「モンティ・パイソンのSPAMALOT featuring SPAM」 を見る
ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT featuring SPAM」
脚本・詞 エリック・アイドル
音楽 ジョン・ドゥ・プレ&エリック・アイドル
企画・上演台本・演出 福田雄一
出演 ユースケ・サンタマリア/平野綾/ムロツヨシ/松下優也
貴水博之/マギー/皆川猿時/池田成志 ほか
観劇日 2015年2月20日(金曜日)午後6時30分開演
劇場 赤坂ACTシアター 1階R列11番
料金 11000円
上演時間 3時間(20分の休憩あり)
パンフレットやTシャツ等のグッズが販売されていたけれど、あまりにも混雑していたので近寄らなかった。
ネタバレありの感想は以下に。
ネタバレありと言いつつ、ネタバレはやりようがないという気もする。
ミュージカルと銘打っていることをすっかり忘れて劇場に行き、オーケストラピットがあってびっくりしたけれど、コレはネタバレとは言わない。
初演は見ていないので、初演との違いはよく判らない。
全編ナンセンスとか全編風刺とか、そういう感じではないかと予想していたのだけれど、当たったような当たらなかったような、よく判らない感じである。
とりあえず、物語はイギリスらしくアーサー王物語がベースらしい。
といっても、実は私はアーサー王物語を知らない。読んだことがないし、どんなストーリーなのかあらすじも知らない。僅かに「円卓の騎士」という単語は聞いたことがあるというくらいだ。
少なくともこのミュージカルのストーリーを強引にまとめると、ユースケ・サンタマリア演じるアーサー王は、マギー演じるお供なのか馬なのかよく判らないパッツィを連れて円卓の騎士を選んで探す旅に出て、円卓の騎士を集めたあとは彼らと一緒に聖杯を探す旅に出て、聖杯が見つかるのと同時にブリテン統一も達成されて、めでたしめでたし、という感じである。
要所要所に平野綾演じる「湖の貴婦人」が現れて、アーサー王を誘導する。本当は導いているのだろうけれど、誘導するとか迷走させるとかいう言葉の方が似合っている。
ストーリーとしてはこれだけだ。
アーサー王が困難にもめげず、様々な障害も乗り越え、ブリテンを(多分)統一し、湖の貴婦人と結婚する。
円卓の騎士たちは、松下優也演じるガラハッド卿は常に常に「格好いい白馬の王子様」風のしゃべりで意味ある発言は皆無だし、貴水博之演じるロビン卿は徹底的にモノ考えていなさそうだし、皆川猿時はベデヴィア卿を演じているときよりもマルチの父親である親方様を(文字通りに)体当たりで演じているときの方が楽しそうで大変そうだし、ムロツヨシ演じるハーバードは「助けてください」って手紙を女の子風に出しておいて実は息子だし、そのハーバードにまんまと騙される池田成志演じるランスロット卿は意外と活躍しない。何故なら、池田成志が、アーサー王一行を邪魔する存在として何役も兼ねているからだ。
一幕目は楽屋落ちっぽいネタというか、素なのかアドリブなのか作り込んだのかよく判らない「登場人物としてではなく役者としての発言」のオンパレードに少しばかり引いてしまった。
楽しいし笑えるけれど、ずっとこれ? と思ってしまったのだ。
ミュージカルだから歌と踊りもふんだんに盛り込まれているのだけれど、最初に「ブリテンの物語です」というムロツヨシ演じるマルチ(だと思われる)の解説が入ったのに、最初の一曲は何故か北欧風の衣裳を着てフィンランドの自然を称える歌、というところから始まるのだ。
そうしておいて、「この4〜5分は全部無駄か!」と役者に言わせてしまう。
大胆不敵なのだけれど、ずっとこれってどうなんだと思ってしまった。
その後も、割と感動的な音楽に、登場人物というよりは役者の心情を乗せて歌い上げてしまったり、パッツィが馬の動きに合わせて鳴らすココナツの殻について延々やりとりがあったり、とりあえず、ストーリーが進んでいるのか進んでいないのかよく判らないまま舞台が進んで行く。
それが、私の方の変化なのか、客席の変化なのか、舞台の思惑どおりなのか、休憩を20分挟んだ後半になると、何だかやけに笑えてしまう。
多分、その最初は、「英語を使ったら体当たりするぞ」という皆川猿時演じるお館様とマギー演じる衛兵とのやりとりだ。「セーフ」とか、もうほとんど日本語になっている英語でも口から出してしまったら、お館様は衛兵に体当たりして潰しに行く、というシーンである。
何だかこれがもう問答無用で可笑しい。とにかく笑ってしまう。ゲラゲラ笑ってしまった。
そして、この大笑いをきっかけに何だか何もかもが可笑しくなり、この後はずっと何があっても大笑いしていたような気がする。
大笑いしながら、「人生楽に行きようよ」なんて歌われたら、もう、「この台詞を言ってもらうために私は今日ここに来たのよ!」「まるで私のためにあるようなミュージカルだわ!」みたいな錯覚を起こすのも当然である。
錯覚というか、歌われているときは、本当にそう思っていたような気がする。
舞台上では、「鉢植えを探さなければこの森から出してやらない」と何者かに言われたアーサー王主従があっさりと鉢植えを持った少女と出会って鉢植えをもらう、というこの上なくどうでもいいシーンが展開されていたのだけれど、そんなことは関係ないのだ。
ストーリーとは全く関係ないところで、歌だけで人に感動を与えてしまうのがミュージカルである。
しかし、上演台本を作るのは大変だったろうなぁと思う。
元の舞台は全く知らないけれど、その味を活かし(どこまで活かしているのかは全く判断できないのだけれど)、東京ラブストーリーからマッサン、妖怪ウォッチから昨今のテレビ事情まで、全編にくまなく危険に散りばめてある。
そのまぶされているサブカルに反応できたりできなかったりしながら、この上演台本がターゲットにしている年齢層はどれくらいなんだろう、客席の平均年齢や最多年代はどの辺なんだろうと、そんなことも頭の片隅で考えてしまう。
そんなこんな、第一幕ではちょっと引いてしまったのだけれど、第二幕は、「観客の椅子の下に聖杯が置かれてあった!」という仕掛けやそのお客さんを舞台に上げてしまう演出も含め、大笑いして楽しんで、気がついたらストレスや体調不良もどこかに飛んでいた。
これはもう、福田雄一の力業と、芸達者過ぎる役者陣に大拍手である。
可笑しかった。
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コメント
みずえ様、コメントありがとうございます。
冒頭、ムロツヨシさんだったんですね。
実はこっそり「この舞台、鈴木浩介って出演してたっけ?」などとトボケたことを思っていた私なのでした・・・。
確かにどこまでが作り込んであって、どこからがアドリブなのか、よく判りませんでしたね(笑)。
そして、一体元のお話をどこまでデフォルメしてあったのかもよく判りませんでした(笑)。
アーサー王物語の簡略版みたいなものが出版されているといいんですけど。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2015.03.05 22:38
私も観ました。
冒頭のムロツヨシの解説で既に、ふざけた舞台だということがわかりますよね。
どこまでが台詞でどこからがアドリブかわからないくらいの、とんでもない展開でした。
それにしても、台詞量は膨大だし歌も踊りもあったりで、役者は大変だったでしょうね。
私としては、池田成志や皆川猿時などの芸達者な人たちが観れて満足でした。
主演のユースケも、力の抜けた持ち味を生かして頑張っていたし。
ただ、私も原作は知りません……変え過ぎな気もしますよね……。
投稿: みずえ | 2015.03.04 09:18
アンソニー様、こちらもコメントありがとうございます。
赤坂ACT劇場って本当に大きいですよね。大きいというか「デカイ」という感じ。1階席でも念のためオペラグラスを持参した方がいいかしらという感じではあります。
確かに、タイトルではミュージカルを歌っていますし、意外と歌と踊りの時間が長かったと思いますが、そのくせミュージカルっぽくはなかったですね(笑)。
私も前半はちょっと笑えない・・・、と思ったりしていました。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2015.02.28 23:28
こんにちは。姫林檎様。
先日観てきました。当日券で二階席でした。
ACTの二階は初めてでしたが一番前だったので
案外見やすかったです。
一緒に行った初ミュージカル観劇の友人が
高級なコントみたいだったと言ってました。
それを聞いて、そういえばミュージカルだったなと
気づいた間抜けな私ですw
私はもしかしたら福田さんの笑いのツボとは
少しずれているのかもしれませんが。
ムロさん、マギーさん、猿時さん、池田さんの技量で
笑わせてもらった気がしました。
投稿: アンソニー | 2015.02.28 17:51