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2017.10.15

「関数ドミノ」を見る

「関数ドミノ」
作 前川知大
演出 寺十吾
出演 瀬戸康史/柄本時生/小島藤子
    鈴木裕樹/山田悠介/池岡亮介
    八幡みゆき/千葉雅子/勝村政信
観劇日 2017年10月14日(土曜日)午後1時開演
劇場 本多劇場
上演時間 2時間
料金 7500円

 ロビーではパンフレット等が販売されていた、と思う。
 ネタバレありの感想は以下に。

  「関数ドミノ」 の公式WEBサイトはこちら。

 「関数ドミノ」を見るのは2回目だと思っていたら、見終わって自分のブログを見返してみたら、3回目だった。(そのときの感想は、 2009年がこちら 2014年がこちら。)
 毎回のことながら、つくづくと当てにならない私の記憶力である。
 そして、自分の感想を読んでみて、どうやら私の記憶も、今回の上演も、2009年バージョンを元にしているらしいということが判った。

 ストーリーは意外とちゃんと覚えていて、「ドミノ」という言葉の意味はもちろんのこと、瀬戸康史演じる真壁が実は「ドミノ」だったというラストシーンも記憶にあった。
 だから、割と病的な感じを前面に押し出して「この世の中にはドミノという存在がいて、その人がそこはかとなく願っていることが次々と適い、思うような人生を送れる」ということを証明しようとする真壁がとにかく「痛い」感じがした。
 彼が証明しようとしているのは、実はドミノの存在ではなく、そんなドミノが周りにいたことで自分がいかに不幸かつ不運な目に遭ってきたかということなのだから当然だ。

 劇団イキウメでの公演とはやはり印象が全く違う。
 舞台セットや、舞台の使い方は似ている。
 何が違うんだろうと思いながら見ていて、「どこが」とか「どうして」とかは判らないながら、今回の上演の方がウエットな印象が強いことに思い当たった。そもそも「ウエット」という言葉自体が昭和の感じがするけれど、つまりはそういうことだ。
 戯曲や演出は特に時代を限定していないけれど、もしかすると舞台セットにあった電柱が昭和を強調していたのかも知れない。

 「関数ドミノ」とは似ていないと思ったけれど、最近見た「プレイヤー」とは何だか似ていると思った。
 こちらの理由は割と自分でははっきりしていて、「プレイヤー」で成海璃子が演じていたカンザキというキャラクターと、今回の「関数ドミノ」で小島藤子が演じているワタベ(だったと思う)というキャラクターが似ているからだ。
 キャラクターも似ているし、声も似ているし、しゃべり方も似ている。
 とある現象を信じている男がいて、その男の言うことを自分の事情で信じるようになり、いつかその男よりも熱心に考察し熱心に人々に説くようになっている。そして、悪気はない。事務処理能力が高く、場を仕切る能力も高く、常識的。男が説く非現実的な説を信じる人が出てくるのは彼女の存在が大きい。そんなキャラクターだ。

 劇団の公演と、今回のようなプロデュース公演との一番大きな違いは、演じる役者さんの年齢だと思う。
 イキウメは割とばらけている劇団だし、客演を迎えることも多いけれど、それでもやはり同年代の役者が集まり、やりたいと思う芝居の傾向も(多分)似ている役者さんが集まっている。
 しかし、今回のようなプロデュース公演になると、役の年齢に近い役者さんがキャスティングされる。それができるから戯曲を書き換えることもあるのではないかと思う。
 それだけで随分と雰囲気が変わるものだと思う。

 今回の上演でいえば、真壁を診察する精神科医を演じた千葉雅子と、保険調査員ヨコミチを演じた勝村政信の、もちろん演技力だけれど、その年齢にしか出せないだろうリアリティが大きな力になっていると思う。
 この戯曲で、全く「ドミノ」を信じない、信じないというよりは「意味がない」と思っている精神科医と、最初は鼻で笑っていたのにいつの間にか「ドミノがいる」ことを前提にしているかのような言動になって行く保険調査員の存在は大きい。

 さらに、今回の上演では、ヨコミチがワタベに「あなたが何故信じるかの方が疑問だ」と言ったり、ラスト近くで「ドミノ」に会いに行く彼らを「心配だ」とその場に立ち合おうとしたり、真壁に対して「自分は原因と結果を調べるのが仕事だ。」と言い「君がドミノだ」と言い切ったりする。
 「大人が言っている」ということが、反発を招かなかったり、あっさり受け入れられたりという現象に対する説明にも説得力にもなっているような気がした。

 これまでの公演では、どちらかというと真壁たちに「ヒリヒリ」するものを感じていたけれど、今回は完全に精神科医と保険調査員の二人の大人の立場に立って見ていたような気がする。
 思えばこちらも年を取ったものだ。
 そして、それはなかなか楽しいことだと思う。

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コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 はい、2014年の関数ドミノに、みずえさんからコメントをいただいていました。
 そのときも、浜田さんのイケメンぶりについて触れていらっしゃいましたよ。ふふふ。

 演じている役者さんも違いますし、演出家も違いますし、2009年版をベースにしているとはいえ恐らく戯曲も異なっている筈で、でもやっぱり「関数ドミノ」でした。
 今回はご覧になれずに残念でしたが、機会があったら次回はぜひ!

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2017.10.16 22:09

これは観ておりませんが、14年のイキウメ版は観ました。
その際にコメントも入れたと思います。

役者が違うと、随分印象が違うんだな、とこのブログを読んで思いました。
安井さん演じた真壁を、若い瀬戸くんが演ることにまず驚きますね。
余談ですが、安井さんと瀬戸くんは、確か同じ事務所で仲が良く、イキウメの関数ドミノも、瀬戸くんは観たはずです。
安井さんに引きずられないよう自分の世界を確立するのは大変だったのではないでしょうか。
そして森魚が、今回は柄本くん……浜田さんとは、顔の与えるインパクトがだいぶ違いますね(失礼)。
勝村さんの調査員は、さぞ面白かっただろうな、などなど、想像しながら読ませていただきました。

迷った末に観るのをやめたのですが、やっぱり観ればよかった!
ラストも違うなんて……。

でも、このブログで詳細がわかったので良かったです。
ありがとうございました。

投稿: みずえ | 2017.10.16 14:24

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