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2015.03.14

「趣味の部屋」 を見る

PARCO presents 「趣味の部屋」
脚本 古沢良太
演出 行定勲
出演 中井貴一/戸次重幸/原幹恵/川平慈英/白井晃
観劇日 2015年3月13日(金曜日)午後7時開演
劇場 パルコ劇場 H列26番
料金 8700円
上演時間 2時間5分

 ちょうど2年前に上演された初演の再演である。
 上演時間がちょっと短くなって、チケット代が約1割上がっている。
 出演者は変わらない。再演に当たって、初演に出演した役者が全員揃うって意外とないことなんじゃなかろうか。嬉しい。

 劇場でチラシと一緒に配られるぴあに中井貴一のインタビューが載っていて、「(脚本を)変えてくれと頼んだ」と書いてあって、果たしてどう変えたのか、楽しみに見始めた。

 ロビーではパンフレット(1500円だったような気がする)やポスター、Tシャツなどが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「趣味の部屋」のページはこちら。

 再演を見終わった後、2年前に初演を見たときの感想を読み返してみた。
 かなり初演に忠実に再演していたようだ。少なくとも、私が感想を書いた範囲では、ストーリー展開や、各自の「趣味」、戸次重幸演じる土井が作るジグソーパズルの絵柄まで同じである。
 なので、前回の感想にリンクを張って、ここには直接は書かないことにする。

 再演を見た感想というと、やはり初演のインパクトには敵わない、ということに尽きる。
 僅か2年前の初演の再演だし、何といっても次々と容疑者が現れ、暴露に次ぐ暴露、最後には大どんでん返し、というのがこの芝居の最大の売りで、その大どんでん返しから受けた衝撃と来たらとんでもなかった。
 その衝撃はもちろんのこと、展開もほぼ覚えている中で見てしまうと、やはり「おぉ!」というカタルシスは大激減だ。

 中井貴一のインタビューを読んで、「初演とは変えたところがある」ということは判っていたから、ついつい「どこを変えたんだろう」「どう変えたんだろう」と考えながら見てしまう。
 実際のところ、男5人の趣味のための部屋、いわば主宰者である中井貴一演じる天野は内科医で、他の4人はその患者、それぞれの趣味は料理にガンプラ、古書集めに亀の飼育、2週間ばかり姿を見せていない仲間を心配しているところへ、婦人警官が現れ「木下さんをご存知ありませんか」と聞く。
 オープニングから、実に忠実に初演を再演している。

 「だから、どこを変えたんだ!」と思いながら、「変わっている」ことをつい期待してしまって記憶がおぼろげなところは全て変更されたのかと思い込みたくなったりもしながら見ていたのだけれど、恐らくは、ほぼ忠実に初演を再現していたと思う。
 大どんでん返しを知ってしまっている客がいる再演の芝居を、最後まで「興味」や「好奇心」で引っ張るのはやっぱり難しいよなぁと余計なことまで考えてしまう。

 余計なことといえば、「趣味の部屋」なんてありそうでないシチュエーションを説明するために、最初に婦人警官を登場させて彼女に説明する体裁で観客に説明してしまうって、ベタだけどなんて有効な手段なんだと思う。
 さらに、男5人がそれぞれに秘密を抱え、あるいはタッグを組んで秘密を守っていたことから、次々と「真実の暴露」が繰り返されて、容疑者がそのたびに変わって行く。もちろん、周りの反応も変わって行く。
 開き直させたり、怒らせたり、固まらせたり、そういうことが全て「他者からの働きかけ」で変化していて、戯曲の書き方のある種のお手本のような展開だなと思ったりもする。
 その「お手本」を、中井貴一らの芸達者かつクセのあるおじさん達が演じるのだから、面白くない筈がないのだ。

 面白くない筈がないのだけれど、しかし、やはり肝心の「大ネタ」がすでにバレているという状況は辛い。
 中井貴一のインタビューが、いっそ、観客に興味を持たせ、ミスリードするための演出なんじゃないかと思ったくらい、初演に忠実だったから、余計にそう思えたのかも知れない。

 そうして、初演では、実は「木下が2週間も現れていない」というところから全て、この趣味の部屋について知ってしまった木下の彼女を騙すため、そして、何にもハマれなかった土井に「演劇」という趣味を持たせることと一石二鳥を狙って行われたお芝居だった、という落ちで幕となった。
 しかし、再演ではその後にもう一押し、中井貴一演じる天野が、部屋に置かれた業務用冷凍庫を軽く叩きながら、「君の代わりが見つかったよ」と高笑いする、というワンシーンが加わっていた。
 このワンシーンが加わっただけで、さらにこの芝居の状況というか様相は再度ひっくり返る。「全てはお芝居でした」で大団円だった筈が、天野はその「芝居」すらも計算に入れて自らを安全地帯に置き、さらに仲間の彼女を新たな獲物にしようと決めた、看護師殺人事件はやっぱり存在したし、天野はやはりどこか狂っている、という結論に変わってしまうのだ。

 思わず「そう来たか!」と呟いてしまった。

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コメント

 アンソニー様、コメントありがとうございます。

 4回もご覧になったんですか! びっくりです。
 初演を3回もご覧になっていたとは・・・。凄くインパクトがあったんですね。

 今回の再演、大きく「変わったよ!」という感じではないんですね。
 演じている方々にとってはどういう印象だったのか、気になります。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2015.03.20 23:16

こんばんは、姫林檎様。
また遊びに来ちゃいましたw

本日行って来ました。

ストーリーは初演と同じですね。
戸次さんがジャージになり原さんのタンクトップ+短パンの色は違いました。

初演と変わったところはそれぞれの細かい台詞なのではないかと…結局確信持てずすいませんっ。

中井貴一さんの2面性は案外早い段階で現れてたんですねぇ。他にも個人的にはいろいろな発見があってとても楽しく観劇して来ましたが前回3回も観たのになに見てたんでしょうね(笑)


全然関係ないですが、名前が天野さん他男性陣は水木金土と繋がるんだなー。曜日?天体?とかも思いましたよ。

4回観ても充分楽しめました。
やはり行ってよかった。
席も中央で見やすかったです。

投稿: アンソニー | 2015.03.20 01:24

 アンソニー様、コメントありがとうございます。

 最後の中井貴一さんの台詞、初演にもありましたっけ?
 そうしたら、私はそこを完全に忘れていたようです・・・。何故? と自分に激しくツッコミを入れたい気持ちで一杯になりました。
 ご指摘ありがとうございます。

 だとすると、私はほとんど初演との違いを感知できなかったと思います。
 土井役の戸次さんの衣裳が、スーツからジャージに変わったことくらいでしょうか・・・。

 アンソニーさんがご覧になったら、ぜひ「初演との違い」をお教えくださいませ。
 よろしくお願いいたします。

投稿: 姫林檎 | 2015.03.16 22:48

姫林檎様、こんにちは。
趣味の部屋、ご覧になられたのですね。
私も観たくて当日券狙うか悩み中です。

最後の中井貴一さんの台詞は前回もありましたよ。あそこでゾクってしましたもん。もしくはほんとに微妙な変化なんでしょうか。

気になります〜

投稿: アンソニー | 2015.03.15 12:46

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