「グランドホテル」を見る
ミュージカル「グランドホテル」
演出 トム・サザーランド
脚本 ルーサー・ディヴィス
作詞・作曲 ロバート・ライト&ジョージ・フォレスト
追加作詞・作曲 モーリー・イェストン
出演
Red team
成河/伊礼彼方/吉原光夫/真野恵里菜
藤岡正明/味方良介/木内健人/大山真志
金すんら/友石竜也/青山航士/杉尾真
新井俊一/真瀬はるか/吉田玲菜/天野朋子
岡本華奈/湖月わたる/土居裕子/佐山陽規
草刈民代 ほか
観劇日 2016年4月23日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 赤坂ACTシアター 1階N列16番
料金12000円
上演時間 2時間5分
ロビーではパンフレットや、この日の夜に上演されるGREENチームのチケットや、千秋楽公演のチケットなどが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
特に予習をしないまま観に行ったので、実は、GREENチームとREDチームでエンディングが違うということも、見終わって帰宅してから知った。
これは余りにも予習しなさすぎというものだ。
さらに、ホテルの支配人が舞台に登場したところで、何故か支配人を演じているのが成河だと思い込み、しかし、どう見ても死期迫る会計士であるオットーを演じているのが成河で、一人二役なのか? などと阿呆かつ余計なことを上演中に考える羽目になった。
やはり、多少は予習をした方がいいみたいだ。
タイトルのとおり、舞台はホテルだ。
回り舞台が据えられ、キャットウォークが設けられ、舞台が回りセットが動かされることで、そこはロビーにもダンスホールにもホテルの一室にもなる。
その辺りの場面転換は鮮やかで見事だ。
出演者達が整然と舞台を行き来する間に、場面転換が行われてしまう。
この感想が果たして的を射ているかどうか判らないけれど、見ていて思ったのは、このミュージカルって「キャッツ」みたいだなということだった。
登場人物達が代わる代わる「主役」になり、自分の事情や思いを歌い上げては去って行く。
「キャッツ」との違いは、登場人物達に人間関係があるところだ。
「グランドホテル」では、従業員たちを別にすれば、本来が元々が知り合いではないその日にたまたまそのホテルに宿泊していたというだけの見ず知らずの人々の集まりなのに、いつの間にか、あっちで知り合い、こっちで助けられ、横の繋がりが出来て行く。
もの凄く大ざっぱにまとめると、1928年のベルリンにあるグランドホテルには、戦争で足を傷つけた老医師が泊まっており、彼が眺めたホテルの人間模様が描かれているのだと思う。
彼が歌い上げて紹介するのは、若くてハンサムで貧乏な男爵、死を宣告されたユダヤ人の会計士、ハリウッドスターを夢見るタイピスト、経営する会社の株主から退陣を求められそうな社長、8度目の引退公演中のバレリーナにその付き人達だ。
でも、老医師からは紹介して貰えないけれど、ホテルで働く若者たち、特に妻の出産を控えているコンシェルジェは重要な登場人物だと思う。
会計士のオットーはホテルにやって来たけれど宿泊拒否され、そこに通りかかった男爵の機転で一転無事に宿泊できることになる。
しかしその男爵だってホテルの宿泊費を6ヶ月分も滞納し、ホテルの運転手かつ借金取りから返済を迫られている。それなのに、タイピストのフレムシェンに粉を掛けるヒマがあるのだから大したものではある。
そのフレムシェンはハリウッドスターになる夢を持ちつつ、現実には株主から退陣を迫られそうなプライジング社長に呼ばれたものの、ずっと電話にも出て貰えないでいる。
男爵は、全財産を持って豪遊せんというオットーに投資を唆したりしたもののお金を用立てることはできず、運転手から、8度目の引退公演初日であるグルシンスカヤの部屋から豪華なネックレスを盗み出すよう言われる。
そのネックレスは実は、引退公演が全く上手く行っていないグルシンスカヤがスタッフの給与を捻出するために売り払おうとしているシロモノだ。
なんだかんだ言いつつグルシンスカヤの部屋に侵入した男爵は、公演を途中で放り出してきた彼女に見つかってしまう。「何しに来たの」と言われて「あなたのファンだ」と男爵は答え、それが年の差20歳くらいの恋愛に発展するのだから、相当に強引な展開である。
この辺りからは意外なラストに向けた怒濤の展開で、どうやらグルシンスカヤと男爵は双方「本気」で、グルシンスカヤは踊る気持ちを取り戻し、男爵は自分が盗みに入ったことを認めた上でウィーンに一緒に行くと言う。
とは言うものの気持ちは急に変わっても借金はなくならず、男爵は再び運転手に、今度はプライジング社長の部屋から彼の財布を盗むように言われる。
そのプライジング社長は起死回生の一発逆転を狙った合併に失敗し、ほとんど自棄になってフレムシェンに手を出している。
半ば合意だよねと思わなくもないけれど、そこに義侠心に満ちあふれた男爵が飛び込み、しかし返り討ちにされて死んでしまう。
そもそもフレムシェンがプライジング社長に「買われる」ような真似をしたのは、男爵がグルシンスカヤに夢中で自分をここから連れ出しては貰えないと思ったからじゃないかと考えると、何だかなと思ってしまう。
しかし、こう言っては何だけど、男爵が死に、グルシンスカヤの秘書のラファエラはまた彼女を独占できることになったし、グルシンスカヤも踊る気持ちを取り戻してウィーンに向かうし、フレムシェンとオットーは二人で新天地であるパリに旅立って行くし、結果として思う通りになった人が結構いたんじゃないかという気がする。
ミュージカルはもともとしゃべればいいところを歌ってしまう訳で、同じ時間なら詰め込める展開が少なくなるのは当然のことだ。
その冗長さを豪華さに昇華させることができたミュージカルが傑作と言われるのではないかと思う。
同時に、歌や踊りにどれだけ説得力を持たせることができるかも大きな分かれ目で、少なくとも私には草刈民代の歌が不安定に感じられて、ちょっと残念な部分だった。
あともう一つ残念だと思うことは、見終わった後、つい口ずさんでしまうナンバーがなかったことだ。サビのところだけでも、幕が降りてからも頭の中をぐるぐる曲が回ったりするものだけれど、それが今回はなかった。
それだけ、もしかすると物語性の強いミュージカルだったのかも知れない。
それでもやっぱり豪華で楽しいミュージカルだった。
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