「ペリクリーズ」を見る

加藤健一事務所 加藤健一事務所35周年記念 VOL.92 カトケン・シェイクスピア劇場「ペリクリーズ」
作　Ｗ．シェイクスピア
訳　小田島雄志
演出　鵜山仁
出演　加藤健一／山崎清介／畠中洋／福井貴一
　　　　加藤義宗／土屋良太／坂本岳大
　　　　田代隆秀／加藤忍／那須佐代子／矢代朝子
観劇日　2015年2月21日（土曜日）午後2時開演
劇場　本多劇場　R列11番
料金　5400円
上演時間　2時間15分

　ロビーではパンフレット等が販売されていた。

　ネタバレありの感想は以下に。

　加藤健一事務所の公式Webサイトはこちら。

　ネタバレありとは言うものの、シェイクスピアである。ネタバレなんてそこら中でされているというものだ。
　キャラメルボックスで上演された「僕の大好きなペリクリーズ」という舞台は見ているのだけれど、全くストーリーを覚えていなくて、「どんな話だったかなぁ」とぼんやり考えながら見に行った。
　狂言回しとして出てくるのは福井貴一だし、山崎清介も出演しているし、そして上演されるのがシェイクスピアと来ると、何だか気分は「子供のためのシェイクスピア」である。

　舞台の中央に三角形の大きな布を張って、その布に映像を映したり、引き落としたり、大きく張ったりして場面を展開させて行く。
　幕開けは、山崎清介アンティオケ王の宮廷で、そこに加藤健一演じるツロの領主ペリクリーズ（多分、若者である）が王女に求婚するためにやってくる。しかし、王の謎かけを解いて、この父娘が近親相姦の間柄であると気付いたペリクリーズは、アンティオケ王に命を狙われて逃げ出す。
　ここから先は、船の難破とご都合主義の嵐である。

　逃げ出したペリクリーズは、一度はタロソに身を寄せるが再び刺客が迫り、船でまたもや逃げ出す。
　しかし、その船が難破し、ペンタポリスに打ち上げられたペリクリーズは、ちょうど宮廷で行われるという槍の試合に参加して加藤忍演じる王女セーザと恋に落ち、結婚する。
　アンティオケ王らが死んだことを知ったペリクリーズは身重の妻と船でツロを目指すが船は再び嵐に巻き込まれ、出産と同時に妻は亡くなる。妻の遺体を海に投じ、ペリクリーズは生まれた娘をタロソの領主夫妻に預けてツロに戻る。

　セーザの遺体はエフェソスに流れ着くが、そこの医者によって息を吹き返し、ダイアナの神殿で神に仕えることになる。
　一方、20年後（その間、どうして放りっぱなしだったのか理由がよく判らないのだけれど）、ペリクリーズはマリーナに会いに行く。ところが、完全無欠のマリーナと自分たちの娘が比較され、娘が貶められることにイラっとしたタロソの太守夫妻は、マリーナを殺そうとする。
　実際のところ、マリーナは殺される寸前に海賊に攫われ、命は助かっているのだけれど、タロソの太守夫妻はペリクリーズに「マリーナは亡くなった」と告げ、失意のペリクリーズは髪を切らないという誓いを立てつつ放浪の旅に出る。

　ミティリーニの売春宿に売られたマリーナは、信心深さと「操は何としても守る」という決心により、客を蹴散らしている。客としてやってきた太守も袖にしてしまう。
　このままではマリーナにかけたお金が無駄になると売春宿の店主夫妻も諦め、マリーナに家庭教師のような仕事をして稼がせ始める。
　たまたまミティリーにの沖合にペリクリーズの船がやってきて、見舞いに行った太守は、ペリクリーズの慰めにとマリーナを派遣する。
　ここで、ペリクリーズとマリーナは父娘であることが判り、直後、ペリクリーズはダイアナのご託宣を受けてエフェソスのダイアナ神殿に行ってセーザとも再会する。

　こうして、大団円のご都合主義物語は完結である。
　これはもう、その展開のご都合主義に対して「そんなに上手く行く訳がないだろう！」とツッコミを入れつつ、結構長大な物語を楽しんでしまった方の勝ちである。
　かつ、船の上、アンティオケ、タロソ、船の上、ペンタポリス、船の上、エフェソス、タロソ、ミティリーニ、船の上といった具合にぽんぽんと飛ぶ場所と時間のジェットコースター加減にわくわくし、さて次はどうなるのだろうと興味津々、彼らの運命を追いかけてなんぼという感じがする。

　もの凄く凝縮された2時間を過ごした。