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劇団☆新感線「髑髏城の七人」 Season風
作　中島かずき
演出　いのうえひでのり
出演　松山ケンイチ／向井理／田中麗奈／橋本じゅん
　　　　山内圭哉／岸井ゆきの／生瀬勝久　ほか
観劇日　2017年9月30日（土曜日）午後0時30分開演
劇場　IHIステージアラウンド東京
上演時間　3時間40分（20分の休憩あり）
料金　13000円
　
　カゼドクロは思っていたよりも楽しめた。

　ネタバレありの感想は以下に。

　「髑髏城の七人」 Season風の公式Webサイトはこちら。

　当たり前だけれど、ストーリーの骨格は同じである。
　ハナドクロでは「髑髏城の七人」のスタンダードを見せ、トリドクロでは歌と踊りを目一杯詰め込んでショーアップ、今回のカゼドクロのポイントは「捨之介と天魔王の一人二役復活」ということになると思う。
　「髑髏城の七人」という物語の力が強いから見ているときはあまり感じなかったけれど、トリドクロでは「全員参加」だった百人斬りがカゼドクロで復活したし、主演の負担がこれほど大きな「髑髏城の七人」は他にないのではないかと思う。

　着流しに戻った捨之介は、タイプとしては「ハナドクロ」に近くて、すぐ沙霧を抱きしめちゃうカゼドクロの捨之介の方が好みだなぁと思う。
　松山ケンイチがこんなに声が出て（もちろんマイクを使っているけれど）、遊び人風が似合って、伝法な口調がハマって、身が軽いとは思わなかった。けど、側転は要らないんじゃないかと思う。着流しだとやりにくそうだし、綺麗に決まらないと逆に心配になる。

　好みのタイプといえば、今回の沙霧も今までで一番好みのタイプだった。
　実は沙霧のキャラだけはこれまでの3公演であまり変えられていないと思う。周りの設定やキャラ立てにバリエーションがあるから「対応」ということでは変化があるけれど、沙霧の設定や性格は多分ほとんど変わっていない。
　その中でも、岸井ゆきのの沙霧が一番冷静な感じがあって、「熊木衆の長」らしさがあって好きだった。目立たないけれどウメガイの使い方も綺麗だったと思う。

　冷静な感じといえば、カゼドクロの極楽大夫は、蘭兵衛に頼り切った感じを出しつつも、その蘭兵衛と天魔王に乗り込まれたときの騒ぎ方が今までよりも抑えられていて、ぜひこの方向で行って貰いたいとエラそうにうんうん頷きながら満足した。
　田中麗奈の極楽大夫は、身長が低い分だけ戦装束になったとき子供っぽくなってしまい見栄えがあまり良くないのが勿体ないと思うけれど、着物を脱ぎ捨てて仲間を守ろうとするシーンが削られた代わりに出血大サービスで足を見せまくりで綺麗だった。

　大夫が「沙霧の気持ちに気付け」と捨之介に繰り返すしーんも、これまでの中で一番淡白で、それを「（沙霧に）刺された傷が痛む」と混ぜ返す捨之介の感じもこなれていて、今回が一番好きなバランスだった。
　しかし、ツキドクロでは沙霧が霧丸になって、捨之介との関係はどういう設定にするんだろう。霧丸が捨之介を髑髏城に救いに行こうという動機とか、最後に金は要らないと去ろうとする捨之介に「城を作ってやる」と追いかける動機とか、「師弟関係」とか「兄を慕う弟」とかそういう感じにするんだろうか。
　そう考えると性別って重要だと思う。
　そして、蘭兵衛が実は女だったという設定は「極」で実現するのかしらとちょっと期待してしまう。

　トリドクロを見た後なので、蘭兵衛が参加する殺陣のシーンがどうしても物足りなく見えてしまう。
　編み笠に刃を仕込んでみたり、演じる向井理の身長を活かした殺陣にしたり、映像を多用したり、総合力でカバーしようという意図が感じられる。それでもやはり、殺陣をしながら頭の中でカウントを取っているのが見えるような気持ちになってしまい、刀よりも鉄砲メインにしちゃうとか大胆に変えた方が良かったんじゃないかしらと勝手に思ってしまった。
　総合力だけど、やっぱり役者さんという生身の人間の持つ力は大きいよと思う。

　あまり新感線に馴染みのない役者さん達が物語を背負う役を演じているせいか、実際のところ、物語だったり観客に何かを気付かせるための台詞は、家康と兵庫がかなり背負っていたような気がする。
　何しろ、幕開けに一人で舞台にいたのは、生瀬勝久演じる家康である。
　そんな「髑髏城の七人」は初めてだ。
　覚えていないところが情けないけれど、他にもいくつか「伏線」を張ったり気付かせたりする台詞を家康が発していたと思う。

　山内圭哉演じる兵庫と橋本じゅん演じる雁鉄齋はもはや鉄板という感じがする。
　二人が絡むシーンはあまりないけれど、それぞれきっちりと笑いと「間」をかっさらって行く。
　兵庫が大夫を好きな感じがあまり出ていなかったのが惜しい。雁鉄齋役はもはやハナトリカゼとそれぞれの公演で演じた役者さん達の競い合いみたいになっているような感じすらある。
　はっちゃけたもん勝ちだ。

　今のところ私の「髑髏城の七人」のベストはアカドクロとカゼドクロでやっぱり争っているのだけれど、「どうなっちゃうのかしら」と勝手に心配していたツキドクロは思いの外たくさん楽しめた。
　踊りが入りつつ歌うシーンはなく、バックにかかった歌を森奈みはるが歌っていたと聞いて納得した。彼女もどこかで出演してくれれば良かったのになぁと思う。
　やっぱり、全公演、見たいものである。