「旅の風景 安野光雅 ヨーロッパ周遊旅行」に行く
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で2015年7月7日から8月23日まで開催されている旅の風景 安野光雅 ヨーロッパ周遊旅行に行って来た。
土曜だったけれど、閉館1時間半前に入ったためか割りと空いていて、ゆっくり自分のペースで見ることができた。
1階では、「風景画を描こう!」という感じのワークショップが開かれていて、数人、子供(だったと思うけれど、オトナもいたかも知れない)が熱心に絵を描いていた。
絵心のない私は、もちろん素通りである。
1980年代、90年代に出版された「絵本」の原画が展示されている。
ヨーロッパを周遊旅行した際に描いたスケッチを元にした絵のようだ。「イタリアの陽ざし」「スペインの土」など、絵本のタイトルも洒落ている。
やはり自分の目で見たことがある風景だと見入ってしまう。「ドゥオモ広場」の縦横斜めのラインが緻密な、珍しく「緑」でも「茶」でもない絵が印象的である。「ツェレ」の木組みの家並みも楽しい。そうそう、こういうコンパクトな感じだったのよと思う。
私の記憶の方が古かったり新しかったりするけれど、きっと今行っても同じような景色を見ることができるんじゃないかしらと思う。
逆に、行ったことがなくていつか行ってみたいと思っている場所の絵も楽しい。「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」の絵を見てどこに大聖堂が描かれているのか判らないよと心の中でツッコミを入れたり、絵本にもあるキャプションの乾いた文章を楽しんだり、いかにも風景画という感じの絵と、小人っぽい人々や旗などカッチリしたイラストっぽい感じの絵と、同じ絵本にも違うテイストの絵が隣り合ったりしているのだなぁと「絵」として楽しむこともできる。
「歌の風景」というコーナーもあって、例えば「ローレライ」とか「ゴンドラの唄」とか、ヨーロッパのご当地ソングともいうべき歌に合わせた絵を展示している。
私には、例えば「菩提樹」とか「大学祝典序曲」とかタイトルを言われただけでは歌詞やメロディを思い出せない曲もあって、イヤホンガイドがあって、曲を聴かせてくれるといいのになぁと思ったりした。
「旅の絵本」は私も2冊持っているシリーズで、これも楽しい。
原画だと、青いとんがり帽子の旅人を探したり、「これは**のシーンだ!」というような隠し絵のような部分を探す楽しみが倍加するように思う。
キリストがマリアに抱かれている小屋に東方の三博士が訪ねて行くシーンや、スペインの絵本だったと思うのだけれど、ポパイとオリーブが描かれていたりする。それを見つけたときには思わず笑ってしまった。
「絵本 即興詩人」の原画や、NHKで放映されたという「風景画を描く」という番組のために描いた絵のコーナーもある。
その「絵を描く過程」や、「実際の風景はこんな感じだったけれど、そこに別の場所にあった家の絵をはめ込んだ」とか、川向こうからスケッチすると邪魔するものがなくていいとか、肉声が伝わってくるようでこちらも楽しい。
畑の絵を描いている途中に「見たとおりの緑が出せない」といったコメントをつけている絵もあって、何だか一方的に親近感が湧いてくる。
駆け足になってしまったのが勿体ない、静謐な空間だった。
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