano)23-26&大阪
ゲスト 陰山泰/ROLLY
観劇日 2014年12月20日(土曜日)午後6時30分開演
劇場 青山円形劇場 Eブロック43番
上演時間 3時間(10分の休憩あり)
料金 6800円

 本当に最後の最後の「ア・ラ・カルト」だ。
 ロビーではパンフレット(1200円)が販売されていた。

 休憩時間には恒例のワイン販売もあって、1杯300円のワインに長蛇の列ができていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 青山円形劇場の公式Webサイト内、 「ア・ラ・カルト アンコール 役者と音楽家のいるレストラン」のページはこちら。

 2013年でいったん閉店したレストラン「ア・ラ・カルト」が、青山円形劇場の閉館前にアンコールで開店した。
 これが本当に最後の最後のレストラン ア・ラ・カルトである。
 アンコールと銘打って、これまでの名シーンを繋げて構成し、最初20年間レギュラーを務めていた陰山泰がゲスト出演し、ピアニストも北島直樹が再登場という、懐かしさに溢れた公演となった。
 ポニーテールのギャルソン姿が決まっている高泉淳子の挨拶で開店である。

 オープニングでレストランの開店準備が行われ、高泉淳子演じる女性が一人でクリスマスのレストランにやってきて、開店だ。
 「ギムレット」は2005年の再演(といっていいのか?)らしい。
 調べてみたら、2005年のア・ラ・カルト、私も見ているのだけれど全く記憶にない。困ったものである。
 オリーブを沈める話から、自家製ピクルスの話が続き、ギブソンというカクテルの話になる。
 「パールオニオンって何?」という程度の知識しかないので、この辺りの蘊蓄は実はさっぱり判っていないのだけれど、女性と山本光洋演じるギャルソンのやりとりを聞いているだけで楽しい。

 アペリティフを飲み終えた彼女は、ギャルソンに勧められてそのまま食事をしていくことになり、ギャルソンに頼んで「ア・ラ・カルトで」お料理を出してもらうことになる。
 メニューは秘密、サーブされてびっくりのお食事の始まりだ。

 次に登場したのが、高泉淳子演じるタカハシと中山祐一朗演じる後輩クン(名前が思い出せないところが相変わらずマヌケだ)の「フランス料理とワインを嗜む会」の面々である。
 面々といっても相変わらず二人だけだ。
 ア・ラ・カルト2の定番のコーナーだけれど、ここは新作だ。
 コースではなくア・ラ・カルトで注文し、しかもできるだけ長い名前のメニューを注文することにやっきになったり、必死でメモして覚えてきた蘊蓄を語ったり、相変わらずの楽しいたしなみ方だ。

 2人は「このレストランが閉店してしまうのではないか」というウワサを気にしていて、多分閉店してしまうのだろうレストランへの餞に「美味しくて高い」ワインを飲みに来た、ということでもあるらしい。
 なかなかギャルソンたちに聞けず、聞いてみたら「ペンションを」「民宿を」という期待とはちょっと違う答えが返って来て沈み込む様子がおかしい。
 タカハシは、安倍首相や厚生労働省の少子化対策の本気度を憂い、国も東京都も始めたからには最後まで支援しろと怪気炎を上げる。ついでに、某兵庫県議会議員のパロディも披露する。
 もちろん、こどもの城閉館についての思いをタカハシのセリフに載せている訳だけれど、私はどちらかというと、これはやらない方が良かったんじゃないかと思う。
 口にしなくたって、ちゃんと客席に伝わって来ているよ、と思うのだ。

 タカハシの熱意にほだされて、ギャルソンの一人が「レストランをやります!」と来年のクリスマスまでのリニューアルオープンを約束し、2人は「こんな高いワインを飲むことなかったね」と言い合い、でも手持ちのお金が足りずにお支払いはまた、ということで意気揚々と帰って行く。
 やっぱり、可笑しい。
 可笑しいといえば、本多愛也の(多分デタラメな)フランス語のメニュー復唱も可笑しい。そうそう、フランス語ってそういう風に聞こえるんだよね、と思う。

 次に開催されたのはシングルモット愛好会で、こちらもア・ラ・カルト2ではお馴染みである。
 ゲストはシチュエーションしか知らされておらず、メニューに書かれたカンペを頼りにしゃべり、高泉淳子が上手にそして楽しげにゲストを誘導してハッピーエンドに何とか持って行こうじゃないかという趣向のことが多かったと思うのだけれど、今回はオーソドックスに「ローリー演じる真面目で弱気なサラリーマン」と「高泉淳子演じる強気でさばけた面倒見のいい女性」との恋の始まりが描かれる。

 ここで登場してきたギャルソン姿の陰山泰が懐かしくも嬉しい。
 変わってないなぁというのと、やっぱり変わったなぁというのと、両方とも多分本当だ。
 こんなに噛む人だっけ? と思ったのは本当で、ご本人もセリフなのかアドリブなのかラストシーン近くで「思ったよりもできなかった」と呟いていたけれど、でも、そうそうこの佇まいだよと思うのだ。ここに白井晃もいればなぁという思いはやっぱり浮かんで来る。

 ローリー演じるオクデラくんは、「最後の2人になったら解散しようと思っていました」と言い、「歌に載せてずっと思いを伝えてきました」と告白するのだけれど、「感動しちゃった」と言いつつそれが自分に向けられているのだと気付かないのもお約束。周りのギャルソンたちの方がやきもきしてしまい、しかし陰山泰演じるギャルソンだけは、本気でシングルモット同好会への入会を検討している。
 そのやりとりは微笑ましくも可笑しく、そして、温かい気持ちにしてくれるラストシーンがちゃんと用意されている。

 ここで、10分間の休憩である。
 もちろん、ワイン(1杯300円)をいただく。

 休憩後は、ショータイムである。
 こちらもこれまで歌われた曲の中からセレクトされているようだ。
 ア・ラ・カルト2ではお目にかからなかった(ような気がする)山田のぼる少年がデタラメな感じの替え歌を歌ったり(そして、父親が陰山泰で母親がローリーなのが楽しいし、そこに父親か母親かのどちらかかあるいは両方の不倫相手らしい小林クンが登場するのがさらに可笑しい)、陰山泰が「Watermelon Man」として登場して相変わらずの怪しげな振付で歌い踊るのも懐かしく、会場は拍手大喝采だ。

 ローリーのAve Mariaはミスマッチのようで声質と曲が合っていて、もの凄くいいものを聴いた、と思える。
 オクデラくんを演じているときとは全く違う人だ! という感じだ。
 久々に登場の山本光洋演じる「あやつり人形」が「テーブルクロス引き」の芸を披露し、クリスマスソングがあって、最後はミュージシャンたちの独壇場であるリベルタンゴで締めくくりだった。
 ショータイムを満喫である。
 そういえば、ショータイムでペギー富岡がお花をもらっていたのはいつまでだったかしら、と思い出す。

 ショータイムの後は、マダム・ジュジュの登場である。
 髪型も変え衣裳も替え、高泉淳子の楽屋裏って一体どうなっているんだろうと改めて思う。
 ローリーがゲスト、中西俊博もトークに参加し、陰山泰もギャルソン姿で姿を現す。「思い出話」が語られるところがいつもとの違いだろうか。
 中西俊博がマダム・ジュジュの懇請で1台のバイオリンで弦楽四重奏を演奏したり、懐かしい曲の調べに高泉淳子が思わず涙ぐんだり、今日のマダムはいつもよりもウェットだ。

 「中山くん、あなたたちみたいな若い人ががんばらないとダメよ!」と言ったときの彼女は多分マダムではなく高泉淳子で、私は心の中で「中山祐一朗は多分そんなに若くない」と思わずツッコミを入れていたけれど、中山祐一朗が「5年目にして初めて舞台で中山君と呼ばれて動揺しています」と冷静に語っていたのがやっぱり可笑しい。

 そして、年老いた2人、夫婦ではなくどこかのサークルで知り合った2人のようだけれど、2人とも久々に「誰かと一緒のレストランでの食事」を満喫したようだ。
 シュー・ア・ラ・クレームから始まる、ギャルソンとのフランス語講座も楽しい。
 彼ら2人は、これから彼女の家でジンジャーティーとでんろく豆をいただきつつ、映画を見るようだ。これも多分「恋の始まり」の一つである。

 そして、デザートまで食べ終わって、最初のシーンに戻る。
 彼女は一人のディナーを満喫したようだ。
 そこへ、ローリー扮する「ちょっと危ないんじゃないか」という男性が現れ、何故か図々しく彼女と同席し、ギャルソンたちがシャンペンを抜いて乾杯と相成る。
 「私は助っ人に来ただけだから」と固辞しつつ実はグラスを隠し持っている陰山泰が懐かしい。ここはもう一押し、キャンドルで煙草に火を付けて一服して欲しかったところだなぁと思う。
 こどもの城が全面禁煙になったからダメだったのだろうか。

 最後はスタンディングオーベイションだった。
 随分と長く「ア・ラ・カルト」は見ているけれど、スタンディングオベーションで幕を閉じたのは初めてだ。
 楽しかった。
 そして、閉店が本当に本当に惜しまれる。

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コメント

 アンソニー様、コメントありがとうございます。

 「ア・ラ・カルト」ご覧になったのですね。
 青山円形劇場の閉館も寂しいですし、「ア・ラ・カルト」というレストランにもう通えないのも本当に寂しいです。
 結構、通い詰めていたので(笑)。

 お馴染みのキャラ、お馴染みの設定、でもちょっとずつ違っていたりちょっとずつ話が進んだりというのはいつものことなので、そこはいわば「手慣れた」感じで、続けて見ても初めて見ても楽しめるようになっていると思います。
 あぁ、それなのに、という感じです。

 でも、こちらに書いた感想がきっかけでご覧になってくださったなんて嬉しいです。
 また今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 姫林檎 | 2014.12.23 23:36

姫林檎様
お久しぶりです!
こちらで拝見して観てきたお芝居の1つがこのア・ラ・カルトです。チケットなくてプレビュー公演でしたが楽しめました♬最初で最後なのがホントに悲しいてす。劇場も素晴しいのに重ねて残念です。


恐らくこれはお馴染みキャラなのねと思いつつも、初めてでも置いて行かれることなく、楽しめる演出はよかったです。
ローリーさんのアヴェアリア好きでしたー。あとリベルタンゴは大好きだったので聴きごたえありました。
また素敵なお芝居を紹介してくださいね。
ありがとうございます。

投稿: アンソニー | 2014.12.23 10:57

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