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2017.08.19

「プレイヤー」を見る

「プレイヤー」
作 前川知大
演出 長塚圭史
出演 藤原竜也/仲村トオル/成海璃子/シルビア・グラブ
    峯村リエ/高橋努/安井順平/長井短
    本折最強さとし/木場勝己/真飛聖
観劇日 2017年8月19日(土曜日)午後2時開演
劇場 シアターコクーン
上演時間 2時間50分(15分の休憩あり)
料金 10500円
 
 ロビーではパンフレット(1500円)などが販売されていた。
 ネタバレありの感想は以下に。

 シアターコクーンの公式WEBサイト内、「プレイヤー」 の速報ページはこちら。

 多分、イキウメで上演された「プレイヤー」は見ていない。
 今回、イキウメからの出演は安井順平だけだ。
 長塚圭史が演出しているし、前川作品の常連ともいえる仲村トオルが出演している一方で、どんな舞台も自分の色に染めるタイプと言えるだろう藤原竜也も出演している。
 さて、どんな感じの舞台なんだろうと思っていたら、やっぱり、前川作品だった。

 基本的にはSFだと思う。
 冒頭は、ラジオ放送のシーンだ。トキエダという環境保護団体を主催している男は、同時に「サトリオルグ」という瞑想等々を行う団体も主催しており、現役の臨床心理士でもあるという。
 その彼が「アマノマコト」に退行催眠をかけたときのことを語っている。
 失踪した姉の行方を捜して欲しいと、「アマノマコト」の弟が知り合いの刑事に頼む。
 サクライという刑事は、弟の言葉をきっかけに山奥で彼女の遺体を発見する。
 アマノマコトのお通夜で、彼女が助手を務めていた環境保護団体の主宰トキエダと助手のカンザキは、アマノマコトから指名された彼女と親しかった人々を集める。
 集められた人々は、それぞれ「自分の意識がないときにアマノマコトが語っていた言葉を語る」という経験をしている。
 その経験を共有するうちに、トキエダとカンザキの言葉に巻き込まれ、アマノマコトは、過去と未来とが混在し時の概念がない「あちら側」に行った「だけ」であり、アマノマコトの意識は今もこの辺りにいて、「プレイヤー」と呼ばれる人の口を通して自らの意思を語っているのだと考え始める。
 お通夜で集められた人々は、そのままトキエダの主催するセミナーで瞑想を始める。
 サクライの同僚刑事で、アマノマコトの大学時代の友人でラジオ局のパーソナリティを務める女性の恋人でもあるアリマは、サクライと彼女の変化が理解できない。
 アリマは、トキエダとカンザキは自殺幇助の犯罪者だと説く。
 トキエダとカンザキたちは、「人工が増えすぎている」という「環境問題」を解決するために、人々を「あちら側」に送るのだと考え、まずアマノマコトの恋人だった男性で「試す」
 次に「カンザキ」で試し、カンザキは自分があちら側に行くのと同時にアリマを説得しようとする。
 アリマは「これは集団自殺だ」と叫び、トキエダもサクライも「あちら側に行くことで環境問題が解決される」と返す。

 実はここまでの話は、地方都市のとある劇場で上演されようとしている芝居のあらすじだ。
 「プレイヤー」というこの台本を書いた作家はすでに亡くなっており、彼と知り合いだったこの劇場のプロデューサーの女性が、やはり彼と知り合いだった演出家の女性に頼み、この台本を上演しようとしているところだ。
 実はこの「プレイヤー」という作品は未完であるらしい。
 元々、著作権を放棄してネットに公開することを想定しており、誰でもが上演し、誰でもが手を入れられる状態にするつもりだったらしい。
 今回は、稽古をする中でこの作品を「完成」させようとしているようだ。

 この芝居の外側にいるのは、市長、プロデューサー、演出家、演出助手、制作の女性の5名だ。
 しかし、次第に制作の女性は役者として芝居に参加し始め、市長は「イヌ」の着ぐるみを着てイヌの役で出演し、演出家は「アマノマコト」として芝居に参加し始める。
 演出家がアマノマコトを演じることで、芝居と現実がぐんにゃりと混じり始めるように感じられる。

 そして、台本が尽きたその後も、サクライとアリマを演じる役者同士のやりとりが続く。
 アリマはトキエダの挑発に負けて、あるいはアリマをプレイヤーとしたアマノマコトかカンザキとして、トキエダをバットで殴り殺してしまう。
 その様子を「瞑想が下手で死ねない」でまま見ていたサクライは、アリマに「おまえの罪は俺が引き取る」と言う。
 サクライの目論見は、現職刑事の自分が逮捕され、逮捕したアリマが記者会見に臨み、「トキエダを殺した」という強い繋がりを得たアリマの口を通してトキエダにこの状況を語ってもらい、自分たちの思想や現実を大々的に世に訴えようというところにあるのだと語る。

 そこまで語ったところで、「役者」に戻ったサクライを演じていた男が、プロデューサーの女性に「これでいい?」と問い、「この台本をネットにアップして」と頼む。
 サクライをプレイヤーとしているのは、この台本の作者だ。
 満面の笑みを浮かべたプロデューサーにスポットライトが当たり、幕となる。

 凄かった。
 かなり体調不良で見に行ったけれど、芝居を見ている間、その体調の悪さを全く忘れていた。
 芝居の力って何て凄いんだろうと思う。

 私はスピリチュアルな物事全般に縁遠く、あくまでも現実・物理的に捉えているアリマという刑事の方に大きく頷いてシンパシーを感じたし、完全にアリマの立場で芝居を見ていた。
 そしてまた、芝居の外の世界でいうと、いつの間にか虚実ないまぜになってしまった演出家や役者達に違和感を抱いてキョロキョロいっそ挙動不審になってしまった演出助手にももの凄くシンパシーを感じた。こんなコワイ現場に立ち合いたくないよね、と力一杯共感した。

 そして、同時に女の笑顔って怖いよなぁという訳の判らない感想も持った。
 アマノマコトのお通夜で彼女のことを語りましょうと語りかける成海璃子演じるカンザキの満面の笑顔にも、ラストシーンのプロデューサーの笑顔にも、何て女の笑顔って怖いんだろうと思った。
 本当は笑っていない笑顔と、心の底から笑っている笑顔と、どちらも途轍もなく怖い笑顔だった。

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コメント

 アンソニーさま、コメントありがとうございます。

 確かに「プレイヤー」の途中で落ちてしまうと全体を捉えるのがかなり難しいかも・・・。
 惜しかったですね。
 戯曲でどうぞ取り返してくださいね。

 私は相変わらず元気ではありませんが、何とか細々と観劇を続けております。
 昨日は「ワーニャ伯父さん」でした!

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2017.09.18 09:25

姫林檎様、ご無沙汰しております。お元気ですか?

追加公演でチケット取って観に行ったのに途中ちょっとうとうとしてよくわからなかったというお粗末な私。前川さんが台本を公開されたので読もうと思います(^-^;

投稿: アンソニー | 2017.09.17 21:39

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 今のイキウメで「プレイヤー」を上演するとしたら、私はサクライを浜田さん、トキエダを森下さん、安井さんにはアリマさんを演じて欲しいなぁと思いました。
 色々なバージョンがありそうですね。

 ラストシーン、怖かったですね。
 私が主に怖かったのは、峯村さんの笑顔ですけれども。

 「散歩する侵略者」の映画ですよね。
 うーん。私は迷っているうちに公開が終わっているといういつものパターンに陥りそうな予感です。
 見たいんですけれど、見るのが怖いような。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
 

投稿: 姫林檎 | 2017.08.21 23:02

姫林檎さま

私も先週観ました。
前川さんの作品かと思うと、これを今イキウメでやるとしたら、誰がどの役だろう、と考えながら観てしまいました。。
桜井は安井さん、時枝は浜田さんだろうか、なんて。
安井さんは、今回もやはり良かったですね。

劇中劇というのは面白い設定でしたね。
だんだん素がわからなくなってくる。
洗脳というのを目の当たりにしたような気になりました。
ただ、ちょっと安易すぎるとも思ったけど。
それにしても、怖いラストでした。

ところで、「散歩する侵略者」イキウメの公演は観るつもりなんですが、映画版を観るか思案中です。
順番が逆なら良かったのに。
先に舞台を観たかったです。

投稿: みずえ | 2017.08.21 14:29

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