「五右衛門vs轟天」を見る
劇団☆新感線 35周年オールスター・チャンピオンまつり!「五右衛門vs轟天」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
作詞 森雪之丞/いのうえひでのり
出演 古田新太/橋本じゅん/松雪泰子/池田成志
賀来賢人/高田聖子/粟根まこと/右近健一
河野まさと/逆木圭一郎/村木よし子/インディ高橋
山本カナコ/礒野慎吾/吉田メタル/中谷さとみ
保坂エマ/村木仁/冠徹弥/教祖イコマノリユキ/ほか
観劇日 2015年8月1日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 赤坂ACTシアター K列3番
料金 12000円
上演時間 3時間20分(20分の休憩あり)
ロビーでは、もう本当に様々なグッズが販売されていた。
中でも気になったのは、これまでのパンフレット等で使った写真、使わなかった写真を集めた写真集である。合わせて、紀伊國屋書店の新宿店で写真展も開催されているらしい。
ネタバレありの感想は以下に。
35周年オールスター・チャンピオンまつり! と銘打っているだけあって、何しろ、古田新太演じる石川五右衛門と橋本じゅん演じる剣轟天という、劇団新感線の二大スター(?)が同じ舞台に立ってしまうという無茶ぶりである。
そして、開演前の注意事項の際に、「携帯電話の電源は」とか「身を乗り出さないように」といった注意事項をすっ飛ばして告げられたのは、配布された「ばってん風車」を時が来たらくるくると回してください! という案内だった。
曰く、池田成志演じるばってん不知火が、かなり面白い仕上げになっているとのことだった。
それは楽しみである。
五右衛門と轟天では時代背景も世界観も全く違うじゃん! と見始める前からツッコミを入れたい気持ち満載だったけれど、そこは「まつり」であっても中島かずきの劇作は筋を通すべく奮闘するということだろう。
轟天は、悪の結社に支配されている現代の世界で、インターポールから悪の結社であるブラックゴーモン構成メンバーたちの祖先に当たる400年前に日本にいた石川五右衛門という大泥棒が子供を作れないようにしてくれと頼まれ、というか脅され、400年前にタイムスリップする、という設定になっていた。
強引といえば強引、見事といえば見事である。
公演の中で、古田新太扮する石川五右衛門が「あっちのチームが時間を食うから、こっちはサクサクと話を進めないとね」などと言っていたけれど、基本的には「天地をひっくり返す」風魔の法を狙う石川五右衛門チーム、石川五右衛門を追っかける剣轟天チーム、石川五右衛門を付け狙う高田聖子演じるマローネのチーム(広くいえば、こちらも石川五右衛門チームの一員である)、という大体3つの塊が組み合わせを変えつつちょっかいを出したり出されたりしながら話は進んで行く。
そこに、粟根まこと演じる風魔の頭領や、ばってん不知火や、風谷のウマシカら、裏切り者の皆さんが時に応じて味方になったり敵になったりしながら、話をややこしくする。
基本的な枠組みは、石川五右衛門を潰すべくやってきた轟天、天地がひっくり返るという風魔の法を奪取せんとするばってん不知火、なんとなーく嫌な予感がしてばってん不知火や風魔を阻止せんと動く五右衛門、ということでいいのだと思う。
五右衛門チームには松雪泰子演じる眞砂のお竜が、轟天チームには賀来賢人演じるアンドリュー(公演中、名前が途中から何故かアンディに変わっていたのはご愛敬、だと思われる)がいて、爽やかさと華を添えている。
松雪泰子を見ていると、立ち姿が綺麗な人っていいなぁと思う。私は舞台の役者さんは声だと思っているけれど、松雪泰子に限っては、立ち姿で舞台にいるように思う。
「話をややこしくする」と言えば、風魔の秘文書とやらを呑み込んでしまった轟天と、客席と自分が背負ってる風車を回して発電し、電撃攻撃をかけるばってん不知火と、その二つが合わさって、マローネと五右衛門の心と体が入れ替わってしまうというオマケもついている。
古田新太がゴテゴテきらきらのドレスを着、高田聖子が真っ赤な着流し姿になり、ファンサービス度満点である。
普段の新感線だったら、これだけ材料が揃えば、何だかんだ言って伏線の全てを回収して大団円で終わるところだと思うのだけれど、今回はどうも「全ての謎が解けた!」という感じにならなかったのが、私としては欲求不満である。
結局のところ、風魔の天地をひっくり返す法というのは、人の心と体を入れ替える法ということだったのか、というところからしてどうも確信が持てない私が言うのも何だけれど、結局のところ、その「秘文書」というものが何だったのか、ばってん不知火は何故それを狙っていたのか、その辺りのことがどうも放り投げられたままのような気がしてしまう。
それはそれとして、轟天がブラジャーとパンティを身につけてパワーアップしたり、五右衛門が大泥棒の面目躍如の変装(というか変身)をしたりといったお約束を果たしつつ、最後は、「ブラックゴーモンの幹部の先祖は石川五右衛門」という当初設定が大嘘で、池田成志演じるインターポールの長官が実はマローネの子孫でありかつブラックゴーモンの幹部で、彼が己の先祖の復讐のために轟天に大嘘をついて過去に送り込んだということが明かされ、大立ち回りで幕となった。
「裏切る人々」というのも、この舞台では既に「お約束」であり「芸」である。
私はもっともっとギュっと詰め込まれて張り巡らされた伏線が全回収されてスッキリ、カタルシスもばっちり味わえるというお芝居が好きだし、新感線の芝居にはそれを求めてしまうけれど、何しろ「まつり」である。
ちょっと緩い感じの大同窓会という感じの舞台をたっぷり楽しんだ。
新感線の舞台を見るといつも、全力で学園祭、という感じがする。
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コメント
叢雲乃飜さま、コメントありがとうございます&初めまして、ですよね?
そして、教えていただいてありがとうございます。
アンディがアンドリューの愛称だったなんて、教えていただくまで全く判っていませんでした。感謝です。
でもでも、突然に愛称呼びにするのは止めて欲しい、と往生際悪く思う私であります・・・。
これを機会に、またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2015.09.02 22:46
こんにちは(*゜▽゜)ノ
フランス名のアンドリューを愛称で呼ぶとアンディと呼ぶんです。
因みにスイスはフランスとドイツ・イタリア間に有る為、言葉も名前もかなりチャンポン状態でして、今は亡きK1ファイターアンディ・フグは名前がフランス名名字がドイツ名とまぁ物凄い名前になっています。
投稿: 叢雲乃飜 | 2015.09.02 11:18
アンソニーさま、コメントありがとうございます。
そして、お気遣い感謝です。
まだ咳が止まらない状況でして、なかなか観劇には行きにくいなぁというところです。
早く治さなければ! と思っております。
いつも新感線の舞台はお祭りですが、今回は特に「お祭り」でしたよね。
アンソニーさんのコメントを拝読して、なるほど、五右衛門のカッコいいシーンがあんまりなかったから消化不良なのかも、と思いました。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2015.08.24 22:28
姫林檎様、ご無沙汰しております。
体調はいかがですか?
先週観てきました。
私も細かい部分についてはちょっと消化不良でしたがお祭りだからまぁいいかと思ってました。
池田さんが随分頑張ってたのと、橋本さんの顔がもはや顔芸で、見てるだけで笑ってしまいそれで満足しちゃいました(笑)
個人的には古田さん扮する五右衛門にもっと暴れて欲しかったのでマローネになっちゃったのは残念でした。
投稿: アンソニー | 2015.08.24 00:44