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2017.02.18

「お勢登場」を見る

「お勢登場」
作・演出 作・演出:倉持裕
出演 黒木華/片桐はいり/水田航生/川口覚
    粕谷吉洋/千葉雅子/寺十吾/梶原善
観劇日 2017年2月18日(土曜日)午後1時開演
劇場 シアタートラム
上演時間 2時間30分
料金 6800円

 ロビーでパンフレット等の販売があったかどうかすら、チェックしそびれてしまった。
 ネタバレありの感想は以下に。

 世田谷パブリックシアターの公式Webサイト内、「お勢登場」のページはこちら。

 江戸川乱歩の短編8編を組み合わせ、絡み合わせ、1本のお芝居に仕立てたという作品だそうだ。
 しかし、よく考えてみると、私は江戸川乱歩を読んだことがない。小林少年が出てくる少年探偵団シリーズを読んだことがあるくらいだ。いわゆる「怪奇もの」を読んだことがない。江戸川乱歩以外の作家でも、「怪奇もの」と呼ばれるジャンルはほとんど読んでいないと思う。
 なので、勝手に「おどろおどろしい」というイメージだけを持っていた。

 8編の中からタイトルにも選ばれた「お勢登場」という作品が恐らく核になっていたのだと思う。実際に、黒木華演じるお勢がこの舞台の軸の1本になっていたと思う。
 もう1本の軸が、汽車に乗っていた男が持っていた押し絵だ。
 この一人と一つのモチーフをあちこちに登場させることで、パズルを上手く組んでいたと思う。
 片桐はいりと千葉雅子演じる温泉に来た老女二人が昔を語ることでお勢を語り、その温泉宿に音が聞こえてくる汽車の中で、梶原善と寺十吾が押し絵を見ながら感想を語る。
 こういうのも入れ子構造というのだろうか。二重に物語を紡ぐものを用意している。

 舞台は2階建てで組まれていて、1階部分は横に3分割されている、引き出しのように少しだけ高くなった舞台が奥から押し出されてくることで場面転換が図られる。
 暗転のいらない、鮮やかな場面転換だと思う。
 こちらから奥に向かって引き戸を開け、向こうから手前に向かって引き戸を開けることで、「部屋から出て行く」ところと「部屋に入る」ところを別々に見せているのが何だか格好良かった。

 お勢は、悪女ということになるのだと思う。
 着物を着ているときはよく判らなかったけれど、着ていた洋服の柄が昆虫というのが大体不気味である。シルエットは清楚なのにばーんと大きく昆虫柄というのはなかなかインパクトがある。
 お勢は、木馬番の同僚である年配の男を上手く操って色々と買い物をさせたり、年の離れた別の男に嫁いで、息子とかくれんぼをしていた男が長持ちに入ったところを助けずにそのまま閉じ込めて殺してしまう。目の見えない天の邪鬼の男に「本当の危険」を知らせて穴に落とし、下宿屋の大家殺しの犯人を肩代わりさせるために下宿していた女の一人を夢遊病に仕立て上げる。

 とんでもない女な訳だけれど、何というか「妖婦」というイメージではない。
 かといって、強かな悪女という感じでもない。
 時々見せる笑いが不気味な感じを醸し出しているものの、もっとその強かさ、悪さ、艶っぽい感じが強調されていてもいいんじゃないかしらと思う。
 私の勝手なイメージでは、黒木華は「健気」というよりは「強い」女成分の方が勝っているから、それだけでは変身の鮮やかさを楽しめないのだと思う。

 片桐はいりにしても、千葉雅子にしても、もっとインパクトを出そうと思えばいくらでも出せる女優さんで、今回はその得意技をそれぞれ封じて演じているようにも見える。
 それは、梶原善や寺十吾にしても同様だ。もっと振り幅を大きくできるところを抑えているように感じられる。
 もちろん、その振り幅を小さくしているにもかかわらず、数役を演じて、かつそれぞれ確実に演じ分けているのはベテラン勢の技術と力があってこそだ。でも、ここでその振り幅を抑えているのだから、お勢はもっと強烈に造型した方が際立ったのではないかという気がする。

 もう一つ気になったのが、何だか「上手く組み合わせる」ことが目的になってしまっているように感じられたことだ。
 これまた、私の勝手な思い込みの可能性がかなり高いけれど、あまりにも上手く組み上がり過ぎていて、そして超絶技巧で組み上がった構成をまた適材適所の役者さんたちが上手すぎるくらいにこなしているお陰で、逆にそこを目指してお芝居が作られたかのような印象を持ってしまった。
 難しい。

 チラシの写真どおりのイメージで舞台ができあがっていたと思う。
 せっかくの江戸川乱歩だからもっとおどろおどろしくても、もっとえげつなくても良かったんじゃないかと勝手な期待を持ちつつ、気がついたら2時間半を集中し切って見ていた。 

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