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2016.12.24

「移動レストラン ア・ラ・カルト-美味しいものは心を動かすところにある-」を見る

「移動レストラン ア・ラ・カルト-美味しいものは心を動かすところにある- 」
台本 高泉淳子
演出 吉澤耕一
音楽監督 中西俊博
役者 高泉淳子/山本光洋/采澤靖起
出演協力 篠田竜
音楽家 中西俊博(vl)/竹中俊二(g)/ブレント・ナッシー(b)
ゲストミュージシャン パトリック・ヌジェ(acc)
日替わりゲスト 池田鉄洋
観劇日 2016年12月23日(金曜日)午後5時30分開演
劇場 東京芸術劇場 シアターイースト
上演時間 2時間50分
料金 7500円
 
 帰って来たア・ラ・カルト、である。
 今回もロビーでのワイン販売があった。今回はミニボトルで宇野亜喜良さんのオリジナルイラスト付きだった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ア・ラ・カルトの公式WEBサイトはこちら。

 青山円形劇場が閉館し、アンコールと銘打った最終公演に行って以来の「ア・ラ・カルト」である。
 昨年、横浜のライブレストランで開催し、来年1月早々に(多分)同じくMotion Blueで3日間の公演を行うそうだ。行ってみたいけれど、横浜はちょっと遠いんだよなぁと思う。残念。
 今回は東京芸術劇場での公演だったので、もちろん喜々としてチケットを確保した。

 シアターイーストはある程度劇場の形を変えられるようで、今回の公演でも舞台を3方向から客席で囲むように配置されていた。
 舞台自体も低く設置し、前方席に座れば青山円形劇場の頃と同じくらいの舞台との距離感だったと思う。私の席はJ列だったので、ちょっと舞台を遠く感じた。

 あと変わっていたのはミュージシャンとバンドの構成で、ベースのクリス・シルバースタイン氏が出演していなかったのがちょっと(かなり)淋しい。あの何となく愛嬌のあるおじさんが好きだったのになぁと思う。
 そして、ゲストミュージシャンのパトリック・ヌジェ氏がアコーディオン(いや、バンドネオンというのが正しいのか?)奏者であることもあってか、ピアノがバンド編成に入らず、従ってピアニストの出演もない。
 変わってこその舞台だし、ア・ラ・カルトだけれど、やっぱり淋しい感じがしてしまう。

 それはそれとして、ア・ラ・カルトというフォーマットはもちろん健在で、ア・ラ・カルトの楽しさももちろんそのままだ。
 コントラバスとアコーディオンの二人の「外国人奏者」の日本語での会話から始まる。
 オープニングのシーンは、もちろん、高泉淳子演じる女性の一人客がクリスマスのレストランを一人で訪れ、飲み物だけを注文するところから始まる。
 「ア・ラ・カルトでご用意します」のいつもの台詞が入らなかったから、初めて見た人には判りにくかったんじゃないかしらと思う。

 今年の飲み物は、ウィスキーのジンジャーエール割りだった。
 そんな訳で、いつもの「カクテルの名前に関する蘊蓄」はなく、代わりに「しょうがに関する蘊蓄」が女性客の口から語られた。何か可笑しい。
 でも、私もジンジャーシロップを作って家に常備しようかしらと思った。

 高泉淳子演じるタカハシ先輩と、采澤靖起演じるその後輩(名前を忘れた。小田川くんとか小田山くんとかいう役名だったような気がする)が、「フランス料理とワインを嗜む会」にやってくる。
 采澤靖起が端正な顔立ちの若者なのに、思いっきり空気を読めない若者を演じているのが何だか可笑しい。もっとも、タカハシ先輩と山本光洋演じるレストランのウエイターとの、長年の蓄積による微妙なニュアンスを含みまくった会話の空気を読むのは至難の業だ。

 今、これを書いていて気がついたけれど、そういえば、タカハシ先輩のくだりでも、この次の「高泉淳子演じる女性とゲスト演じる男性の恋物語」のパートでも、お料理は全て紹介されていたような気がする。
 いつもは、1コーナーで一つの料理が出されていたような気もするけれど、どうだったろう。
 だから、ア・ラ・カルトでっていういつもの台詞がなかったんだろうか。

 休憩前のコーナーは、そういう訳で、高泉淳子演じる女性と、本日のゲスト池田鉄洋演じる男性との「お見合い」の場面である。
 これまた、ここ数年の定番で、どうやらゲストの方には脚本を覚える時間は与えられず、代わりにメニューに台詞が書かれてアンチョコとなっているらしい。
 ここでゲストが慌て、高泉淳子が「私についてきて!」とどんと構えているのが毎度のことながら可笑しく、果たしてどこまでアドリブなのかしらと思う。
 池田鉄洋は、私が見た回が3公演目だったから、実は覚えていて、アドリブっぽく、メニューを読まなくちゃできないっぽく演技していたんじゃないの? という気もする。

 いずれにしても、このコーナーはハッピーエンドで終わるのがお約束だ。
 そして、休憩に入る。
 ボトルワインのコーナーは今回も盛況だった。休憩をいつもの年の10分より延ばして15分にしたからかも知れない。
 ボトルと紹介されて「ラッパ飲み?」と思った私は阿呆で、小さいプラスチックのカップが付いていた。
 ボトルはお持ち帰りくださいと何度もアナウンスがあった。

 休憩後はこれまたいつもどおり、マダム・ジュジュの登場である。
 今回は、パトリック・ヌジェ氏の歌う「酒は大関」を引き取ってカラオケで歌いながらの登場という斬新さだ。
 そこに、ゲストも歌いながら加わって、テーブルに付いてのおしゃべりが始まる。
 これまた、池田鉄洋は、どこまで素でどこがアドリブでどこが台本通りなのか、今ひとつ掴めない。
 その辺の不思議な感じがア・ラ・カルトの楽しさだし、池田鉄洋のいいところだ。
 もちろん、メルシャンの宣伝も忘れずに実施される。

 続くショウタイムで、池田鉄洋は、赤いひらひらのシャツに黒いパンツ姿で何故か「ワインレッドの心」を熱唱していた。
 可笑しい。
 今回のゲストは全員漏れなく「ワインレッドの心」なのか? と思ってメニューを見たらそうではなく、「*****」と書かれていたから、ゲストによって変わるようだ。そりゃそうだ。
 マダム・ジュジュとの会話で「女装も上手い」ととんでもないことを言っていたから、次の来店時にはぜひドレスで歌っていただきたいものだと思う。

 会話といえば、同じコーナーで高泉淳子が「もうランドセルを背負った小学生はできない」と言っていたのがちょっと残念。
 私はまだまだ山田ノボル少年(だったっけ?)に会いたいと思っているので、ぜひア・ラ・カルトへの再登場を期待したい。

 そしてデザートは高泉淳子と山本光洋演じる年配の男女、というか、おじいちゃんとおばあちゃんの場面だ。
 いつもの年はもっと何人かで集まって楽しくわいわいやっているようだけれど、今年は体調が悪かったり都合が悪かったりで二人だけになってしまったらしい。
 80代くらいの設定かしらという風情で、「友達以上恋人未満」な雰囲気が醸し出されるところが格好いい。
 「プランタンで売っている、毎日一つずつモンブランを買える福袋」が話題になっていて、プランタン銀座のWEBサイトを見たら、お値段はちょっと違うような気がするけれど、本当に12月30日にそういう福袋が売り出されると書いてあってびっくり。

 そして、場面は最初の女性客のところに戻る。
 やっぱりお料理をいただいていたようだ。
 ゲストの池田鉄洋が再登場して、こちらも何となくハッピーエンドである。

 楽しかった!
 来年も、どこかでレストラン ア・ラ・カルトが開店されますように!
 (場所がまだ決まっていないと言っていた。)

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