「サンバイザー兄弟」を見る
大パルコ人3 ステキロックオペラ「サンバイザー兄弟」
作・演出 宮藤官九郎
音楽 上原子友康(怒髪天)
出演】 瑛太/増子直純(怒髪天)/三宅弘城/皆川猿時
清野菜名/少路勇介/よーかいくん/篠原悠伸
上川周作/宮藤官九郎/りょう
観劇日 2016年12月3日(土曜日)午後7時開演
劇場 サンシャイン劇場
上演時間 2時間55分(15分の休憩あり)
料金 9500円
ロビーではパンフレット(1500円)等が販売されていたけれど、意外なくらい、売場が賑わっていなかった。リピーターが多かったんだろうか。
ネタバレありの感想は以下に。
サンバイザー兄弟と名乗る(確か、名乗っていたと思う)瑛太と増子直純演じるヤクザの兄弟が、親分が作った1億円の借金を返し、組を立て直すためにバンドを組んで、ついでに収監中のやりとりからその年の紅白歌合戦出場を目指すという物語である。
ついでに、ヤクザの親分に死なれたその妻が仏門に帰依した挙げ句に何故か東京都知事になってヤクザのペット化条例を施行したり、この妻とサンバイザー兄弟(兄)が不倫してできた娘ヌメリをサンバイザー兄弟(弟)が育てたり、とにかくしっちゃかめっちゃかである。
幕開けから瑛太が一発ギャグをやろうとして外したり、必死に「立ち上がる」よう客を煽ったり、結局誰一人として立ち上がらなかったり、「客いじりなんてやったことないんだ」と言い放ってみたり、もちろんバンドの物語であるからして歌も楽器演奏もあり、ラップもあれば、八百長ボクシングのシーンがあるからボクシングもあるし、ヤクザの物語だから喧嘩のシーンも満載だ。
何故か入浴シーンもあるし、客席には予めサンバイザー(紙製)が配られていて開演前か休憩中に組み立てるように指示されているし、デコトラでの道行きシーンもあるし、クドカンらが何故かホステスも演じているし、歌って踊って3時間近く、ありとあらゆる手練手管が尽くされる。
これはもう、楽しんだもの勝ちの舞台だ。
かなり後方の席だったけれど、何故か舞台を遠く感じない。すぐそこで演技されているような臨場感がある。
その場でナマで舞台を見ているのに臨場感があるとわざわざ書くのも変な感じではあるけれど、本当に不思議なことに舞台を遠く感じない。最初に席に着いたときにはオペラグラスを持って来るべきだったかと思ったけれど、始まってしまえばそんなことは全く思わなかった。
それだけ、役者さんたちの演技が濃く大きいということだと思うけれど、それだけではないという気もする。
そういえば、りょうと清野菜名は、来年の「髑髏城の七人」に出るんだよなぁと思う。
喧嘩のシーンでは清野菜名が動きに動いて男たちをまとめて蹴り倒していて、なるほど、これだけ動けてアクションができるから沙霧役なんだなと妙なところで納得した。
りょうは、前にも舞台を拝見したことがあって口跡のはっきりした聞きやすい台詞だなと思ったことを覚えている。今回の舞台では、歌い、鍵盤も弾き、極道の妻の着物姿も剃髪した尼の姿もポロシャツに白いパンツの選挙運動姿も見せて、こちらも八面六臂の活躍である。
ヤクザものなので当たり前といえば当たり前だけれど、女優はこの二人しか出演しておらず、そしてその女優の少なさを全く感じさせなかった。
私は音楽をほとんど聴かないので、怒髪天の音楽も聴いたことがない。
ボーカルの増子直純がそのままサンバイザー兄弟として歌っているし、この舞台の音楽を作ったのは怒髪天のギタリストの上原子友康だから、使われた楽曲は全て彼らが(作詞は宮藤官九郎がしているような気もするけど)作ったのだと思う。
いかにも怒髪天っぽいのか怒髪天らしからぬテイストだったのかは、そんな訳でよく判らないのだけれど、帰り道にふと、メロディではなくドラムのリズムを口ずさんでいた。不思議だ。
サンバイザー兄弟(兄)が「紅組」として紅白に出場し、それを収監されたサンバイザー兄弟(弟)がテレビで見るというシーンで終わる。
その「歌い上げる」歌が、(プロの歌手に対して失礼な言い方だろうけれど)とにかく上手い。
きっといいことを言っているいい歌なんだと思う。この歌の歌詞に、多分、おふざけは入っていなかったんじゃないかと思う。
けれど、これまた不思議なことに、「きっといいことを歌っている」歌だろうと聴いているときから思っていたのに、何故か全く歌詞が入って来ない。私の耳も相当のひねくれ耳である。
とにかく「いいことを言っている歌」が歌われている、という印象だけが物凄く強く受け付けられた。
配られたサンバイザーは、休憩後割とすぐ、彼らのバンド活動のシーンで「被る」のではなく「立って!」「手に持って振り回して!」という形で使われた。
だったら、サンバイザーじゃなくても良かったのではとか、サンバイザーの形になっていると振り回し辛いよとか、色々と思ったりもしたけれど、意味なくサンバイザー兄弟の物語なのだから仕方がない。というか、ご愛敬である。
この舞台は2033年(だったと思う)の物語で、ヤクザの物語で、暑苦しい兄弟と父親が3人いる高校生の娘の物語で、得道の妻の物語で、歌と踊りと喧嘩と客いじりと演奏とギャグとラップが満載で、まるでお祭りだった。
お祭りの楽しさを堪能した。
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コメント
アンソニーさま、コメントありがとうございます。
そして、アンソニーさんってば何て勘がいいのでしょう!
ご心配いただいたのに、私はすっかり風邪を引き込んでおります。もう3週間くらいすっきりしません。
寄る年波には勝てない・・・。
サンバイザー兄弟、楽しかったですね。
「面白かった」というより「楽しかった」という感じ。
サンバイザー、私も組立の説明が今ひとつ飲み込めず、周りの方の手元をじーっと見て研究しちゃいました(笑)。
もの凄く挙動不審な人間だったかも・・・。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2016.12.05 22:25
姫林檎様、こんばんは。
朝晩の寒暖差にやられてませんかー?
風邪などひかれませんように。
これ、楽しかったですね。
友達としばらく'マジかっ!'と言いあうのが
流行ってました笑
サンバイザーなかなか組み立てられず手こずりました(^_^;)
投稿: アンソニー | 2016.12.05 20:32