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2017.08.12

「鎌塚氏、腹におさめる」を見る

M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏、腹におさめる」
作・演出 倉持 裕
出演 三宅弘城/二階堂ふみ/眞島秀和/谷田部俊
    玉置孝匡/猫背椿/大堀こういち
観劇日 2017年8月11日(金曜日)午後2時開演
劇場 本多劇場
上演時間 2時間5分
料金 5800円
 
 ロビーではパンフレットやTシャツを販売していた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 M&Oplaysの公式WEBサイト内「鎌塚氏、腹におさめる」のページはこちら。

 「完璧なる執事」鎌塚アカシを主人公とするシリーズの4作目である。
 判りやすく「探偵もの」で、アカシが執事を務める綿小路公爵家の令嬢チタルが「探偵かぶれ」という設定だ。
 何しろオープニングが、彼女が「起きた」と睨んでいるワイン盗難事件について、お嬢様が迷推理を働かせ、お嬢様の迷推理に合わせてアカシたち使用人が事件と経穴編をせっせとでっちあげるというところから始まる。

 「完璧なる執事」と劇中で何度も連呼される割に、今回もアカシはそれほど「完璧」には見えない。
 片桐仁と広岡由里子演じる堂田男爵夫妻やともさかりえ演じる上見ケシキが登場しないのは少し寂しいけれど、堂田男爵家の従者であった筈の宇佐スミキチは健在で、綿小路公爵の義弟である、イヤ〜な感じの鬼集院伯爵にくっついてお屋敷にやってきている。
 公爵と義弟の仲は最悪で、伯爵は自分の姉を公爵が殺したと疑い、その疑いが講じてついには公爵家を破産に追い込もうとしているらしい。

 そんな背景が説明されたところで、公爵が日頃から趣味に使っている離れの、内側から鍵をかけた部屋で背中に包丁を突き立てられて亡くなっているのが発見される。
 警察も捜査に来たものの、チタルは「役に立たない」と追い返してしまい、「ご主人様を守れなかった」とほとんど錯乱していたアカシとともに、公爵を殺した犯人捜しを始める。
 もちろん、容疑者の第一は、鬼集院伯爵だ。

 不思議と癖になるシリーズである。
 シリーズを通してコメディだけれど、お腹がよじれるくらい笑ったとか、笑いっぱなしだったとか、そういうことはなかったと思う。ステレオタイプな登場人物をステレオタイプに動かし、ときにそこから外れることで笑いを取る、というパターンが多いように感じられる。
 これは演じる側観る側も、思いっきりパターンに浸って楽しんじゃった者勝ちという感じがする。
 その中で、今作に今ひとつのめりこめなかったのは、多分、二階堂ふみという女優に対する私のイメージが原因で、どうにも彼女が舞台を楽しんでいるように見えなかったのが残念である。

 不思議と癖になって全シリーズを見ているくせに、どうにも作り込まれた感がないなぁと毎回思っているような気がする。
 探偵もので、しかも「殺人事件」の犯人はおらず、持病の心臓発作で亡くなった公爵を「殺された」かのように見せかけた犯人がいたというどんでん返しがある。公爵が幽霊となって戻って来て、自分を殺しが犯人探しに協力するという設定はともかくとして、凝った筋立てだと思うし、その推理が明かされたときにはびっくりした。
 それなのに、何故か「あぁ、そうだったのか!」というカタルシスがない。
 その推理が明かされたときに、「本当にそれが可能?」「具体的にはどういう順番と手順でやったの?」という疑いのココロが生まれてしまったのが原因かも知れない。

 そして、チタルが子どもの頃に離れの窓から落ちた際、彼女を抱きかかえて運んでくれたのが実は「イヤ〜な」感じで今回彼女が罠に落とそうとした叔父の伯爵だったとか、オープニングで「盗まれた」ことにしていたワイン20本が暖炉の仲に隠されていたとか、細かく伏線を張って回収もしている。
 料理女中と庭師という出来の悪い使用人同士のやりとりなど、小技もかなり効かせている。
 なのにと思いつつ、この緩さが結局楽しくて毎回見に行ってしまうのかもと思った。

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コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 私の記憶もかなり曖昧ですが、三宅さんと玉置さんは必ず、片桐仁さんや広岡由里子さん、ともさかりえさんらは準レギュラーというイメージでしょうか。

 完璧なる執事である鎌塚氏は、完璧であるが故に引く手あまたなのか、毎公演、お仕えするお屋敷が変わっているので(笑)。

 ヒロインが歌うのもお約束のような・・・。
 満島ひかりさんが歌った中森明菜が絶品だったことを覚えています。って、違う歌だったらどうしましょう・・・。

 おっしゃるとおりミステリーではなくお約束を楽しむお芝居なのかも知れません。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2017.08.26 14:11

姫林檎さま

私は昨夜観ました。
このシリーズ、前回から観ており、今回が二作目です。
三宅さん(と玉置さん)以外は、キャストは毎回替わるんでしょうか。

鎌塚氏は、どこに何がいくつ栽培されていて、どの花が何本植えられているかも、全部頭にインプットしているようなところが、「出来た執事」なのではないかと。
そもそも、執事って本物を見たことがないから、何をするのが仕事なのかも、私はよくわかってないのですが。
梯子を使ったトリックだったにしろ、部屋の中であの窓にたどり着くにはいろいろ積み重ねなくてはならず、鎌塚氏たちが入ったときは、そんな形跡がなかったのも私は気になりましたが、そんな深刻なミステリーではないってことですよね。

そしてこのシリーズは、誰かが脈絡なく歌うのがお約束なのかしら。
前回はともさかりえが歌っていましたね……。

投稿: みずえ | 2017.08.24 14:10

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