「髑髏城の七人」 Season月 下弦の月を見る
劇団☆新感線「髑髏城の七人」 Season月 下弦の月
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 宮野真守/鈴木拡樹/廣瀬智紀/木村了
松岡広大/中村まこと/羽野晶紀/千葉哲也 ほか
観劇日 2017年12月16日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 IHIステージアラウンド東京
料金 13000円
上演時間 3時間50分(20分の休憩あり)
花鳥風月の4シーズンの「髑髏城の七人」のうち、4シーズン目の「月」の「下弦の月」を見た。
今回、初めて空席を見たような気がする。当日券も販売されていたようだ。
ロビーではパンフレット(3000円)を始めとして、たくさんのグッズが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
一言で言って、予想していたよりもずっと良かったし、面白かった。
何ぶん、最近の若手の俳優さんがほとんど判らないので、今回の主要メンバーの配役で前から知っていたのは、木村了、中村まこと、羽野晶紀、千葉哲也の4人だけだった。
とはいえ、そもそも「若い」と思っていた、捨之介、天魔王、蘭兵衛を演じていた俳優さん達はみな30代だった。そこからして私の認識は間違っている。
ツキドクロは、出演者やその時々で脚本と演出を変えてきた「髑髏城の七人」を、敢えて同じ脚本と演出で、出演者だけ変えて上演するというところがポイントであり味噌だと思う。
私は下弦の月を先に見ることになったけれど、果たして順番としてはどうだったんだろう。
年明けに上弦の月を見る予定なので、今から楽しみである。
それから、ツキドクロのもう一つのポイントは、少女であった「沙霧」の役を「霧丸」という少年に変えたことだと思う。
私としては、これは気持ちのいいバージョンだった。
まず、霧丸が戦えてしまうところがいい。百人斬りは、捨之介と雁鉄齋と霧丸の3人で戦っていた。
それから、毎回どうしても気になっていた、捨之介に極楽大夫が「あんたを救いに来たこの子の気持ちも考えておやり」という台詞から、同じ台詞であっても恋愛要素が抜け落ちることになって、私の気持ちもストンと落ちた。
何だかすっきりした。
今回の髑髏城の七人は、毎回オープニングが異なっていて、ツキドクロのオープニングは安土城だった。
フューチャーされたのは、天魔王である。
確かに「髑髏城の七人」の始まりは織田信長の死だけれど、そこを本能寺ではなく、織田信長の死から数日後の安土城から始め、天魔王が信長の鎧を堂々盗みだし、安土城に火を掛けるというところから始めたことに驚いた。
この始まりもありだなぁと思う。
ここは、アオドクロっぽい。
そして、歌と踊りを前面に出してきたところはカゼドクロっぽかったと思う。
そこでちょっとだけ残念なのは、天魔王と蘭兵衛を演じていたお二人から、カゼドクロの天魔王と蘭兵衛からの影響を感じてしまったところだ。これまた私の勝手な感想で、カゼドクロを見た見ている私の問題かも知れないけれど、似ているというよりは引っ張られている感があったように思う。
同じ役を演じるというのは難しいんだなと改めて思う。
捨之介のキャラはもちろんのこと、下弦の月は、随分と軽みを前面に押し出していた。
深刻にならず、地味に笑いを取りに行く、という感じで、爆笑を呼ぶのではなく、クスリと笑わせる小技をいくつも仕込んであった。
見栄を切るときも、控えめな感じだ。控えめというか、「溜めない」という感じかも知れない。そのさりげない見栄の切り方が格好いい。
それは、捨之介の名乗りのときもそうだし、極楽大夫の「ご勘弁を」という台詞にも現れている。
極楽大夫といえば、随分と久しぶりに羽野晶紀を舞台で見ることができたのが嬉しい。
失礼ながら、足には年齢が出ていたと思うけれど、それ以外は私の記憶の中の羽野晶紀のままだ。
何より声がいいし、変わらない。大夫の立ち居振る舞いにも軽みがあり、茶目っ気がある。これまでの大夫たちは、低めの声を出そうとしていたけれど、羽野晶紀は羽野晶紀の声のまま、でもあの高い声に確かに凄みが含まれている。何だか凄い。
彼女の歌声を久々に聞けたのも嬉しい。
声といえば、今回初めて、マイクが声を拾えていないシーンが散見されたのが惜しい。
私の気のせいかもしれないけれど、マイク入ってる? 何を言っているのかは判るけどマイクを通したときと声が全然違うんだけど、という台詞がいくつかあった。
スクリーンの不具合で上演中止になったのが20日くらい前のことで、また何か不具合があったのかとちょっとヒヤリとした。
声といえばのもう一つは、何といっても中村まことである。何だかもう、説明の説得力は全て彼の声に任せたという感じがある。
押し出しの強さは千葉哲也の二郎右衛門、声の説得力の中村まことの雁鉄齋、無茶を通すときの最後の一押しは、彼ら二人の迫力で押し切っていたと思う。
それで正解だ。
羽野晶紀も飛び跳ねていたけれど、今回の殺陣はジャンプして蹴ったりたたき切ったりというシーンが多かった。
跳ねる殺陣、という感じだ。
金色の揃いの鎧に身を包んだ天魔王と蘭兵衛の二人は、これまでになくコンビ感を出していて、かつ、息の合った殺陣も見せていた。この二人は細身だけれどどっしりとした殺陣、捨之介や兵庫に霧丸は身の軽さを前面に押し出した跳び蹴りしまくりの殺陣だったと思う。
「下弦の月」の特徴を一言で言えば、やっぱり「軽み」なんじゃないかと思う。
「髑髏城の七人」というお芝居は前から知っていて、DVDも持っていて何度も見ていて、今回もハナドクロから始まってトリドクロもカゼドクロも見ている。
だから、物語は知っているし、展開も知っている。
それなのに、毎回、異常なほど集中して見て、ほぼ同じシーンで泣いている。
我ながら何と単純なんだろうと思うし、骨格がしっかりした物語の強さというのはこういうことかとも思う。
髑髏城の七人 season月 下弦の月も堪能した。
カンパニーとしてバランスの取れた、軽みのある、見応えのある舞台だった。
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