「国立西洋美術館 常設展」に行く
2015年8月20日、一日がかりだと思っていた用事が13時には終わったので、国立西洋美術館の常設展に行って来た。
平日午後の早い時間だけれど、夏休み中のためかちらほらと人がいる。
実はどこの美術館にしろ「常設展」に行ったのは初めてで、意外とたくさんの人がいることに驚いた。
そして、お値段が430円と破格にお安いのが魅力的である。しかも、これまた初めて知ったのだけれど、いくつかの例外はあるものの、国立西洋美術館の常設展は写真撮影が許されているのだ。こちらも驚いた。
国立西洋美術館の常設展の中心は、松方幸次郎氏が集めた松方コレクションだそうだ。
松方幸次郎氏について全く知らなかったけれど、解説によると、明治時代に総理大臣を務めた松方正義の三男で、川崎造船所の初代社長だそうである。
ヨーロッパ滞在中に美術品の収集を始め、美術館も作ろうとしていたけれど、その夢は果たせなかった、ということらしい。
しかし、私の目的はただ一つ。
2015年3月17日から展示が開始された、個人より寄託されている「聖プラクセディス」である。
現在のところ、「ヨハネス・フェルメールに帰属」という非常に曖昧な書き方をされている。フェルメールの作であるかどうか、研究者の意見が一致して折らず、今も研究が続けられているからだ。
もしフェルメール作ということになれば、フェリーチェ・フィケレッリの「聖プラクセディス」を23歳のときに模写した絵ということになるという。初期作品であることは間違いない。
「模写」といっても、原画にはない十字架が加えられ、バックの青空にはラピスラズリが使われ、単なる「模写」とは一線を画すのだそうだ。
というような解説が書かれたB5版の紙が、展示された絵のそばに置かれ、自由に持って行けるようになっている。
ある程度、話題というか論争になることを予期した上での展示ということなんだろうなと思う。
ちなみに、ミュージアムショップにおいてこの絵の絵はがきは販売されていない。売店の方にお聞きしたところ、フェルメール作かどうか確定されていないこともあり、少なくとも現時点において絵はがきを作る、販売するという計画は全くないそうだ。残念である。
私には全く絵心というようなものはないのだけれど、しばらくじーっとこの絵を眺めていた。
何が印象に残るって、それは、この「聖プラクセディス」が着ているドレスの赤い色である。鮮やかすぎる。目立つ。
そして、そのドレスの色と同じくらい鮮やかに、青空が見えている。暗く沈んだその他の建物等々に比べて、その青空の色は確かに目立つ。浮いていると言ってもいいくらいだ。
そして、その明るい赤に騙されるけれど、彼女が何をやっているかといえば、傷ついた人々が流した血をスポンジで吸い、それを手前にある壺に絞っているのである。彼女は傷ついた兵士を治療し、亡くなった兵士を埋葬したことから姉ともども「聖人」とされているという解説を読んでも、絵から受ける印象はかなりブラックだ。
フェルメールといえば、「青と黄色」そして「光」だと思うのだけれど、この絵はそれらのうち「青」が特徴的ではあるけれど、それ以外にいわゆるフェルメールっぽいところはないように思う。
でも、フェルメールの作かどうか、結論が出るのはきっとずっと先のことになるんだろうなと思う。
それはそれとして、見ておいておきたかったのだ。
常設展のテーマは「中世末期から20世紀初頭にかけての西洋絵画とフランス近代彫刻」で、宗教画からスタートし、ルーベンスの絵に「フランダースの犬」を思い出し、キレイ過ぎるんじゃない? という感じの肖像画を通り抜けると、印象派の時代になる。
ルノワールの初期作品だという「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」がなかなかエキゾチックで、柔らかなタッチではあるものの全体としての暗さが「ルノアールっぽくない!」と言いたくなる感じだ。隣に、その20年後にルノアールが描いた絵が展示されているので、その違いがさらに際立つ。
モネの「睡蓮」は、かなり大きくて、大きい分なのか全体に荒く見える。遠くから全体を見ればもちろん「睡蓮」なのだけれど、何だかちょっと印象が違う、という感じが残る。
ゴッホとルノアールがそれぞれ「薔薇」を描いた作品が展示されているのも楽しい。せっかくだから、隣同士に展示してあればもっと見比べられるのに、残念ながら離れたところに展示されている。花の白い色よりも葉の緑の色の方が画面の大半を占めるゴッホと、ピンクや赤の花の色だけで画面が埋められているルノアールと、何だかそれぞれ「らしい」絵になっているんだろうなと思う。
屋外にも展示されているロダンの彫刻は、常設展を入ったすぐのところにも展示されている。
屋根のあるところに入れる彫刻と入れなかった彫刻の違いをぜひ知りたいものである。
私的に最後を飾っていたのはミロの「絵画」という絵である。洒落っ気があるのかないのか全くよく判らない。
そういえばピカソの絵もあったけれど、何だか意外なくらい「普通」という感じがする。
「没後50年 ル・コルビュジエ ― 女性と海 大成建設コレクションより」を見たときに「ピカソとミロを足して2で割ったみたい」と思ってしまったのが原因かもしれない。
この西洋美術館本館を設計し、彼が設計した建築物をまとめて世界遺産に登録しようという動きがある昨今、タイムリーといえばタイムリーな展示なのだと思う。
1時間くらいかけて、意外とゆっくり楽しめた。
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