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2018.04.14

「百年の秘密」を見る

ナイロン100℃ 45th SESSION「百年の秘密」
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 犬山イヌコ/峯村リエ/みのすけ/大倉孝二
    松永玲子/村岡希美/長田奈麻/廣川三憲
    安澤千草/藤田秀世/猪俣三四郎/菊池明明
    小園茉奈/木乃江祐希/伊与勢我無
    萩原聖人/泉澤祐希/伊藤梨沙子/山西惇
観劇日 2018年4月8日(日曜日)午後5時開演
劇場 本多劇場
上演時間 3時間30分(15分の休憩あり)
料金 6900円
 
 ロビーではパンフレット等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ナイロン100℃の公式Webサイトはこちら。

 珍しく芝居を見てからほぼ1週間が経ってしまい、それだけ時間が経つと印象はだいぶ薄れているような気がする。
 とにかく、最後まで集中してみたなぁという記憶が強い。
 すぐに気が散る私には、「最後まで集中して見られたお芝居」というのは実は珍しくて貴重である。お芝居を観ているときについつい自分のことを考えてしまっていることが多いので、ただひたすら「この先どうなるんだろう」と引っ張られるお芝居は、見終わった後の開放感がもの凄い。

 見終わってすぐに思ったのは「何が100年の秘密なんだろう」ということだ。
 この100年にわたる物語の主人公だと思われる、犬山イヌコ演じるティルダと、峯村リエ演じるコナが12才のみぎりが、物語のスタートだ。
 時系列に沿っては展開しない、長い時間の中の一部を切り取って次々と見せていくお芝居の、一番古いシーンが二人の女の子が12才のシーンである。

 そして、物語の中で一番後ろというか新しい出来事は、ずっと語り手兼案内役を務めているメイドのメアリがするっと語る「(ティルダのひ孫の)ニッキーがエラーコインを池から拾って大金を手にする」という出来事である。
 これが、二人の女の子12才のシーンから110年後の出来事だ。
 100年じゃない! と計算して思った私である。
 しかも、この「エラーコイン」は秘密なのか。秘密じゃないんじゃないかという気がする。

 どうでもいいことだよと思いつつ、だったら百年の秘密ってなんだったんだろうと思う。
 物語の中で一番大きいだろう秘密は、12才の二人が後にコナの夫となる萩原聖人演じるカレルに託された「アンナ先生」に駆け落ちを促す手紙を渡さなかったことか、コナが後にティルダの夫となる山西惇演じるブラックウッドと関係を持ってコナの娘が「夫とブラックウッドとどちらとの子供か分からない」ということか、どちらかだと思う。
 どちらにしても、ティルダとコナという、とても仲の良い筈の二人の女友達の関係性に関わる秘密だ。

 そして、コナが、自分の娘が自分たち夫婦の子供か、ティルダの夫との間にできた子供か分からないとティルダに告げたことがおそらくは原因で、ティルダは40年近くに及ぶ「行方不明」となる。
 その間にティルダが何を思い、どこで何をしていたのかということが、もしかしたら一番の「秘密」なのかも知れない。

 女二人の物語だけれど、これは男の人が思う女二人の物語なんだなぁと思う。
 だからどうしたということでは全くないけれど、女性が女二人の物語を書き、演出したら、同じ「出来事」と「登場人物」を扱ったとしても全く違う雰囲気になるんじゃないかしらと思った。
 と書いていて思ったけれど、それはあくまでも「個性」であって、書き手の性別は関係ないよなという気がしてきた。

 銀行家の父フリッツを中心にしたティルダの家は、最初は「大金持ち」の風情だけれど、やがて父親が失脚し、ティルダの結婚相手であるブラックウッド弁護士も訴訟に巻き込まれて失職し、一家の経済は保険のセールスレディとなったティルダと、彼女の息子のフリッツの二人の稼ぎで支えられるようになる。
 そして、フリッツは事業に失敗し、屋敷を手放すところまで追い詰められるけれども、孫娘たちに泣かれて屋敷の中心に生えている大木を切るに忍びなく、屋敷を売らずに再起を図ることになる。

 最後の最後に存在感を発揮するのがこの「木」で、セットの中央にずっとあるのだけれど、最初のうちはひっそりと、そのうち枝を揺らし、うなり声を上げ、どんどんその存在感を増して行く。
 ティルダとコナが二人、40年ぶりに顔を合わせ、語り、笑い、そして幼なじみの男に自分たちを殺させた場面でも、屋敷を買いに来た夫婦がこの木を切り倒そうと相談する場面でも、木は、木でないかのような存在感を発揮していた。

 「百年の秘密」というタイトルが示す秘密とは何なのか、それは何でもいいのかも知れない。
 今ではそう思っている。

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コメント

 アンソニーさま、コメントありがとうございます。

 「百年の秘密」、楽しまれたようで良かったです。
 楽しかったですよね。

 「百年の秘密」は女二人の物語でしたが、「睾丸」は男二人の物語だそうです。
 今日、一般発売でチケットを確保できました。嬉しい。
 楽しみですね〜。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2018.05.26 10:21

こんばんは、姫林檎様
お元気ですか?

観ました!
そこはいいの?って突っ込みたいとこありましたけど
全体的に楽しみました笑
秘密はそれぞれの胸にそれぞれの形であるように感じました。

次の睾丸もずいぶん直ぐにやるんだなーと楽しみにしています。

投稿: アンソニー | 2018.05.25 23:57

 みき様、コメントありがとうございます。

 「百年の秘密」とは何ぞやという疑問の答えは、観た人の数だけあるのかも知れないなぁと改めて当たり前のことを思いました。

 松永玲子さん、今回のお芝居では「イヤーな感じ」は封印されていましたね(笑)。
 普通の感じも素敵です。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2018.05.05 22:47

こんにちは。私はあの「木」が見てきたあの家族の歴史のあれやこれやを「秘密」と呼んでいるのかなあと思っていました。
村岡希美さんは数年前に放送された朝ドラ「花子とアン」のモデルになった村岡花子さんの親戚だそうです。白蓮の兄嫁の好演が印象的でした。
私のイチオシは松永玲子さんです。あのイヤーな感じ(松永さんごめんなさい!)がクセになります。「夜、ナク、鳥」も恐ろしくて良かったです。

投稿: みき | 2018.04.30 09:47

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 みずえさんもご覧になったのですね。
 ナイロンのオープニングは常にプロジェクションマッピングですよね(笑)。ちょっとした浮遊感が味わえます。

 百年の秘密と言われたら、百年後に秘密が明らかになって欲しいなぁと思った私です。
 まぁ、でも、感想にも書きましたが、別に「百年の秘密」は何でもよいし、一つじゃないのかも知れませんね。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2018.04.23 23:01

私も観ました!
ここの舞台のオープニングは、いつも素敵ですね。

犬山さんは、本当に声が魅力的だなあと聞き惚れてしまいます。
あと個人的には、村岡さんの滑舌良い喋り方が好きです。
こういう、ちょっと意地悪っぽい役、お上手ですよね(褒めてます)。
そしてチャド役は、ムロツヨシさんが演りそうだなと思いながら観ていました。

100年の秘密……私はアンナ先生への手紙を渡さなかったことだと思い込んでましたよ。
あれがいろんなことのスタートだったと思ったので。

余談ですが、長かったですね。
休憩中のお手洗いの列も長かったです。

投稿: みずえ | 2018.04.23 09:27

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