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「秘密の花園」
作 唐十郎
演出 福原充則
出演 寺島しのぶ/柄本佑/玉置玲央/川面千晶
三土幸敏/和田瑠子/池田鉄洋/田口トモロヲ
観劇日 2018年2月3日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 東京芸術劇場シアターイースト
上演時間 2時間30分(15分の休憩あり)
料金 6500円
ロビーではパンフレット等が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
木造アパートの一室が舞台で、ガラス窓のガラスは割れてベニヤっぽいもので塞がれていたり、いかにも昭和な感じだ。
舞台手前にはトタンが貼られていて、それがますます昭和っぽい。
何度も連呼されていたけれど、このアパートは日暮里駅近くにあるらしい。
日暮里から伸びる線路が九十九里だか房総だかに繋がっているという台詞があって、いやそれは違う、と思ったのは私だけだろうか。
これまた劇中の台詞(かアドリブかはよく分からなかった)で、この「秘密の花園」という作品が本多劇場のこけら落とし公演だと語られていた。
そうなんだろうか。
休憩後の後半はほとんど水しぶきが上がりっぱなしで、最前列にいた私は防水シートをかぶっても結構な水しぶきがかかっていたから、こけら落とし公演でこれはあんまりだとも、こけら落とし公演でこれをやるなんてやっぱりすごいとも、両方思ったりした。
アングラとか唐十郎とか、私にはかなり苦手なところで、イメージの連鎖というか感情の転がり方に付いて行けないし、付いて行けないという自覚がものすごくある。
だから、多分、最前列でかなり引いて見ていたような気がする。
一方、舞台自体が、「エネルギーの塊」といった感じではなく、どちらかというと温く緩く演じられていたような気がする。
もちろんそれは狙ってのことで、突然田口トモロヲがアドリブなのか、登場人物であるアキヨシではなく、演じている柄本佑をいじり始めたり、寺島しのぶや柄本佑が「素か?」と言いたくなるような表情を見せたりする。
寺島しのぶの「ひとよ」と「もろは」の一人二役はハマリ役だろうと見る前から思っていたけれど、本当のところ、「アングラ」の空気を知っていて体現しているのは田口トモロヲ一人なのかも知れないと思ったりもした。
寺島しのぶ演じるいちよは、田口トモロヲ演じるポン引きの夫と日暮里のアパートで暮らしていて、そこに柄本佑演じるアキヨシが毎月のお給料を届けに来ている。
アキヨシといちよは、プラトニックラブの真っ最中、らしい。
でも、この日にアキヨシが来たのは、翌日の関西転勤と結婚の報告のためらしく、その話を聞いたいちよは自殺未遂を起こす。
基本のストーリーは多分ここで、でも、「ゆうきまる」とか「よなきまる」という菖蒲の葉っぱの笛が出てきたり、ポン引きの夫が昔赤ちゃんを預かっていて火事で亡くしたことがあったり、いちよが生まれる前にいた港で長い行列の中にいたという話を繰り返し語ったり、いちよに惚れている「殿」と呼ばれる男の甥っ子が自転車に乗って登場したり、周りの状況はしっちゃかめっちゃかだ。
中でも、アキヨシの姉である「もろは」が出てくる辺りから、そのしっちゃかめっちゃか度と、水の演出がパワーアップする。
寺島しのぶが一人二役を演じていて、さらに、そっくりすぎてアキヨシにもいちよともろはの区別が付いたり付かなかったりするとなると、もうこちらは翻弄されるしかない。
翻弄されるしかなく、全く付いて行けないのだけれど、アキヨシだって、玉置玲央演じるカジカだって、混乱して翻弄されているんだから、こちら側にいる私が混乱するのは当然だわと思えば、もう翻弄されまくっていればいい訳だ。
玉置玲央の声と身体能力の高さはもうとんでもなくて、一時、彼がこの舞台の全部をかっさらった場面があったくらいだ。すごい。
翻弄はされたけれど、エネルギーに当てられた感じはしない。
それは、柄本佑や殿を演じた池田鉄洋の、人の良さがにじみ出てしまっている感じとか、緊張感を感じさせないように計算された役者さんたちの姿勢や立ち位置とか、そこに冷静な目が常にあったからのような気がする。
冷静といえば冷静、醒めているといえば醒めている目だ。
突っ込んで行って、世界に入り込むのではなく、再構築しようとしている感じ、なのかも知れない。
舞台上はきっと水浸しで、その溜まっている水をいっそ楽しそうにはね散らかしている役者さんたちを若干恨めしく思いながら、後半、濡れまくっていた(風邪を引くほどではないけど、結構な水しぶきだったと思う)。
結局のところ、いちよともろははどこまでがいちよでどこからがもろはだったんだろう。
きっとアキヨシにも分からなかったに違いない。
もしかしたら、いちよはアキヨシが作り出した幻だったのかも知れない。
そうしたら、いちよにまつわるすべての人々も幻で、だからラストシーンにはアキヨシともろはしか登場しなかったのかも知れない。
そんな気がした。
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