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2016.10.03

「ビアトリクス・ポター 生誕150周年 ピーターラビット展」に行く

 先日、Bunkamura ザ・ミュージアムで2016年10月11日まで開催されているビアトリクス・ポター 生誕150周年 ピーターラビット展に行って来た。
 会期末が近いためか、休日の16時過ぎに行ったところ、流石にチケット売場等に行列はなかったものの、中に入ると「少しずつ動いてご覧ください」と上野動物園のパンダのようなアナウンスが入るくらいの盛況だった。
 流石、ピーターラビット、と思う。

 とは言うものの、実は私はピーターラビットの絵本を読んだことがない。
 絵はあちこちで見ているし、記憶にも残っているけれど、物語は全く知らない。声をかけてもらった友人は、夜中のアニメで見てストーリーを知っていると言う。
 アニメーションになっていることも初めて知った。
 しかし、物語は知らないけれど挿絵は知っているという人は、結構多いのではなかろうか。

 展覧会の中心はやはりピーターラビットで、その「1冊目」については、その私家版の絵本の原画が全て来ていたのではなかろうか。
 私家版は、彩色はされておらず、線画である。
 ピーターラビットの絵本は手のひらサイズで、原画も同じ大きさだ。
 それだから、後方から全体を眺めればいいやという感じにはならず、絵の前を1列になって移動しながら見るという感じになる。

 彩色された絵の方がもちろん親しみがあるけれど、線画もその「可愛らしさ」はすでに存在している。
 というよりも、逆に線画の方が顔が崩れている感じもあって、親しみを感じるくらいだ。
 最初に線画で無彩色だったのは、舞台がキャベツ畑だったりするので、茶色と緑色くらいしか出て来ないから、だったらしい。その理由も何となく可笑しい。

 この展覧会では、絵本の原画を出版が古い順に並べている。
 ピーターラビットのようにほぼ全ての原画が揃っているものは他になかったような気がする。絵本によっては、展示されている原画は2枚というようなものもある。
 彩色されているものもあるし、線画だけのものもある。
 大きくても15cm四方くらいの絵ばかりなので、勢い、顔を近づけてじっくり見ることになる。

 ビアトリクス・ポターという作家自身についても、このピーターラビット展では多く語られている。
 「いいお家」の出身だったようで、それにしても39才で結婚しようとして大反対されたとあって驚いた。その頃の39才といえば、きっと今よりも「結婚しろ」圧力が強かっただろうに、39才になった娘に結婚したいと言われて身分違いを理由に大反対する両親って一体どんな人たちなんだろうと思う。
 ポター自身だって、絵本作家として初出版、初ベストセラーを記録したばかりだったとはいえ、生計を独立できる見込みくらい立っていただろうに、あっさりと両親の反対を袖にするつもりはなかったんだろうか。

 しかも、この最初の結婚は、両親の反対を押し切って婚約したものの、その婚約中に婚約者が亡くなってしまうという結末である。
 婚約者であると同時に、ピーターラビットの絵本を世に出してくれた編集者も失って、ポターは相当にショックだったに違いないと思う。
 でも、逆に、婚約者を失うということがあったからこそ、この後も絵本を書いたし、自らキャラクタービジネスの走りのようなことも行ったし、湖水地方の自然を守るという発想も生まれたし、ビジネスの繋がりから結婚に至った(しかし40代も半ばを過ぎたこの結婚にも両親は大反対だったらしい)のかもと思う。

 年を経るに従って、絵がくっきり細密画風になって行っているようにも思えた。
 絵本の舞台はずっと湖水地方で、絵本すべてでサーガのようになっていることも初めて知った。サーガのようになっているというよりは、スピンオフ作品がたくさんあると言うべきなんだろうか。
 いずれにしても、商売上手ではあると思うし、世界観を守りたかったし好きだったんだろうなとも思う。

 あまり知らないくせに懐かしい気分に浸れる美術展だった。

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コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。
 そして、お返事が遅くなってしまって申し訳ありません。

 みずえさんもピーターラビットに行かれたのですね。
 ほんと、混雑していましたね。
 流石の人気です。
 でも、私もどちらかというと、ミッフィー派です。
 私の年代だと、「ミッフィー」というよりも「うさこちゃん」なのですが(笑)。

 「あの大鴉、さえも」楽しんでいらしてくださいね。
 体調万全で行かれることをお勧めします(笑)。

投稿: 姫林檎 | 2016.10.08 10:21

姫林檎さま

これ、姫林檎さんも行かれたんですね!
私は先月行きました。
土曜日の夕方のせいか、かなり混んでましたよ。
実は私は、うさぎを飼っているほどのうさぎ好きで、こういったキャラクターで言いますと、ミッフィー派(ミッフィー展にも行きました)なのですが、とても見応えありましたね。
ただ、「ピーター・ラビット展」というよりは、「ビアトリクス・ポター展」といった感じでしたけど。
彼女の生涯については何も知りませんでしたので、姫林檎さんもおっしゃっている通り、婚約者等の話はかなり驚きました。
お嬢様育ちのようですが、ビジネスの才覚もありましたし、それこそミッフィーなどに比べると、絵は写実的ですよね。
出口付近のグッズ売り場では、ついいろいろと買い込んでしまいましたよ。
ここは、入場した人しか買えないシステムのようでしたね。
ミッフィー展は、売り場は誰でも入れる仕組みになっていて、それこそ人でごった返していましたが、その方が儲かるんじゃないかと、下世話なことを考えてしまいました。

ところで、「あの大鴉、さえも」ご覧になったんですね。
私は19日に観ます。
観終わったら、ブログを拝見させていただきますね。

投稿: みずえ | 2016.10.04 14:42

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