「逆鱗」を見る
NODA MAP「逆鱗」
作・演出 野田秀樹
出演 松たか子/瑛太/井上真央/阿部サダヲ
池田成志/満島真之介/銀粉蝶/野田秀樹
秋草瑠衣子/秋山遊楽/石川朝日/石川詩織
石橋静河/伊藤壮太郎/大石貴也/大西ユースケ
織田圭祐/川原田樹/菊沢将憲/黒瀧保士
近藤彩香/指出瑞貴/末冨真由/竹川絵美夏
手代木花野/中村梨那/那海/野口卓磨
的場祐太/柳生拓哉/吉田朋弘
観劇日 2016年2月27日(土曜日)午後2時開演
劇場 東京芸術劇場中劇場 1階LB列12番
料金 9800円
上演時間 2時間5分
ロビーではパンフレット(1000円)が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
1月30日に続いて、2回目の観劇である。
ネタばれの状態で見たことになる。お話の行き先を知っている状態で見て、実は意外と知らずに見たときと印象が変わらないことに逆に驚いた。
** 本当にネタバレなので改行 **
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** 改行はここまで **
松たか子演じる人魚一人が舞台に登場し、彼女のモノローグからこのお芝居は始まる。
彼女は、知らずに見ていれば「人魚」としていわば幻想やイメージを語っているように聞こえるけれど、この段階からすでにお話の行き着く先である彼女の正体「回天」としてのモノローグにもなっている。
それを、何も知らないままこのお芝居を見始めて、見終わったときにこのモノローグを思い出して「やっぱり」と思うのは無理だよ! と思う。その必要がそもそもないのかも知れないけれど、物語を知っていて見ることが前提なのか、気付かれなくても必要な仕掛けなのか、何だかよく判らなくなってしまった。
松たか子演じる人魚や、野田秀樹と井上真央がコンビで演じる人魚学者、池田成志演じる「人魚学」のスポンサーにして人魚を捕まえる潜水夫たちの上司、阿部サダヲ・瑛太・満島真之介らが演じる潜水夫、銀粉蝶演じる人魚たちの母にして「子供に先立たれる」母など、前半はひたすら断片が散りばめられて行く。
「人魚を捕まえて、人魚ショーを水族館で実施する」という目的に向かっているようでいて、実はひたすら拡散しているような感じだったのだと改めて思った。
しかし、人魚の正体を知ってから見ると、あぁ、ここでこんなことを言っていたんだ、すでにここでこんなことが示唆されていたんだ、と常に思いながら見ることになる。
それは、戯曲の緻密さを再確認するような感じで、でももしかしたらそれは観劇の王道からは外れているのかも知れないとも思う。ますますよく判らない。
ただ、最初に見たときにも「エッグが同じように物語が進んだから、逆鱗が回天の話であっても驚かない」と思ったように、扱っているテーマといい、物語全体の構造といい、「エッグ」と「逆鱗」はとても似ている。
本当はさらにその裏というか奥があるのだろうと思わせつつ、「逆鱗」では、井上真央演じる「ザコ」がただ自分の研究成果を試したいが故に戦争を起こさせたという設定になっている。
最初に見たときは、ザコがそこまで仕組んだ側にいるように受け取っていなかったので、ちょっと意外に感じた。
自分の受け取る力を無視して、もしかして台本か演出か演技が変わったのかしらと勝手なことを思ったくらいだ。
「鰯」はただ踏みにじられる利用される人々を象徴していたのか、「逆鱗」というタイトルになったのは「人間魚雷回天」をローマ字で表記してできたアナグラムのためだけなのか、阿部サダヲ演じる回天に出撃命令を直接下す上官に人の心を読む力が与えられていたのは何故なのか。
2回見ても、何故なんだろうと思うことだけが増えたように思う。
随分と「間」を貯めるようになったなという印象を受けていたけれど、幕が降りてみると上演時間は前回見たときよりも短くなっていた。全体のテンポがよくなった分、「間」の効果がより強く感じられるようになったのかも知れない。
舞台の前半、瑛太演じる電報配達人は、「おーい!」ともの凄く澄んだ声と邪気のない調子で、沖を行く、彼にだけ見えている船に向けて叫び、手を振る。
そして、舞台の最後、瑛太演じる回天の搭乗員は、海底に沈んだ回天の中で脱出することもできずに、「おーい」と唸るように抗議の声(と聞こえた)をあげる。
舞台の前半と後半で、つながっていたり対比があったりする。
その物語の構造を明かすのは、松たか子が回天として語る声だ。
しなやかに舞台を走り回るその身体の動きが印象に残っているけれど、やっぱり松たか子の最大の武器は声だな、役者さんの最大の武器は声だなと、自分の勝手な持論を再確認した。
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