「デトロイト美術館展」に行く
先日、上野の森美術館で2017年1月21日まで開催されているデトロイト美術館展に行って来た。
上野駅の公園口を出たところの混雑振りにどうしようかと思ったけれど、東京都立美術館のゴッホとゴーギャンに向かった人が多かったようで、上野の森美術館方面はそれほど人が流れていなくてほっとした。
それでも、絵の前に常に数人がいて、順番にじりじりと歩いて行かなければ最前列で見ることは難しい、というくらいの混雑ぶりだった。
モネ、ドガ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、マティス、モディリアーニ、ピカソが揃い踏みというところが最大の売りの美術館展で、しかし、上野の森美術館だからそれほど広くはなく、出展された作品数も50点強だからそれほど多くはない。
しかし、美術展というのは何故か広かろうが狭かろうが、作品数が多かろうが少なかろうが、概ね1時間で見終わることになっているのが不思議である。
今回も、母と二人、1時間弱で見て回った。
時代順に展示されていたようで、第1章は印象派だった。
いきなりボトルネックだけれど、逆に「これだけの有名作品が続く」という期待を抱かせるという意味では正しい展示方法なのかも知れない。
ドガの踊り子たちを描いた絵や、モネのグラジオラスの花が満開の花壇を散歩している日傘をさした女性の絵など、「どこかで見たような気がする」絵が飾られている。
ぶかぶかの道化服を着込んだ男の子を描いたルノワールの絵もなかなか可愛い。
そして、この絵画展の最大の特徴は、多分、全ての絵に「解説」が付けられていたことだと思う。
それほど美術展に行く訳でもないので曖昧な記憶だけれど、1枚残らず全ての絵に解説のある美術展というのは意外と少ないのではなかろうか。
解説のプレートに近づいて読み、少し離れて絵全体を見る。
もう少し空いていると、様々な角度や距離から見られていいのだけれど、仕方がない。
ドガの踊り子のといえばパステルというイメージだけれど、今回出展されていた絵は油絵だった。
何とも全体的に渋い色合いである。
この美術展では、「構図が写真的」といった感じの解説がいくつかあって、ドガの絵には特にそうした言及はなかったけれど、写真的といえばこの絵が一番写真的じゃないかしらと思った。
もちろん、決して写実的な絵ではない。
第2章は「ポスト印象派」で、しかし、そう名乗った画家たちが居たわけではないという説明に納得である。
中でもゴッホの絵は別格扱いで、小さめの一つの部屋にゴッホの絵が2点だけ飾られるという豪華さである。
麦わら帽子を被った自画像は、ぐるりと半円状に回ってみたところ、どの位置から見ても絵の中のゴッホと目が合う不思議さだ。
ゴーギャンの自画像も同じく、一方向を見ているように思えるのに、どの位置から見ても目が合っているような気がする。
舞台で役者さんと「目が合った!」と思っても、同じような錯覚なのかもと思ったりする。
20世紀のドイツ絵画と銘打った3章は、何だかこれまでと毛色の違う感じだった。
原色の絵の具を力強く強引に振り回している感じの絵ばかりだ。そこに「重厚さ」のようなものはなく、力強さと強引さばかりが印象に残る。
20世紀といえば、ほんの20年前くらいである。120年前も20世紀だ。
「ドイツ」という国の世相と困難さが絵に如実に反映されているような気がした。穏やかさとは無縁の絵たちだったと思う。
最後の第4章は、20世紀のフランス絵画である。
フランス以外の国々で生まれ育った人々がパリに集まり、パリ派と呼ばれるようになったという。そこにはピカソもいれば、マティスもいる。
マティスの「けしの花」という絵と、ピカソの「アニス酒」という絵が好きだった。
大胆かつ強引なところから、ちょっと知り合いのところに戻れてほっとした、という感じだ。
「けしの花」は、白地に青で模様が描かれた花瓶に大胆にけしの花(私の目にはポピーに見える)が生けられ、その後ろには屏風というか衝立が置かれていて、その衝立の2面の青が印象に残る。
「アニス酒」という絵は、デザイン画のような、コマーシャルのような感じの絵だ。ベタっと濃い色の画面がとにかく印象に残る。
この二つの絵が私の中のベストだったけれど、絵はがきは購入しなかった。
「アニス酒」の方は何故か絵はがきが売っておらず、「けしの花」の方は絵はがきの青の出方が濃すぎるような気がしたからだ。
ちょっと、残念である。
やはり、何だかんだで1時間、楽しんだ。
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コメント
みき様、コメントありがとうございます。
みきさんは、東京都美術館とはしごされたんですね。
ちょっと考えましたが、母と一緒でしたし、意外と美術館って疲れると思っているので(笑)、こちらだけにしました。
そして、行ってから、月曜と火曜なら写真撮影が許可されていることを知りました。
あららと思った次第です。
ゴッホの絵とおっしゃるのは、川に舟がたくさん浮かべてあった絵ですね(タイトル等々、既に思い出せません。)
原田マハさんといえば、デトロイト美術館を題材にした著作がミュージアムショップに並べられていましたね。こちらもタイトル等々、忘れてしまっていますが、読んでみたいなと思ったことでした。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2016.11.23 20:50
こんにちは。
わたしは「ゴッホとゴーギャン展」とハシゴしたので、記憶が混ざってしまいました。
本家のデトロイト美術館が写真撮影OKで、こちらも月曜・火曜だけ撮影できるということだったので火曜日に行ってきました。
でも撮っていると絵に集中できないことに気が付き、途中でやめました。
見たことのないゴッホの絵に出会えて嬉しかったです。
最近原田マハの「暗幕のゲルニカ」を読んだばかりだったので、思わずドラ・マールのポストカードを買ってしまいました。
投稿: みき | 2016.11.23 20:25