「黒豹の如く」を見る
宝塚星組公演
ミュージカル・プレイ「黒豹の如く」
作 柴田侑宏
演出・振付 謝 珠栄
ダイナミック・ドリーム「Dear DIAMOND!!」-101カラットの永遠の輝き-
作・演出 藤井大介
観劇日 2015年5月8日(金曜日)午後1時30分開演
劇場 東京宝塚劇場 1階18列57番
料金 8800円
上演時間 3時間(30分の休憩あり)
職場の友人に誘って(そしてチケットの手配までして)いただいて、生涯8回目の宝塚である。
星組トップスターお二人の退団公園でもある。
ネタバレありの感想は以下に。
5月10日に大千秋楽を迎えるトップスターの退団公演となれば、演じる方々はもちろんのこと、客席の気合いの入り方が違う。
初めて行った私が「え?」と思うほど、笑いと拍手のタイミングが早い。あるいは既に予想していて、既に笑いすら起こらないシーンがあったりもする。
それでも、意外なくらいアウエー感がないのは凄いことだと思う。
とにかくここに集まった観客全員で、この公演を舞台を成功裏に導こうじゃないか、気持ち良く送ろうじゃないか、という空気が漲っている。
ミュージカル・プレイは、この公演を20回は見たという友人によると、この公演で退団する星組男役トップスターの柚希礼音のために書き下ろされた作品なのだそうだ。
第一次大戦後のスペインが舞台で、スペイン海軍の参謀である柚希礼音演じるオダリス大佐と、彼の元恋人で親の借財のために望まぬ結婚をして今は未亡人となっている夢咲ねね演じるラミレス侯爵夫人との恋物語である。
そこに、大実業家でドイツ・イタリアと繋がっているらしいアラルコン公爵が、ついでにラミレス侯爵夫人に横恋慕もしていて、公私ともにオダリス大佐の周辺をかき回す、という舞台だ。
しかし、宝塚に通い詰めるようなファンではなく、今回の公演も1回しか見ていない私からすると(そういう観客はターゲットになっていないと言われればそれまでなのだけれど)、制服ものというのは辛い。
出演者の方々の見分けがつかないのだ。
「ネクタイの色が違ったでしょ」とか「肩章が違ったでしょう」と「プロ」達には言われたし、さらに「衣裳が同じでもちえちゃんは判る!」と断言されたのだけれど、ここで告白すると、いえ、やっぱりなかなか見分けがつきませんでした、なのだ。
お化粧の感じも似ているし、声の出し方も多分共通していて、お話全体の半分くらいまでは、主要登場人物の人数すら把握できない体たらくだった。申し訳ないことである。
お話とすると、とにかく柚希礼音の魅力を存分に伝えようということがメインテーマなんだなと思う。
ダンスシーンに限らず「動き」が綺麗に見えるよう、その切れの良さを活かすよう、シーンが作られていることが感じられる。
その代わり、「ストーリー」としては、割りと予定調和である。どんでん返しがあるとか、ミステリーの要素があるとか、お話で引っ張ろうとはしていない。逆に、ストーリーが柚希礼音の魅力を伝える舞台を邪魔しないように、奇をてらうとか手に汗握るということを意識的に排除してあったんじゃないかとすら思う。
もう一つ気になったのが、やけに「昭和」な感じのセリフが3箇所くらいあって、激しく浮いていたことだ。
何だか聞いているこちらが恥ずかしくなってしまい、すでに何というセリフだったか覚えていないのだけれど、とにかく「いや、今このシーンでそのセリフはないでしょう!」とツッコミを入れたくなるようなセリフだったことは間違いない。
しかも、すべて、オダリス大佐がラミレス侯爵夫人に対して言う台詞である。
演じている柚希礼音本人も言いにくそうにしていて、そのセリフ、どうしても必要なのかしらとどこかに抗議したい気持ちになったくらいだった。
何だか文句ばかり書いてしまったけれど、華やかで贅沢な舞台だったと思う。
それに、最後の「行きます!」というオダリス大佐のセリフが、この公演を最後に退団する柚希礼音自身と重なって、もの凄く効いていた。
後半のショーは、とにかく、「揃っている」感じが素晴らしかった。
これまでは「何となく揃っていないなぁ、いいのかなぁ」と思ったりしたこともあったのだけれど、これはもう送り出す方の気合いの入り方の違いなんだと思う。
群舞のシーンの呼吸の合い方、手足の揃い方が本当に美しい。見応えがある。
連れて行ってくれた友人たちによると、こういう感想はあまり聞いたことがないと言うのだけれど、私はこの後半のショーは、「受け継ぐ」「受け継がれる」という感想を強く持った。
柚希礼音が退団することよりも、柚希礼音退団後も宝塚は星組は続いて行くということの方がクローズアップされているように感じたのだ。
どういうところに? と聞かれると困るし、「あれだけ”礼音”って連呼されていたのに!」と言われたのだけれど、そう思ってしまったものはそう思ってしまったのだ。
とにかく華やかで、「たっぷり柚希礼音を味わってもらおうじゃないか」というサービス精神に溢れたダンスで歌で舞台だった。
ラストの大階段に羽飾り(「飾り」の範疇をだいぶ超えているような気がする)も華やかで、白一色で潔く、却って豪華な印象だ。
とにかく「大階段と羽」というのが、私のベタすぎる宝塚のイメージなので、その「宝塚ならでは!」「宝塚こそ!」を堪能できて満足である。
これぞ非日常だ。
休憩時間も含め3時間を堪能した。
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