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2016.10.08

「桐一葉」を見る

花組芝居「桐一葉」
原作 坪内逍遥
脚本・演出 加納幸和
出演 加納幸和/原川浩明/山下禎啓/桂憲一
    八代進一/大井靖彦/北沢洋/横道毅
    秋葉陽司/松原綾央/磯村智彦/小林大介
    美斉津恵友/谷山知宏/丸川敬之/二瓶拓也/押田健史
観劇日 2016年10月8日(土曜日)午後1時開演
劇場 あうるすぽっと D列21番
上演時間 2時間50分(10分の休憩あり)
料金 5800円
 
 ロビーではパンフレット(1000円)や、前回公演の生写真等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 花組芝居の公式Webサイトはこちら。

 この「桐一葉」は歌舞伎の演目で、通しで上演されるのは40年ぶりくらいらしい。
 正確には覚えていないけれど、カーテンコールで加納幸和が「歌舞伎でやらないので我々で演りました」というようなことを言っていたと思う。
 そんな訳で、台詞もかなり歌舞伎に近い。
 というか、ところどころで判りやすくするため、あるいは演出として、現代日本語に近い台詞も入っていたけれど、全体としては「歌舞伎の形」での台詞がメインだったのではないかと思う。

 そうなると、素養のない私にはかなり辛い。
 「うーん、何を言っているのか判らないよ」と思いながら見ているところも結構あったと思う。
 主人公が「真田丸」にも登場している片桐且元で、ロビーにはその「真田丸」で片桐且元を演じている小林隆と、花組芝居の植本潤のツーショットの写真が飾られていたりした。
 植本潤は物販を担当していて、「本式の時代ものなのに開演直前に普通の格好でロビーにいても大丈夫なのか?」と思ったら、今回は出演していなかった。残念である。

 主人公である筈の片桐且元は、芝居が始まってかなり長い間登場しない。
 何しろ、幕が開いたその時点で、片桐且元は江戸(駿府だったかも)に行き、「君臣豊楽国家安康」の銘に文句を付けてきた徳川家康との交渉に当たっており、この芝居の舞台は一貫して大阪城とその周辺だったのだ。
 徳川家康が銘にケチを付けてきた時点から、大阪冬の陣開戦直前までが描かれていて、ほぼ時系列に沿って話が進む。でも、時々、淀殿が見た夢等々で過去のシーンが挿入されて、それがあまり夢っぽくないものだから、少し混乱してしまった。

 秀頼は「いい人だけど気弱なマザコン」、淀殿は「ヒステリックで権高な女」、大野治長らは「豊臣家の中での権力争いに久久として大勢が見えていない小悪党」、大蔵卿の局ら淀殿の取り巻きも「淀殿のご機嫌だけを気にしている小悪党の仲間」という感じで描かれている。
 一方の片桐且元は、大局を見て一番豊臣家に有利な状況を作ろうとしている忠臣かつ大人物として描かれていて、「真田丸」を見ていると違和感がありまくりである。
 この「桐一葉」という演目を書いた人は、どれだけ片桐且元が好きだったんだろうと思う。
 全体として、「片桐且元の名誉挽回」を狙っているように感じられた。

 さて、ここで描かれた片桐且元やその他の登場人物たちの「人物」がどこまで本当だったのか、史実に近いのかなどということは、今さら判りようもない。
 でも、登場人物達の関係はこの通りだったのかといえば、多分、確認できることばかりではないと思う。
 それでも、「歌舞伎」「ネオ歌舞伎」という看板があると、その「嘘」がどうでもいいことのように思えてくるから不思議である。
 
 セットは柱と欄干だけがあって、襖の開け閉めや衝立のあるなし等々で場面転換をさせる。
 場面が変わったことは判っても、「どこに変わったのか」はちょっと判りにくい。でもまぁ、前のシーンとは場所が違っているのだということが判ればいいのかも知れない。
 役者さんたちは白塗りだったり赤塗りだったりするので、ときどき、見分けがつかなくなる。一人何役もやっていたりするから、尚更「誰だっけ?」という感じになる。
 そういうお客さんが多かったのか、ロビーには、役者さん謹製の「人物関係図」が張り出されていた。

 大阪城が主な舞台だから、登場人物たちが着ている着物も豪華である。
 何しろお金が有り余っていたお城だし、人々である。
 それに、女性の登場人物が多い。侍の代わりに腰元たちが大勢出てくる。
 そうなると、やはり衣裳に目が行ってしまう。片桐且元も立派かつ派手かつ高そうな衣裳だったし、そもそも、どんな身分の登場人物が出ようと、時代物というのは衣装代が高く付くだろうと思う。
 たまたま、前の日に「劇団の経営」「劇団の経理」みたいなことを人と話したところだったので、豪華な衣裳を楽しむ前に「制作費が高かったんだろうなぁ」などと考えてしまった。

 歴史物だし、落ちがあるような話でもない。
 片桐且元の娘が自害してしまうという悲劇が最後の方に用意されている(という風に感じられる)けれど、大どんでん返しとかそういうことでもない。
 片桐且元が粛正されそうになって大阪城を退去し、娘の許嫁だった木村某に大阪城の今後を託してその場を去るという場面で終わる。
 そこには、意外なくらい「死者」の影が濃く出ている。
 大坂冬の陣は、始まる前から波乱だし、大阪城内は壊れていたんだなと思う。

 馴染みの題材とはいえ、あまり馴染みのない登場人物もいるし、慣れない私としてはもっとかみ砕いてもっと現代風に開いてあると有り難かったなと思う。
 でも、そんな願いは我が儘だということも承知していて、花組芝居の正統ネオ歌舞伎を久々に見たな、堪能したなと思った。

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コメント

 みき様、コメントありがとうございます。

 はい、あうるすぽっとに行っておりました。
 ロビーには、大河ドラマの扮装をした(という状態だったような気がする)小林隆さんと植本潤さんのツーショット写真が飾られておりましたですよ。

 植本潤さんご本人も物販を担当されておられました。
 あの植本潤さんと、真田丸の植本潤さんが同一人物だなんて! という感じでした。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2016.10.10 22:41

姫林檎さまはそちらでしたか!同じ時間、私は隣のサンシャイン劇場でタクフェス観劇していました。
今日の「真田丸」では植本潤さん怪演でしたね~。「ぼんくら」の時の気のいい役とは180度違って楽しませてもらいました。

投稿: みき | 2016.10.09 22:46

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