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2015.11.21

「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」に行く

 2015年11月21日、ぽっかりと時間が空いたので、東京都美術館で開催されている、マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展に行って来た。
 混雑していることは予想ができたので、せめて閉館ギリギリに行こうと16時に美術館に入った。流石に入場制限は行っていなかったけれどそれでも大混雑していて、「会場内は混雑しています」という貼り紙があったり、入場の際に「閉館まで十分な時間がありますが、混雑していますので、時間に余裕をもってご覧ください」といった矛盾しているような気もするアナウンスがされたりしていた。

 せっかくなら「印象 日の出」が出展されている期間に行きたかったのだけれど、うっかり行きそびれてしまったのだから仕方がない。
 逆に言うと、「印象 日の出」が見られないのに、なお、これだけの人出があることに驚いた。
 自分も含め、日本人は印象派が好きだなぁと思う。そして、実際に見ていると、何だか近しいものを感じるのだ。

 モネ展は、「家族の肖像」と題した、本人や家族の肖像画から始まった。
 モネといえば睡蓮、モネといえば風景画というイメージが強いし、実際にそう沢山の肖像画を残した訳ではなさそうだ。
 そもそも、モネ展は、友人であったルノアールの描いたモネ夫妻の絵から始まっている。
 そして、モネが描いた息子達の絵へと繋がる。長男の絵の方が多いという説明だったけれど、次男の絵はどうやら出展されている2歳と3歳と5歳(だったと思うけれどちょっと違うかも)の3枚しか描いてなさそうで、どれだけ人物画に関心がなかったんだろうと思う。
 やっぱり小さいぷくぷくした頃の絵が可愛いなぁと思う。

 モネは、この頃の画家としてはかなり珍しいのではないかと思うのだけれど、生前に「成功していた」らしい。
 次の「モティーフの狩人 1」では、旅先の景色を描いた絵たちが集められている。「絵を描くために旅する」ことができたのだから、やはり相当に裕福になったんだろうと思う。
 また、生活に困っていなかったからこそ、自分の描いた絵を手元に残せたのだし、その絵を引き継いだ次男が美術館にコレクションを寄贈したからこそ、こうしてまとまった形でモネの絵を見ることができるのだ。

 もっとも、モネ展は本当に混雑していて、肖像画から風景画に移ったこのコーナーはことさらに混雑していたので、実はあまりじっくりと見ることはできなかった。
 三連休の初日に行くのはやはり無謀だったかも知れない。

 「収集家としてのモネ」では、モネが集めた、尊敬する画家たちの絵が展示されている。
 しつこいようだけれど、こうして同時代の画家の描いた絵を集められるのだから、やはりモネは裕福な暮らしをしていたんだろうと思う。
 収集するのはいいとして、これらの絵をどうしていたんだろうと思う。ずらっとコレクションを飾る部屋があったのか、日々気に入った絵を掛け替えていたのか。
 そんなことを考えながら、ぼんやりと眺めてしまった。

 「若き日のモネ」では、モネが描いた風刺画が並んでいた。
 当時の世相が全く判らないので、どの辺りが「風刺」なのかは判らない。けれど、何かをからかってやろうという感じは伝わってくるし、これらの絵が5000円とか1万円とかで売れていたというのだから凄い。
 そうして、一定の成功を収めていたモネに、線画ではなく風景画を描くようにとアドバイスした人物(ブーダンだったと思ったけどあまり記憶に自信がない)も慧眼だし、そのアドバイスに従って風刺画を売ったお金を元手にパリに勉強に行くモネの思い切りもなかなかだと思う。
 風刺画たちは、かなり精密機械な感じに見える。

 「印象 日の出」はもう帰ってしまったけれど、現在は「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」が展示されている。
 その説明で、「印象 日の出」の評価が高まるのは20世紀後半で、20世紀前半には「ヨーロッパ箸、サン=ラザール駅」の方がずっと高く評価され、傑作とされていたのだと強調されすぎているのが何だか可笑しい。
 風景画といえば風景画だけれど、「自然」を描いているのではない。橋や駅、機関車など人の手が作り出したもので構成されている絵だ。
 絵の手前には盛大に蒸気が上がっている様子が描かれていて、空気や風は描かれていないかもしれないけれど、喧噪が描かれた絵という印象が強い。

 この後は、私のイメージする「モネ」っぽい絵が続く。
 要するに風景画・油絵のコーナーだ。
 「モティーフの狩人 2 ノルマンディーの風景」ということで、しょっちゅう訪れて絵を描いていたらしいノルマンディー地方にスポットが当てられている。
 中でも「プールヴィルの海岸 日没」というタイトルの絵が印象に残った。タイトルのとおり、夕日が海に映えていて、その海面に映った夕日が本当に光っているかのように見えるのが不思議だ。
 何度も絵の前を行ったり来たりして確かめてしまった。

 この絵だけではなく、モネの絵は、光の当て方や、光の当て方と絵を見る角度によって、随分と印象が変わるように思う。
 絵に向かって左側から見た方がくっきりする絵と、右側から見た方がくっきりする絵がある。
 そして、必ずしもくっきりしている方がいいという訳でもない。くっきりしない代わり、絵に元々差していた光が見えたり、淡く霞んだ様子こそを描きたかったのかも知れないと思わせられたりする。

 それは、「睡蓮と花 ジヴェルニーの庭」ではさらに特徴的になる。
 睡蓮の絵は特に、絵に対する光の当て方と、その光の当て方を前提とした見る側の立ち位置によって、絵の中に見えるものが変わって来る。謎だ。
 ただひたすら水面に浮かんだ睡蓮を描いているのに不思議と奥行きを感じる絵がある。そこには水面と睡蓮しかない。その代わり、水面に映った柳の木が描かれたりして、それで画面に変化と奥行きを出している。

 同じ効果を狙っているのだろうに、赤っぽい色調の「睡蓮」では、何だか不思議な感じを受けた。
 何がどう落ち着かないのかずっとためすがめつしていたところ、絵の下半分と上半分とで、絵から推測できる水面の向きが違っているから気持ちが悪いのだということに気がついた。
 気がついてしまうと、余計に気持ちが悪い。
 確か、フェルメールの絵にも遠近法が狂っている絵があると何かで読んだ記憶があるけれど、モネの絵も同じ事が言えるんだろうか。
 どちらにしても、画家たちは「狙って」そうしたに違いないのだ。

 モネは、ジヴェルニーの庭も自分で作り上げたのだそうだ。
 お花の庭と、余りにも有名すぎる水の庭と、その両方を自ら世話していたらしい。
 こんなことを繰り返し書くのは品がないかもと思うけれど、でも、本当に裕福だったんだなぁと思う。パトロンがいて肖像画を描いていたというならまだ判るのだけれど、モネの場合は違う。
 自分の趣味に合わせて庭を造り、その庭を描き、描いた絵は手元に残す。そんなことができた画家が他にいるんだろうか。

 睡蓮が描かれた絵ももちろん印象的で、特に赤い睡蓮が咲いた様子が描かれた絵は、その花が浮き上がってくるようにも見え、気持ち悪いくらいだ。
 気持ち悪いのに、つい目が引き寄せられる感じだ。
 「小舟」という絵は、他のどの絵よりも見る角度によって印象の変わる絵で、誰も乗っていない空っぽの小舟が画面の右上に割と大きく描かれているけれど、その小舟が主役に見える角度はとても狭い。
 その他の大部分の角度から見ると、主役は水の中の藻だ。
 そして、藻を擁した水面が光って水中が見えなかったり、水などないかのように水中の緑の一本一本がくっきり見えたり、絵の様相がころころと変わって行く。
 気になる絵だ。

 「最晩年の作品」では、しだれ柳、日本の橋、バラの小道が繰り返し描かれた様子が窺える。
 いずれもモネの庭にあったモチーフだ。
 そして、それらの絵は、どんどん描き殴ったようになり、塗りたくったようになり、説明では「完成したかどうか判別しがたい」とまで書かれていた。
 でも、少なくとも「バラの小道」の2枚は完成しているよなぁと思う。何故なら、そこにバラの小道が見えたからだ。

 「日本の橋」という太鼓橋のモチーフも繰り返し描かれている。全体が青緑っぽかったり、赤っぽかったり、極彩色だったりする。
 しだれ柳の絵もそうだ。
 晩年に患った白内障の影響についても言及されていた。モネは、晩年に受けた手術後に青味が強く見えるようになり、黄色いガラスを嵌めた眼鏡を使うようになったそうだ。その眼鏡の実物も展示されていた。興味深い。
 しかし、モネは、手元は完全に見えていたという説もあるらしく、どんどん輪郭を失って行き、色彩が派手に強くなった晩年の絵について、白内障だけに原因を探すのはどうなんだろうとも説明書きは言っていた。

 確かに輪郭が失われた物が描かれ、色彩も派手に力強くなり、睡蓮は画面の外に追いやられてしまっている。
 でも、この最晩年の部屋にあった絵たちが一番良かったなぁとも思う。

 混雑していたので見終わるまで1時間半近くかかった。
 本当は空いているときにゆっくりともう一度行きたいけど、なかなか実現しないだろうとも思う。
 モネ展に行って良かったと思う。

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