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2016.02.13

「星屑の町 ~完結篇」を見る

星屑の会「星屑の町 ~完結篇」
作・演出 水谷龍二
出演 大平サブロー/ラサール石井/小宮孝泰/渡辺哲
    でんでん/有薗芳記/菅原大吉/新納敏正/朝倉伸二
    江端英久/星野園美/新垣里沙/戸田恵子
観劇日 2016年2月13日(土曜日)午後1時開演
劇場 本多劇場 I列1番
料金 6000円
上演時間 2時間10分

 ロビーではパンフレット(多分、700円だったと思う)が販売されていた。

 本多劇場の客席の椅子が昨年8月に新調されたということに、今日になって気がついた。少なくとも昨年末には行っているのに不明の限りである。

 ネタバレありの感想は以下に。

 石井光三オフィスの公式Webサイト内、「星屑の町 ~完結篇」のページはこちら。

 星屑の町シリーズは絶対に見た記憶があるのだけれど、今回が第7弾だそうで、果たして6作のうちのいつの作品を見たのか全く記憶にないところが申し訳ない。
 かすかに記憶に残っているのが、有薗芳記演じるごろう(配役表がなく、パンフレットを購入しなかったので役名の字が分からない・・・。)がとにかくトラブルメーカーだったことだけだ。
 前回公演が8年前のコマ劇場公演だということだったので、それを見ていないことは確実だ。ということは10年ぶり以上ということになる。

 幕開けはというか、幕を下ろしたままのその前で、山田修とハローナイツのステージで始まった。
 ムード歌謡というらしいけれど、要するに「内山田洋とクールファイブ」のイメージである。太平サブロー演じるしんちゃんがボーカルを務め、戸田恵子も歌い、デュエットまでする。
 初っぱなからサービス満点だ。掴みは盤石といったところである。
 そして、幕が開き、今のステージはごろうが見ていた夢であることが分かる。掴みは盤石の上に、切ない始まりだ。

 舞台は函館の潰れてしまったキャバレーで、そこに、すでに解散した(らしい)山田修とハローナイツの面々が集まってくる。
 このキャバレーの新オーナーに招かれ、その新オーナーだけを観客に一夜限りの復活公演を行うという設定のようだ。
 星野園美演じるママさんや、とにかく公演ができるように舞台を整えるよう頼まれたらしい便利屋の二人、オーナーの娘で歌手志望ということになっているらしい新垣里沙演じるまりこや、社長命令で彼女のマネージャーを務めているらしいスーツ姿の男など、役者は揃っているという感じだ。

 一夜限りの復活公演のために久しぶりに集まった面々は、なかなか現れないごろうを心配しつつ、近況報告や歌のレッスンに余念がない。
 ついでに、ボーカル同士で結婚していたしんちゃんと戸田恵子演じるキティの仲がどうも不穏だったり、そのキティにラサール石井演じるいっちゃんが迫っていたり、カラオケスナックを経営している者あり、学習塾講師をしている者ありで、今は日本全国バラバラに暮らしているらしい。
 関西でMCで活躍しているらしいしんちゃんがどうやら出世頭のようだ。
 ほとんどのメンバーが60歳を超えつつ、「落ち着いた老後」といった雰囲気の者はいないらしい。

 前座を務めるオーナーの娘はどうやら歌手にはならずに父親に内緒でパリに一人で行こうとしているらしいし、いっちゃんはしんちゃんに借金があるようだし、ごろうはひたすら彼らから逃げ回ってでもこのキャバレーで一人練習に励んでいるし、「福島で日雇いをしている」と言うごろうをメンバーは原発で働いているのではないかと心配しているし、モメごとの種を様々抱えつつ、しかし久々の再会に盛り上がっているようだ。
 最初は「緩いなぁ」と思って見ていたけれど、気がついたらこのダメダメなおじさん達の世界にどっぷりはまっていた。

 ごろうが発見され具合が悪そうな様子に心配されたり、前夜祭と銘打って町に繰り出したり、いっちゃんがキティに寄りを戻そうと迫ったり、しかし、しんちゃんとキティの寄りが戻ったり、ごろうはにしやんに相変わらず冷たく邪険にしていたり、まりこに便利屋の照明担当の男がダメ出しをしたり、小さいモメごとが次々と起こり、不穏な空気が漂い、しかしその度に何となく誤魔化したり正面切って諭す者がいたりで、何とか沈没しそうになりつつも進んでいる船、という風情の面々だ。

 しんちゃんが仕事の都合で早めに大阪に戻らなくてはならなくなり、何とか開演を早められないかと言うと、たった一人の観客であるオーナーが来られないことになったと告げられ、しかし、そこでその「オーナー」というのが、山田修とハローナイツの面々の中でも一番冴えない感じだったにしやんであることがひょんなことでバレてしまう。
 ただ皆で集まってもう一度ステージで歌いたかったけど、自分が言い出したんじゃ誰も集まってくれないからと言うにしやんに、ごろうは激高してしんちゃんに「一緒に帰ろう」と言うけれど、しんちゃんは動こうとしない。

 もう本当に上手く出来てるなぁと思う。
 ゆるゆるヒヤヒヤにこにこさせ、歌も聴かせてくれるし、漫才も見せてくれる。あらゆる手段を駆使して客席を楽しませてくれ、昭和の雰囲気を満喫させてくれ、その上に用意されたどんでん返しである。
 上手い。
 さらに、激高したごろうが倒れてしまい、もしやと思わせたところで、ステージが始まるという展開である。
 女二人がメインボーカルと取り、しんちゃんは大阪には帰らずにコーラスに入っている。
 この女二人のデュエットがまた良かった。迫力である。

 ごろうは、放射線の影響で体調が悪かったのではなく肝臓が悪くて倒れたらしい。それが分かって一同がほっとしたところで、ごろうも加わり、ミラーボールも回り、雪も降る中でアンコールで「星屑の町」が歌われる。
 最後に、しんちゃんが歌い上げようというところでプツリと音が消え、照明が落とされる。
 何? と思っていると照明が点き、出演者一同が横一列に並んでいて終演と分かった。
 いや、歌い上げきっても良かったんじゃないかと思うけれど、この「おや」と思わせる終わり方も多分狙いだったと思う。

 カーテンコールの挨拶まで楽しく、星屑の会の世界を堪能した。
 芸達者なおじさんたちって素晴らしい。
 完結編ではあるけれど、10年後にまた星屑の町を上演する予定だそうで、そちらも楽しみである。

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