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2018.01.21

「黒蜥蜴」を見る

「黒蜥蜴」
原作 江戸川乱歩
脚本 三島由紀夫
演出 デヴィッド・ルヴォー
出演 中谷美紀/井上芳雄/相楽樹/朝海ひかる
    たかお鷹/成河/一倉千夏/内堀律子
    岡本温子/加藤貴彦/ケイン鈴木/鈴木陽丈
    滝沢花野/長尾哲平/萩原悠/藤田玲
    松澤匠/真瀬はるか/三永武明/宮菜穂子
    安福毅/山田由梨/吉田悟郎
観劇日 2018年1月20日(日曜日)午後6時開演
劇場 日生劇場
料金 12500円
上演時間 3時間20分(20分の休憩あり)
 
 ロビーではパンフレット等のグッズが販売されていたけれど、チェックしそびれた。
 ネタバレありの感想は以下に。

  「黒蜥蜴」 の公式WEBサイトはこちら。

 日生劇場の2階席はさすがに舞台から遠くて、オペラグラスを持って行った。
 ただ、オペラグラス越しに見ると、当たり前だけれど、黒蜥蜴を演じた中谷美紀のお化粧がものすごく濃い。実際のところはほとんどオペラグラスを覗かずに見ていた。
 舞台を広く使い、回り舞台と、可動式のドアや半透明の壁のセットとで、ホテルの一室や屋敷の一室、台所、黒蜥蜴のアジト等を表していた。
 久しぶりにデヴィッド・ルボー演出の舞台を見たと思うけれど、それらしいセットだったんじゃないかという気がする。

 江戸川乱歩、三島由紀夫、黒蜥蜴と来たら、答えは「美輪明宏」だと思う。
 とはいうものの、私は美輪明宏が役者として舞台に立っているところを見たことがない。確か、トークショーのような形で舞台にいる姿を見たことがあるだけだ。
 だから、「美輪明宏が黒蜥蜴を演じたら多分こういう感じになるんだろうな」という勝手なイメージしか持っていない。
 その勝手なイメージと、中谷美紀の黒蜥蜴は、やはりずいぶんと違う感じがした。当たり前である。

 たかお鷹演じる、令嬢の誘拐の予告を受けた宝石商の岩瀬は、井上芳雄演じる探偵明智小五郎に娘の身辺警護を依頼して大阪のホテルに来ている。相楽樹演じる令嬢早苗は、中谷美紀演じる宝石商の上得意である緑川夫人と一緒にいたが、実はこの緑川夫人こそ女賊(舞台上ではにょぞくと発音されていて、最初は何のことやらさっぱり分からなかった)黒蜥蜴であった、というところから物語が始まる。
 この、早苗誘拐を逐一見せてくれる訳だけれど、なんとも子供だましなトリックで、警護を依頼された探偵といえど令嬢の寝室に入る訳にはいかないって時代だわという感じがする。

 もっとも、ここでは誘拐のトリック等は特に問題視されていないようだ。
 実際のところ、「誘拐」の手口の美しさというか破綻のなさ見事さを見せなければ、黒蜥蜴の美へのこだわりだったり優秀さだったりといったものは際立たないと思うし、そこを黒蜥蜴演じる中谷美紀が醸し出す雰囲気にだけ頼るっていうのはどうなのと思う。
 戯曲なのか演出なのか分からないけれど、もうちょっとこう「盗みの手口の鮮やかさ」みたいなものを出してくれてもいいのになと思った。

 江戸川乱歩が「名探偵 明智小五郎」のシリーズとして書いている訳で、小説では(読んでいないので多分としか書きようがないけれど)主人公は明智小五郎なんだろうと思う。だから、当然、最後には明智小五郎が勝つ。
 でも、「黒蜥蜴」というこの舞台では、黒蜥蜴にもっと活躍してほしいし、もっと凜としていてほしい。
 黒蜥蜴が緑川夫人として明智小五郎と対峙していたシーンは格好よかったけれど、その後は、その明智小五郎への恋心を大々的に吐露したり、殺害を部下たちに命じて起きながらその死を大げさに嘆き悲しんだりしている。好みとしては、黒蜥蜴にはもっとクールでいてほしい。
 何しろ大盗賊団のボスなのだから、部下の前で愁嘆場を見せるとかあり得ないじゃないと思ってしまう。

 黒蜥蜴が情に傾いている分、成河演じる雨宮もクールというよりは情けなさが目立つ。
 舞台上で一番悪辣で性格が悪いのは、多分、明智小五郎だ。こちらの先入観で井上芳雄はどこまでも爽やかに見えてしまうけれど、言っていることは割と酷い。やり口だってかなり性格が悪い。

 令嬢の早苗は終始白いドレス姿、黒蜥蜴は「緑川夫人」を演じている間に白いドレスから黒いドレスに着替え(同じ日の同じ場所なのにドレスを着替えるというのがなかなかすごい)、黒蜥蜴として登場しているときはデザインの異なる黒のドレスを何着か着替えたと思う。
 これがまた、中谷美紀に似合っているし、綺麗に着こなされていると思う。

 とにかく贅沢な舞台だった。

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